デジタル大辞泉
「鳥海山」の意味・読み・例文・類語
ちょうかい‐さん〔テウカイ‐〕【鳥海山】
秋田・山形の県境にある火山。裾野は日本海岸にまで至る。標高2236メートル。新旧二つの二重式火山が複合したもの。最近では昭和49年(1974)に噴火。秋田富士。出羽富士。
森敦の短編小説集。昭和49年(1974)刊行。前年発表の「月山」と対をなす作品。
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ちょうかい‐さんテウカイ‥【鳥海山】
- 山形・秋田両県境にそびえる円錐火山。享和元年(一八〇一)噴出の新火山と、旧火山との二つの二重式火山が複合してできた。チョウカイフスマなどの高山植物が豊富。標高二二三六メートル。出羽富士。秋田富士。
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鳥海山
ちようかいさん
鳥海火山帯の主峰で、秋田・山形の県境にまたがるが、山頂部分は山形県に属する。
二つの円錐状成層火山からなり、一つは笙ヶ岳(一六三五メートル)、月山森(一六四〇メートル)などの外輪山から形成され、西鳥海山と通称される。外輪山に囲まれた南西に開口する長径約二・二キロの爆裂口があり、火口内に鍋森・扇子森などの中央火口丘と鳥ノ海がある。西麓の観音森・猿穴の小火丘および北方の稲倉岳(稲村岳、一五五四メートル)も寄生火山群である。この東のやや高く新しい火山は、その秀麗な山容のため、鳥海富士、出羽富士の名がある。標高二二三〇メートルの七高山(七五山)や伏拝岳・蟻戸渡を外輪山とする長径約三キロの爆裂口が北に開口する。火口内には荒神岳および享和元年(一八〇一)の噴火による標高二二三〇メートルの新山(享和岳)がある。
暦応五年(一三四二)七月二六日の日付のある山形県飽海郡遊佐町吹浦の鳥海山大物忌神社口之宮所蔵の鍔口銘に「奉懸鳥海山和仁口一口 右意趣者藤原守重息災延命如右 敬白」とみえる。古来、鳥海山は優れた山容とその独立性のため神の山とされ、大物忌神として国からも厚く遇され、山頂には大物忌神社が現存する。山名の由来は、山頂の鳥ノ海湖からとする説と、鳥海弥三郎の誕生地とその領地に関係するとの説がある。
〔古代〕
「続日本後紀」承和五年(八三八)五月一一日条に「奉授出羽国従五位上勲五等大物忌神正五位下」とあり、鳥海山の大物忌神は正五位下の神階を授けられた。同七年七月二六日条では、従四位下の神階と、封戸二戸が寄進された。その理由を述べた宣命に、
<資料は省略されています>
とある。「石兵零利止申」とは、前年の承和六年に田川郡西浜(現山形県)の砂地に隕石が多数落下したことをうけるもので、それと遣唐使が南海で賊を破ったこととの結付きは不自然だが、この時期、なお蝦夷の不穏な動向を前に、辺境の神として大物忌神の神威に注目したものであろうか。
鳥海山
ちようかいさん
山形・秋田県境に位置する火山で、標高は二二三七メートル、山頂は山形県域にある。二つの円錐状成層火山から構成され、笙ヶ岳(一六三五・三メートル)、月山森などの外輪山で形成される西鳥海は、南西に開口する長径約二・二キロの爆裂口があり、この火口内には鍋森・扇子森などの中央火口丘や火口湖の鳥ノ海などがある。西鳥海西麓の観音森・猿穴などの小火丘、および北方の稲倉丘(稲村岳、一五五四・二メートル)なども寄生火山群である。西鳥海の東方(東鳥海)には七高山(七五岳)や伏拝岳などを外輪山とする長径約三キロの爆裂口が北に開口し、火口内には享和元年(一八〇一)に噴火した新山(享和岳ともいう、最高峰)・荒神岳などがある。
