エリテマトーデス(英語表記)erythematodes

デジタル大辞泉 「エリテマトーデス」の意味・読み・例文・類語

エリテマトーデス(〈ドイツ〉Erythematodes)

顔面などに生じる紅斑(エリテマ)を主症状とする疾患膠原病こうげんびょうの一。急性で全身がおかされるものと、慢性皮膚に限局して円形の紅斑が現れるものとがある。紅斑性狼瘡ろうそう。→全身性エリテマトーデス

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改訂新版 世界大百科事典 「エリテマトーデス」の意味・わかりやすい解説

エリテマトーデス
erythematodes

膠原病(こうげんびよう)に属する疾患で,その代表的なものと考えられている。10~20歳代の女性に多く,男性にはまれである。症状として特徴的紅斑が皮膚表面に出るために,エリテマトーデス(紅斑症,紅斑性狼瘡(ろうそう))といわれている。全身的に多臓器の病変を示す全身性エリテマトーデスsystemic lupus erythematodes(SLEと略される)と,病変が皮膚に限られる円板状エリテマトーデスdiscoid lupus erythematodes(DLEと略される)との二つが区別されている。DLEからSLEに移行することも多く,両者は本質的に同じ疾患と考えられる。エリテマトーデスの病因は不明とされているが,遺伝的素因があって,それに誘因が加わると発症すると思われている。遺伝形質ははっきりしていない。誘因としては,ウイルスの感染のほか,環境因子も考えられている。免疫系の反応性に異常があり,本来免疫反応を起こさない自己抗原に対して抗体自己抗体)をつくり,この自己抗原と自己抗体が結合してできる免疫複合体がアレルギー反応を起こし,病変を生ずると考えられている。自己抗原としては,DNAのほか核成分が重視されている。したがって,自己免疫疾患,自己アレルギー性疾患,免疫複合体病,また関節痛をもつことからリウマチ性疾患の一つと考えられている。症状としては,特徴的な紅斑(SLEでは鼻鞍部でつながる両頰部に出る蝶形紅斑,DLEでは顔面および手足の指の先端部にみられる不規則な紅斑),38℃以上の突発的発熱,光線過敏症(紫外線過敏症),手足の指の先端が蒼白および暗紫色に変化するレイノー現象,抜毛,口腔内アフタ性潰瘍,胸膜炎や心膜炎に伴う胸痛,呼吸困難,精神病,痙攣(けいれん),視力障害,関節痛,腎炎の症状などがあらわれる。このほか,検査の結果,白血球・血小板数の減少,抗核抗体LE細胞を含む),梅毒血清反応の疑陽性,尿タンパク質,溶血性貧血,血清補体価の変動などが出現する。皮膚や腎臓の生検による検査も行われる。診断はこれらの症状と検査結果から決定されるが,発病初期には確診が困難なことが多い。SLEに他の膠原病が合併することもある。血管病変が原因となって中枢神経障害や腎不全,感染症を併発し,それが致命的結果を招くことがある。最近は治療が進歩して,予後経過は著しく改善され,死亡率も減少している。治療法としては,日常生活で過労を避け,体調を整えることが基本であるが,対症的な療法(消炎鎮痛剤など)のほかに免疫療法副腎皮質ホルモン剤,免疫調節剤または抑制剤など)が行われている。DLEの皮膚症状には副腎皮質ホルモン剤の外用が有効である。治療により症状の軽快がみられても,疾患の原因は残り,病変が内部に隠されていて治癒したとは考えられない場合が多く,長期間(年数をもって数える)の経過観察が必要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリテマトーデス」の意味・わかりやすい解説

エリテマトーデス
えりてまとーです
Erythematodes ドイツ語

紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)lupus erythematosusともいう。膠原病(こうげんびょう)のなかの一疾患。円板状エリテマトーデスと全身性エリテマトーデスに大別されるが、後者は特定疾患(難病)に指定されており、独立項目として別に解説されているので、ここでは前者について述べる。

[土田哲也]

円板状エリテマトーデス

顔面、とくに両頬(ほお)、鼻背、口唇、耳介など、おもに日光露出部に生ずる境界鮮明な鱗屑(りんせつ)を付着する紅斑としてみられ、慢性に経過し、萎縮、色素沈着・脱失、毛細管拡張を残す。20~40歳代の青壮年に好発し、性差はない。円板状エリテマトーデスdiscoid lupus erythematosus(DLE)とは皮疹(ひしん)の病型名で、多くは皮膚限局性のエリテマトーデスの皮疹として出現することが多いが、全身性エリテマトーデス(略称SLE)の経過中にもみられることがあり、またこの皮疹のみであっても、頸部(けいぶ)から下方の躯幹(くかん)や手背などに多発する場合は、SLEへの移行も考えなくてはならない。自己免疫的機序が病因として考えられている。治療は日光を避けるほか、副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬の外用療法などが行われる。

[土田哲也]

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栄養・生化学辞典 「エリテマトーデス」の解説

エリテマトーデス

 →全身エリテマトーデス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エリテマトーデス」の意味・わかりやすい解説

エリテマトーデス

紅斑性狼瘡」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のエリテマトーデスの言及

【DLE】より

…円板状紅斑性狼瘡(ろうそう)discoid lupus erythematosusの略。円板状エリテマトーデスともいう。膠原病の代表的な疾患である急性全身性紅斑性狼瘡(エリテマトーデス)の皮膚症状のみの慢性型をいう。…

※「エリテマトーデス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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