箱庭(読み)ハコニワ

デジタル大辞泉 「箱庭」の意味・読み・例文・類語

はこ‐にわ〔‐には〕【箱庭】

浅い箱に土や砂を入れ、小さい橋・家・人形などを置き、木や草を植え、庭園山水などに模したもの。 夏》「―の人に古りゆく月日かな/虚子
[補説]書名別項。→箱庭
[類語]庭園ガーデン名園林泉庭先外庭内庭中庭坪庭前庭まえにわ前庭ぜんてい裏庭石庭御苑神苑内苑外苑花園梅園花壇前栽築山

はこにわ【箱庭】[書名]

三浦朱門長編小説。ある家族が不倫の情事をきっかけに崩壊していくさまを描く。昭和42年(1967)刊行。第14回新潮社文学賞受賞。

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精選版 日本国語大辞典 「箱庭」の意味・読み・例文・類語

はこ‐にわ‥には【箱庭】

  1. 〘 名詞 〙 浅い箱の中に土砂を入れ、小さな木や草を植え、庭園・山水の景を模したもの。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「小々盆島は盆中仮山また盆景ともいふ。今世に箱庭などいふものをも云べし」(出典:随筆・嬉遊笑覧(1830)一上)

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改訂新版 世界大百科事典 「箱庭」の意味・わかりやすい解説

箱庭 (はこにわ)

長方形円形の小さい浅い箱や盤の中に,庭園の景を写しとったもの。実際の庭園と同じように築山式や平庭式などがある。築山式は,小高い山を築き,やり水を流し,泉水をたたえ,中の島をつくって橋を架け,植込みや石組みも添える。平庭式は,低い丘に白砂コケを置き,植込みや石組みを配するもの。ネズゴヨウマツツゲケヤキドウダンツツジなどをあたかも高木に見えるように植え,石組みにも模様や色の豊かな豆石を用いる。小盆の上に石を配して風物を描写する盆石はすでに室町時代から行われ,盆景や盆山などと呼ばれる縮景の遊びもある。桂離宮を造営した八条宮は庭師につくらせた雛形によって作庭の構想を練ったと伝えるが,これも箱庭様のものだったとみられ,これらが江戸時代以降しだいに庶民の娯楽として普及したらしい。《嬉遊笑覧》には,盆の上に自然の草木を植え込んだものを盆景と記している。箱庭は庭園を縮景としてとりこむささやかな庶民の娯楽であり,そのささやかさは,実際の風景をも〈箱庭的〉と評したりするように,日本の典型的な風景とも通じるものがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「箱庭」の意味・わかりやすい解説

箱庭
はこにわ

1620年(元和6)、桂(かつら)離宮の造営にあたり、桂宮は庭師小法師に命じて、まず、その雛型(ひながた)をつくらせたという。それが箱庭の始まりといわれている。つまり、箱庭は庭園の雛型として生まれたものだが、その後、江戸時代の中期以降、庭をもたない庶民の慰めとして、おりから流行してきた園芸趣味の一分野として盛んにつくられるようになった。初めは浅い箱の中に土や砂を入れ、小さな木や草を植え込み、庭園のミニチュアであったが、やがて、「東海道五十三次の景」というように、名勝地の風景を表現するようになり、鳥居、人家、小動物などの陶製の小道具なども使うようになった。しかし、傑出した指導者もなく、流派もできなかったためか、しだいにあきられ、1887年(明治20)ごろ、和泉(いずみ)智川という人が箱庭を高度化した盆景を創始するに及んで、すっかり廃れてしまった。いまではその名ばかりが残っている。

[村田圭司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「箱庭」の意味・わかりやすい解説

箱庭
はこにわ

名園,山水などを模して小さな箱の中に適宜風物の模型を配して造るミニチュアの庭園。中国からもたらされた盆栽,盆石,あるいは平安時代から行われていた前栽の遊びなどともかかわりをもつ。しかし今日では盆栽や盆景などの象徴的な意味をもつものとは峻別され,子供の遊びを指す。また箱庭は精神障害者に対する治療法にも用いられる。

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デジタル大辞泉プラス 「箱庭」の解説

箱庭

内田康夫の長編推理小説。1993年刊行。浅見光彦シリーズ。

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世界大百科事典(旧版)内の箱庭の言及

【盆石】より

…《嬉遊笑覧》には,盆の上に自然のコケや草木をも植えこんだ盆石を盆景としており,なかには鉢植えに石を立てるものや,家や人物の模型を配置するものもあった。これらは盆石というより箱庭とか盆庭に近いものであろう。 盆石の興味が,名石の鑑賞から離れて背景画である砂絵の描き方に移るとき盆画が生まれる。…

※「箱庭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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