古くは飽海岳とも称された。暦応五年(一三四二)七月二六日銘のある大物忌神社吹浦口之宮(現飽海郡遊佐町)の鰐口に「奉懸鳥海山」とみえる。山名は火口湖の鳥ノ海にちなむなど諸説あるが、鳥ノ海は歌名所として古くから都人にも知られ、「能因歌枕」には「とりのうみ」が出羽国の歌枕として載る。日本海側においては北アルプス連峰、白山などに次ぐ標高を誇り、山裾を直接日本海に落す秀麗な姿は古来より出羽富士ともよばれ人々に畏敬の念を与えてきた。また有史以来幾度となく噴火を続けており、噴火を神意とみた古代の人々にとっては、まことに神の宿る神聖なる山であった。
〔大物忌信仰〕
現在山頂には大物忌神社本殿が置かれ、山麓の蕨岡・吹浦(現飽海郡遊佐町)・矢島(現秋田県由利郡矢島町)には同社の口之宮があるが、古代には大物忌神が宿る神の山であり、「延喜式」神名帳には名神大社として大物忌神社が載る。「続日本後紀」承和五年(八三八)五月一一日条によれば、大物忌神は従五位上から正五位下に昇叙されている。六国史では東北地方の他の神々の神階が大半は五位止りなのに対して、大物忌神は元慶四年(八八〇)には従二位にまで昇った(「三代実録」同年二月二七日条)。また「延喜式」主税寮諸国出挙正税公廨雑稲条によると、大物忌神と月山神に合せて二千束の祭料があてられている。これは元慶の乱の頃、大物忌神社に月山神社も勧請され、両所神社と称されていたためであろう。大物忌神は北方の蝦夷の侵入を事前に察知し、噴火などの変異によって事の次第を中央に告げる神だったとされる。「続日本後紀」承和七年七月二六日条によると、遣唐使が南海において賊に襲われたとき、大物忌神が一〇日間にわたって戦いの声をあげ、石兵を降らして遣唐使を守ったといい、同じ日、都で盛んに物の怪が出没する原因を占わせたところ、大物忌神の祟りであるという占いが下され、中央の貴族たちは従四位の神階と神封二戸を同神に授けている。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
鳥海山 (ちょうかいさん)
秋田・山形県境に位置する山。日本海岸にまですそ野が広がる秀麗な成層火山で,出羽富士,秋田富士とも呼ばれる。最高峰の新(しん)山(2236m)を中央火口丘として七高(しちこう)山,伏拝(ふしおがみ)岳などの外輪山がこれをかこむ東鳥海火山と,火口湖の鳥ノ海を中心とする西鳥海火山の二つの火山体からなる。新山は1801年(享和1)に噴火して形成されたので,享和岳とも呼ばれている。1974年には1821年(文政4)以来153年ぶりに小噴火がみられた。西鳥海火山は笙ヶ岳(しようがたけ),月山森(がつさんもり)などの外輪山にかこまれて,鍋森(1652m)や扇子森の中央火口丘と,直径約200mの鳥ノ海火口湖がある。東鳥海火山は形成時期が新しく,頂上部に北に開いた直径約3.5kmの馬蹄形の大爆裂火口をもっている。溶岩の噴出を伴わない水蒸気爆発により形成された火口と考えられており,この火口からの流下物は,白雪川や鳥越川沿いに遠く日本海岸まで約25kmにわたって分布し,象潟(きさかた)泥流と呼ばれている。象潟泥流の堆積物からなる小丘群は〈流れ山〉と呼ばれ,羽越本線の象潟~仁賀保(にかほ)間の車窓からも見ることができる。
山体の植生はほぼ垂直的分布を示すが,寒帯針葉樹林帯を欠くのが特色である。七合目以上には高山植物が多く,ヒナザクラ,ハクサンオオバコ,チョウカイアザミ,チョウカイフスマなどが見られる。山頂からの展望は雄大で,特に西方の日本海上には飛(とび)島,粟島,佐渡島などが眺められる。一帯は鳥海国定公園に指定されている。1972年,西側山腹に延長約35kmの有料自動車道路(鳥海ブルーライン)が完成した(97年無料開放)。
執筆者:水野 裕
信仰
