小者(読み)コモノ

デジタル大辞泉 「小者」の意味・読み・例文・類語

こ‐もの【小者】

身分の低い奉公人。丁稚でっち。小僧。
武家の雑役に使われた者。小人こびと
若い人
「おのれほどの―と組んで勝負はすまじきぞとて」〈太平記・九〉
[類語]小姓中間下郎草履取り寺男作男

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精選版 日本国語大辞典 「小者」の意味・読み・例文・類語

こ‐もの【小者】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 年若い人。年少者。また、こがらな人。
    1. [初出の実例]「己れ程の小者(コモノ)と組で勝負はすまじきぞとて」(出典:太平記(14C後)九)
  3. 身分の低い奉公人をいう。丁稚(でっち)。小僧。下男。
    1. [初出の実例]「とくりをもたせ秋かぜぞふく 月かげは誰小ものめををくるらん」(出典:俳諧・誹諧之連歌(飛梅千句)(1540)何第二)
    2. 「主管(ばんとう)小厮(コモノ)が四表八表(よもやま)の」(出典:怪化百物語(1875)〈高畠藍泉〉上)
  4. 中世近世に、武家に仕えて雑役に従事し、戦場では主人の馬先を駆走した軽輩のもの。室町時代には中間(ちゅうげん)より身分が低く、将軍出行のときは数名が随従し、草履(ぞうり)持ちなどをつとめた。江戸時代の小者は小人ともいい、幕府お抱えの小者はおもに使い走りや荷物の運搬にあたった。→小人
    1. [初出の実例]「建暦三年五月二日三日合戦被討人々日記〈略〉此外小物郎等は不注」(出典:吾妻鏡‐建保元年(1213)五月六日)
  5. 江戸時代、武士に雇われ、雑事に使役されたもの。若党(わかとう)、中間、草履取りなどと併称されることが多く、普通一年ごとの契約で雇い入れられ、主人に対し忠誠義務はほとんどなかった。
    1. [初出の実例]「小者身分として侍に成候者於有之は、本文主人え相断改之、急度曲事可申付事」(出典:徳川禁令考‐前集・第四・巻三六・寛永八年(1631)一一月五日)
  6. 江戸時代、町奉行の廻り同心の手先となり、犯罪の捜査、犯人の逮捕に従った下級役人。その職務は目明(めあかし)(=岡引)と異ならなかったが、同心から若干の給金を与えられ、公的な使用人であった。
    1. [初出の実例]「雇足軽並手附手代共召連れ候小ものへ、十手捕縄貸渡候心得方之儀」(出典:牧民金鑑‐一・嘉永三年(1850)四月)
  7. 手腕地位のない、したっぱの取るに足りない者。
  8. こもの(小物)

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改訂新版 世界大百科事典 「小者」の意味・わかりやすい解説

小者 (こもの)

一般には若年の者,身体の小柄な者のことをいうが,鎌倉・室町・戦国時代には,武家に仕えて雑務を担当する軽輩のことをいい,〈小人(こびと)〉とも称している。朝廷,公家の場合の小舎人(こどねり)に相当するといわれる。史料的には主君の外出等に際して,走衆(はしりしゆう),中間ちゆうげん)などとともに供奉の人々の末尾に連なる役目として多くはみられ,太刀,冑,弓などの武具や草履,沓などの履物を持って随従している。《貞丈雑記》に〈小者と云は中間の下なり,公方様御成時,御小者は六人つれられし由〉とあって,室町将軍の場合は,その外出時に随伴する小者の数は6人が通例であり,また同様な雑務にたずさわる軽輩である中間の下位におかれていたと思われる。小者の呼び名は〈幸若,一若,虎若〉などと,童名をもってするのが普通であった。
執筆者: 近世では武家屋敷に奉公する軽輩で,若党,中間,草履取りなどと併称された。平時は御供や御使また用品の運搬などの雑役に従事し,戦時には主人の馬前を走駆した。通常は1年ごとの契約で奉公し,主人に対する忠誠義務はほとんどなかったという。江戸幕府では小人と称した。町奉行所の同心の配下にも小者があって,目明しと同様に犯人の捜査・逮捕にあたった。また町家に奉公した小僧,丁稚(でつち)なども小者と呼んだ。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小者」の意味・わかりやすい解説

小者
こもの

奉公人の一種。小人(こびと)ともいう。武家などに雇われ、走り使いなど雑役に従事した。室町時代以降からみられ、年季を切って随時雇い入れるところが多い。武家では中間(ちゅうげん)の下位に置かれ、軍役の員数外とされた。江戸時代、幕府や諸藩の職制中では、中間とともにさまざまな名称で使役されている。このうち幕府では、五役の者と総称されるのが中心であった。

 五役は、黒鍬者(くろくわのもの)(草履取(ぞうりとり)、荷物運送)、中間、小人(伝令、用品運搬)、駕籠(かご)者、掃除者で、いずれも世襲である。禄高(ろくだか)は役職により異なるが、10俵一人扶持(ぶち)から15俵一人扶持くらいであった。

[佐々悦久]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「小者」の解説

小者
こもの

小人(こびと)とも。中世~近世の武家の下級奉公人・雑兵。もともと年少者の意だが,一般には下級の武家奉公人をさす。武家において,戦時・平時の口番,使者,荷送など多様な力役を勤めた。若党や中間(ちゅうげん)などと併称される身分だが,地位は中間より低い。小者も統括者として小人頭がおかれ,近世では小人頭のもとに小人組が編成された。近世の商家などに奉公する下男や丁稚(でっち)なども小者といった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「小者」の解説

小者
こもの

鎌倉・室町時代に武家に使われた軽輩
小人 (こびと) ともいわれ,身分の低い奉公人の一般的呼称。室町時代には中間 (ちゆうげん) の下位に置かれた。江戸時代の正式職名に中間・小人はあるが小者の呼称はない。

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世界大百科事典(旧版)内の小者の言及

【身分統制令】より

…1591年(天正19)に豊臣秀吉が全国に発布した3ヵ条の法令。侍,中間(ちゆうげん),小者などの武家奉公人が百姓,町人になること,百姓が耕作を放棄して商いや日雇いに従事すること,もとの主人から逃亡した奉公人を他の武士が召し抱えることなどを禁止し,違反者は〈成敗(死刑)〉に処するとしている。朝鮮出兵(文禄・慶長の役)をひかえて,武家奉公人と年貢の確保を目的としたものと思われる。…

【目明し】より

…江戸時代に諸役人の手先になって,私的に犯罪の探査,犯罪者の逮捕を助けたもの。岡引(おかつぴき),御用聞,小者,手先ともいう。目明しとは目証(めあかし)の意味で,犯罪者に同類たる共犯者を密告させ,その犯罪を証明させたことに由来する。…

※「小者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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