日本大百科全書(ニッポニカ) 「大矢野島」の意味・わかりやすい解説
大矢野島
おおやのしま
熊本県中西部、天草諸島(あまくさしょとう)の入口にある島。上天草市(かみあまくさし)に属する。三角(みすみ)ノ瀬戸を挟んで、宇土(うと)半島と相対するが、天草五橋によって九州本土および天草上島(かみしま)と結ばれる。面積29.88平方キロメートル。開析の進んだ低山地性の島で、北部に点在する安山岩類(新生代第四紀)を除けば、全域、堆積(たいせき)岩(新生代第三紀)からなる。最高点は飛岳(ひだけ)の229メートル。三角港(宇城(うき)市)、国鉄(現、JR)三角線が明治中期には開かれていたことから、商業的農業の導入が早く、無霜地帯の利点をいかした花卉(かき)栽培、露地野菜栽培、酪農などが盛んであったが、最近では花卉栽培以外は低調である。宇土半島の海岸とともに三角大矢野海辺県立自然公園(みすみおおやのかいへんけんりつしぜんこうえん)に属する。かつて、刀剣用砥石(といし)として広く知られていた天草砥石は、本島西部で、江戸時代から採掘が続いているものである。海岸は海水浴と釣りに好適。人口1万4729(2000)。
[山口守人]
『川上戈造著『苓洲大矢野島誌』(1954・大矢野町)』