古くは大物忌(おおものいみ)神の神山とされて,北の山などと呼ばれていたらしく,鳥海山という山名は鎌倉時代ころから史料に現れる。平安時代には噴火を繰り返すたびに位階が与えられ,939年(天慶2)には正二位となった。《三代実録》貞観13年(871)の条には,噴火で流出した溶岩泥流の中に大蛇2匹とそれに従う無数の小蛇が見られたとあり,大物忌神の本体は蛇体であったことを思わせる。山上の大物忌神社は出羽国一宮として崇敬されたが,吹浦(ふくら),蕨岡(わらびおか)(ともに山形県飽海(あくみ)郡遊佐町),矢島(秋田県由利本荘市の旧矢島町)などの登山口には里宮が設けられ,中世以降それぞれ鳥海修験の一派をなした。彼らはその檀那場を配札や治病の加持祈禱をして回ったほか,番楽と称する舞楽を伝えて歩いた。遊佐町杉沢に伝わる比山(ひやま)番楽もその一つである。
一方,農民は鳥海山にかかる雲で天候を知ったり,残雪の形で播種や田植の時期を判断し,また山頂付近にある〈御田(おた)〉という場所の水草のはえ具合をみて,その年の豊凶を占ったり,また本社から受けてきた虫札を水口にさして虫よけにするなど,作神信仰の要素が強く見られる。農耕に関連した行事は,各里宮でも見られ,吹浦では〈管粥神事〉,蕨岡では〈お種蒔神事〉,矢島の木境神社では〈除蝗祭〉が行われている。このほか,鳥海山は死者の魂の集まる山ともされ,登拝の際の白衣を納棺する風習もあった。鳥海山の登拝は〈お山のぼり〉〈お山駆け〉といわれ,出羽三山を縦走参拝しても,鳥海山に登らなければ意味がないといわれるほど重視されていた。
執筆者:飯島 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鳥海山
ちょうかいさん
秋田・山形県境にそびえる火山。標高2236メートル(新山(しんざん)頂上)。山頂部は山形県に属す。鳥海火山帯の主峰で、燧ヶ岳(ひうちがだけ)(2356メートル)に次ぐ東北地方第二の高山。日本海岸まで裾野(すその)を引く秀麗な成層・円錐(えんすい)火山で、出羽富士(でわふじ)、秋田富士の名がある。出羽山地上に噴出した火山で、輝石安山岩、橄欖(かんらん)岩と砕屑(さいせつ)物からなる。新旧二つの二重式火山が複合したもので、新火山は七高(しちこう)山(2230メートル)、伏拝(ふしおがみ)岳などの外輪山に囲まれ、北に開いた直径約3500メートルのU字形の爆裂火口内に、新山、荒神ヶ岳(こうじんがたけ)の両中央火口丘(溶岩円頂丘)があり、外輪山との間の千蛇谷(せんじゃだに)は雪渓で名高い。新山は1801年(享和1)に誕生し、享和岳(きょうわだけ)ともいう。旧火山は西鳥海山ともよばれ、笙(しょう)ヶ岳、月山(がっさん)森などを外輪山とし、鍋(なべ)森(1652メートル)、扇子(せんす)森の中央火口丘と、鳥ノ海の火口湖がある。578年(敏達天皇7)の噴火は、553年(欽明天皇14)の阿蘇(あそ)山噴火に次ぐ古い噴火記録で、以後、1821年(文政4)まで十数回の噴火をみた。1974年(昭和49)の小噴火は新山から荒神ヶ岳地域でおき、小規模の火山泥流も発生した。古くから霊峰として信仰登山が盛んで、現在も山頂に鳥海山大物忌神社(ちょうかいさんおおものいみじんじゃ)がある。また中世は修験(しゅげん)道場として発展した。山頂からの展望は雄大で、チョウカイフスマなどの珍しい高山植物も豊富である。南麓ではイヌワシの生息が確認され、環境省猛禽(もうきん)類保護センターが設置されている。春スキーも楽しめる。一帯は鳥海国定公園域で、吹浦(ふくら)―鉾立(ほこたて)―象潟(きさかた)を結ぶ自動車道路鳥海ブルーラインも通じる。登山コースは象潟口、矢島口、吹浦口、湯ノ台口などがあるが健脚向きであり、海に近い独立峰のため気象の変化が激しく、登山には注意を要する。
