日本大百科全書(ニッポニカ) 「天草五橋」の意味・わかりやすい解説
天草五橋
あまくさごきょう
熊本県西部、九州本島と天草上(かみ)島を結ぶ五つの橋の総称。宇土半島(うとはんとう)の宇城(うき)市三角(みすみ)町―上天草市の大矢野島(おおやのしま)―永浦島―池島―前島―天草上島の同市松島町に架かる。五橋は、宇土半島先端と大矢野島を結ぶ天門橋(1号橋、長さ502メートル)、大矢野島と永浦島を結ぶ大矢野橋(2号橋、長さ249メートル)、永浦島と池島を結ぶ中の橋(3号橋、長さ361メートル)、池島と前島とを結ぶ前島橋(4号橋、長さ510メートル)、前島と天草上島東端とを結ぶ松島橋(5号橋、長さ178メートル)からなる。1962年(昭和37)日本道路公団によって起工され、1966年全線開通した。天草架橋構想が熊本県議会に提案(1935)されて以降、30年にして県民の夢がかなったわけである。
五橋の完成は、雲仙天草国立公園(うんぜんあまくさこくりつこうえん)の指定を受けながらも、相互に孤立していた箱庭のような景観地を「天草松島」として全国に広めただけでなく、長崎、雲仙と阿蘇(あそ)、別府とを結ぶ国際観光ルートの中継地としての性格を天草に与えた。なお、三角から五橋を経て松島までの約12キロメートルの国道266号を天草パールラインとよぶ。また天草上島と天草下(しも)島とを結ぶ天草瀬戸大橋とともに、離島天草諸島のイメージを取り払い、第一次産品の輸送の迅速化だけでなく、労働集約的な工場の進出も可能になった。
[山口守人]