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天草諸島 あまくさしょとう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

天草諸島
あまくさしょとう

熊本県南西部,天草灘八代海の間の海上に分布する大小島々上島下島を中心に大小約 110の島々からなる。多島海,海食崖,沈降海岸などの自然景観に恵まれ,一部は 1956年雲仙天草国立公園に指定。九州本土とは天草五橋と国道 266号線 (天草パールライン) で宇土半島の三角 (みすみ) から上島の合津 (あいつ) まで通じ,上島と下島は本渡瀬戸の橋で結ばれている。歴史は古く,縄文時代,古墳時代の遺跡がある。戦国時代には天草五人衆がここを支配して栄えたが,天正 15 (1587) 年豊臣秀吉の九州平定後まもなく一揆を起こして滅亡。その後,天草はキリシタン大名の小西氏を経て寺沢氏の領地となったが,すでに永禄6 (1563) 年頃からイエズス会の宣教師アルメイダの布教などにより,キリスト教が勢力を得ており,禁教後も隠れキリシタンが多かった。寛永 14 (1637) 年に,天草四郎 (→益田四郎時貞 ) を首領とする島原の乱が起こると,それに呼応して天草でも一揆が発生,寺沢勢と戦ったのち,当時の人口の半数近い1万 4000人が島原に渡って島原一揆勢に合流した。乱の鎮定後まもなく天草は天領となった。多くは半農半漁の島で,1956年以後野菜の促成栽培,ミカン栽培を導入した。沿岸漁業とタイ,ハマチ,ワカメ,クルマエビ,真珠などの養殖が盛ん。わずかながら畜産も行なわれる。観光地として発展。

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百科事典マイペディアの解説

天草諸島【あまくさしょとう】

熊本県西部,八代海を隔てて本土に対する諸島。本渡瀬戸で分けられた天草上島天草下島を主島とし,大矢野御所浦などの島々があり,熊本県天草市と天草郡苓北町に属する。
→関連項目宇土半島大矢野[町]熊本[県]御所浦[町]長島(鹿児島)本渡[市]八代海

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世界大百科事典 第2版の解説

あまくさしょとう【天草諸島】

九州本土の中西部,熊本県宇土半島から南西海上に浮かぶ大矢野島,千束蔵々(せんぞくぞうぞ)島(維和島),天草上島(上島),御所浦島(御所浦町),天草下島(下島)など大小110余の島々を指す。総面積約881.5km2。人口15万4103(1995)。行政上は本渡,牛深の2市と天草郡13町からなる。交通,経済,文化の面から,上島以東は熊本県,下島の北西部は長崎県,南西部は鹿児島県との関係が深い。天草は出稼ぎの島として知られる。

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大辞林 第三版の解説

あまくさしょとう【天草諸島】

熊本県南西部、天草上島・下島を主島とし大小約一一〇からなる島々。キリシタンの遺跡が多い。九州本土と天草五橋により結ばれる。

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日本の地名がわかる事典の解説

〔熊本県〕天草諸島(あまくさしょとう)


九州中部西岸沖、熊本県南西部に位置する島嶼(とうしょ)群。天草上(かみ)島・天草下(しも)島・大矢野(おおやの)島など大小120余の島からなる。天草市・上天草市と天草郡苓北(れいほく)町からなる。全体に山がちで平地は少なく、リアス式海岸が発達。1966年(昭和41)の天草五橋の完成後、観光地化が加速。キリシタン史跡が多く、海岸美とともに観光客に人気。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