[諏訪 彰]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
鳥海山
ちょうかいさん
山形県北西端,秋田県境近くに位置し,鳥海火山帯に属する火山。活火山で,常時観測火山。別称出羽富士,庄内富士,鳥海富士。標高 2236m。山頂は西鳥海,東鳥海に分かれる。西鳥海は旧火山で笙ヶ岳(1635m),月山森(1650m),扇子森(1759m)などの外輪山が馬蹄形に並び,なかに中央火口丘の鍋森と火口湖鳥ノ海を抱く。東鳥海は新火山で最高点の新山と外輪山からなる二重式火山(→複式火山)。新山は享和1(1801)年の噴火で形成された溶岩円頂丘である。1974年に小規模な噴火が発生している。山体は橄欖石・輝石安山岩質の溶岩や砕屑岩などからなる。鳥海国定公園の主部で,山頂からの眺望は美しく,晴れた日に日本海に映る「影鳥海」は有名。頂上の大物忌神社は出羽一宮と称され,吹浦にも大物忌神社の口の宮がある。新火山付近にはチョウカイフスマ,ヒメコザクラ,ヨツバシオガマ,チョウカイチングルマなどの高山植物の大群落がある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ちょうかいざん【鳥海山】
山形県飽海(あくみ)郡遊佐(ゆざ)町、秋田県由利本荘市、にかほ市にある山と神社群。山形県と秋田県との県境にまたがり、日本海に裾野を広げる標高2236mの火山、鳥海山は、古代から「神の山」として崇拝され、中世からは修験道の修行の場としても知られ、近世以降はとくに農業の神として信仰を集めてきた。主祭神を大物忌神(おおものいみのかみ)とする鳥海山大物忌神社(山形県飽海郡遊佐町)は、本殿が山頂にあり、主要な登山口である吹浦(ふくら)と蕨岡(わらびおか)に口宮(くちのみや)がある。2008年(平成20)に「鳥海山大物忌神社境内」として国の史跡に指定された。翌年、森子大物忌神社境内(秋田県由利本荘市森子)、木境(きざかい)大物忌神社境内と道者道(どうしゃみち)(秋田県由利本荘市矢島町)、金峰神社境内(秋田県にかほ市象潟町)、霊峰神社跡(秋田県にかほ市象潟町)が加えられて、全体を「鳥海山」と総称して国指定史跡とした。鳥海山には山形県遊佐町吹浦、蕨岡、秋田県にかほ市小滝、院内、由利本庄市滝沢、矢島の各登拝口がある。鳥海山大物忌神社吹浦口宮へは、JR羽越本線吹浦駅から徒歩約7分。
出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報
鳥海山【ちょうかいさん】
秋田・山形県境,日本海に面する活火山で,気象庁が常時観測体制を敷いている。標高2236m。鳥海火山帯に属する安山岩の複式複合火山で,旧火山(西鳥海)は月山森,笙ヶ岳などの外輪山に囲まれ中央火口丘鍋森と火口湖の鳥ノ海がある。古くは飽海岳とも称され,14世紀には鳥海山の呼称がみえる。古代より大物忌信仰で知られる。新火山(最高点)は1801年噴火の秀麗な成層火山で,出羽富士,鳥海富士ともいう。高山植物に富み,晴れた日に日本海に映る〈影鳥海〉も有名。鳥海国定公園の主要部。
→関連項目鳥海[町]|日本百名山|山形[県]|遊佐[町]|湯野浜[温泉]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
世界大百科事典(旧版)内の鳥海山の言及
【大物忌神社】より
…山形県飽海郡遊佐町,[鳥海山]上に鎮座。旧国幣中社。…
※「鳥海山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」