天草諸島
あまくさしょとう

熊本県南西部に位置する島嶼(とうしょ)。天草下島(しもしま)(573.95平方キロメートル、熊本県)、天草上島(かみしま)(225.23平方キロメートル、熊本県)、長島(90.57平方キロメートル、鹿児島県)、大矢野島(おおやのしま)(29.88平方キロメートル、熊本県)などを主島とし大小130余の島々からなる。全域、標高700メートル以下の低山地であるが、多くの断層によって小山塊に分けられているので、標高に比べて、山懐(やまふところ)が深くかつ多い山地景観を呈し、平坦(へいたん)地も乏しい。地質的には、大部分が新生代第三紀の堆積(たいせき)岩からなるが、北東部の戸馳島(とばせじま)、維和島(いわじま)から、天草上島の東海岸部、御所浦島(ごしょうらじま)を経て、獅子島(ししじま)、天草下島の南海岸部に達する地域と、天草下島の西海岸部には、中生代白亜紀の堆積岩が分布している。また、長島には天草上島などとは起源の異なる第三紀の火山岩が分布している。気候的には、早崎瀬戸―本渡(ほんど)瀬戸―大崎(水俣(みなまた)市)を連ねた線で二分される。西半の天草下島、獅子島、長島を主島とする地域は、冬暖かく、夏に雨が多く、しかも気温上昇の鈍い海洋性の気候を呈するのに対し、東半の天草上島、大矢野島、御所浦島を主島とする地域は、年平均気温、年降水量ともやや低少である。しかし、夏には「肥後のこち風」(山越えの南東風)の影響を受け、かなり高温になる。
 大小130余の島々からなる天草諸島は、北に天草灘(なだ)、早崎瀬戸、三角(みすみ)ノ瀬戸を挟んで、それぞれ長崎半島、島原半島、宇土(うと)半島、南に黒之瀬戸を挟んで番所ノ鼻(鹿児島県)、東に八代(やつしろ)海を挟んで八代平野、九州山地とそれぞれ相対し、さらに西で東シナ海に連なる天草灘に臨む要地に位置する。このため、中世には肥後の豪族だけでなく、肥前、薩摩(さつま)の豪族も天草諸島の領有をもくろんでいた。たとえば、相良(さがら)氏(肥後)に追われた豪族長島氏が島津氏(薩摩)の保護を求め、島津の肥後進出の契機をなしたのは、その好例といえる。とくに、この進出は、律令(りつりょう)制の地方行政区画として定められて以降、変わることなく持続されてきた天草諸島の全域を「肥後国天草郡」一郡とする地域掌握単位を崩した。すなわち、天草郡下の長島、獅子島などが薩摩国出水(いずみ)郡下に編入(1581)、これ以降、現在に至るまで続いている。したがって今日、天草諸島を行政区画単位として扱う場合には長島、獅子島などを含めないが、地理区画単位の場合には含めるのが一般的である。
 島原・天草一揆(いっき)の背景には、天草諸島の低生産性を無視した過酷な年貢割付(ねんぐわっぷ)もあるといわれるほど、天草郡の郡高(初め4万5000石、のちに2万1000石に減)は実情とかけ離れたものであった。「耕して、天に至る」とまで形容されたように、短い小河川がつくりあげた樹枝状に延びた沖積地はもとより、島を覆う低山地斜面は、各所で段々畑に利用され、自給作物であるサツマイモ、麦の栽培が行われた。それでも島の人々の経済状態は好転せず、山方にあっては薪炭製造、海方では漁労と生業を兼ね、兼業のできないものは男女を問わず出稼ぎ奉公(長崎奉公、からゆきさん)に出た。とくに出稼ぎ者は、文化だけでなく、経済基盤の脆弱(ぜいじゃく)性を補う産業に対しても鋭敏に反応し、江戸後期のカツオ釣り漁の導入(牛深(うしぶか)ほか)、明治時代の坑木林業(天草下島、天草上島、御所浦島)、イワシ網漁(牛深ほか)、養蚕業(本渡ほか)、クルマエビ養殖(維和島)、大正時代の酪農業(大矢野島)、昭和期の花卉(かき)露地栽培(大矢野島)、野菜露地半促成栽培(河浦(かわうら)ほか)、野菜露地抑制栽培(苓北(れいほく)ほか)などの産地形成化に重要な役割を演じた。天草六橋(天草瀬戸大橋をも含む)架設後は、宇土半島を陸橋として、熊本本土とのつながりが密接化し、繊維、電子関係など労働集約型工場の進出(本渡、河浦ほか)がみられるほか、それまで、雲仙(うんぜん)天草国立公園に指定されていながらも、道路網の未整備から観光産業と無縁であったこの地に、滞在(宿泊)型観光に対応する諸施設(ホテル、旅館など)がつくられつつある。
 陸上交通全盛の現代においても、天草諸島と相対する周縁地域との海上交通路は確保されている。たとえば、三角(宇土半島)―松島(天草上島)―本渡(天草下島)、松島―八代、牛深(天草下島)―蔵之元(長島)(鹿児島県)、中田(天草下島)―片側(獅子島)(鹿児島県)―諸浦(長島)、苓北(天草下島)―茂木(もぎ)(長崎市)、鬼池(おにいけ)(天草下島)―口之津(くちのつ)(長崎県南島原市)などは主要海路で、日常の往来も頻繁である。天草諸島を仲介にして形成された長崎、佐賀、熊本、鹿児島4県民の錯綜(さくそう)した通婚圏は、文化的な坩堝(るつぼ)としての天草諸島の性格を物語ってもいる。
 観光資源でもあるキリシタンにまつわる文物は、貧困にあえぐ島の人々がその救いをイエスに求め、つかのまの安らぎを得たもので、全域でみいだされる。長崎、島原を介し、天草諸島に伝播(でんぱ)したこの信仰は、厳しい弾圧の繰り返しにもかかわらず、「隠れキリシタン」としてその灯をたやすことのなかったのは、天草の島嶼性と、山懐の深くかつ多い山地性に依存している。[山口守人]
『青木秀穂著『天草郷土史譚』(1952・みくに社) ▽『天草の歴史』(1962・本渡市) ▽山口修著『天草』(1963・金龍堂)』

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世界大百科事典内の天草諸島の言及

【熊本[県]】より

…またこの構造線の南側つまり外帯にあたる地域は九州山地で,V字状の渓谷と険しい山々がそびえ,球磨川中流に人吉盆地を抱いている。本土から南西に突き出た宇土半島の南西方には八代海をはさんで天草諸島が浮かぶ。 気候は複雑な地形を反映して地域的に変化があり,熊本地域は内陸的気候で,寒暑の差が比較的大きく,南部の九州山地は降水量の多い,やや冷涼な山岳気候を呈し,天草の沿海部はおだやかな海洋性気候で,海岸には亜熱帯植物がみられる。…

※「天草諸島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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