人形浄瑠璃,歌舞伎狂言の一系統。戦国時代末期の豊臣秀吉一代記に取材したもの。実録小説《真書太閤記》や1797年(寛政9)から1802年(享和2)に刊行された読本《絵本太閤記》などで知られた題材である。人形浄瑠璃だけで30編前後を数える。近松門左衛門の《本朝三国志》が初作で,後続の作品に大きい影響を与えた。1719年(享保4)初演。ついで25年の竹田出雲の《出世握虎稚物語(しゆつせやつこおさなものがたり)》が注目される。講釈のたねにもなった好評作。宝暦(1751-64)から天明(1781-89)にかけて,《三日太平記》《時代織室町錦繡(にしき)》《韓和聞書帖(からやまとききがきぞうし)》など8作がある。《時代織室町錦繡》は8段物の技巧作で,81年2月初演。寛政・享和期(1789-1804)に多く作られ,89年《木下蔭狭間合戦(このしたかげはざまがつせん)》,91年《彫刻左小刀》,93年《蝶花形名歌島台》,94年《唐錦艶書功(からにしきえんしよのいさおし)》《日本賢女鑑》,96年《鬼上宦漢土日記(おにしやがんもろこしにつき)》,99年《絵本太功記》《太功後編の旗颺(たいこうごにちのはたあげ)》,1801年《日吉丸稚桜(わかきのさくら)》など16作があり,この時期は太閤記物の最盛期であり,注目作の《木下蔭狭間合戦》と代表作の《絵本太功記》とで終始した。前者は桶狭間(おけはざま)の合戦を背景としたもので歌舞伎においてもくり返し上演された。後者は絶えることなく行われてきた。さらに07年(文化4)《八陳(陣)守護城(はちじんしゆごのほんじよう)》,12年《瓢馬印黄金千生(はでさしものこがねのせんなり)》,25年(文政8)《出世太平記》など。《八陳守護城》は,加藤清正を中心に豊臣家の没落を描いたもの。歌舞伎では,1795年(寛政7)3月江戸の桐座《時今廓花道(ときはいまくるわのはなみち)》,1808年鶴屋南北作《時桔梗出世請状(ときもききようしゆつせのうけじよう)》のほか,明治期に多く,河竹黙阿弥の76年《音響千成瓢(おとにひびくせんなりひさご)》《出世娘瓢簪(ひさごのかんざし)》,82年《張扇子朝鮮軍記》など。3世河竹新七には84年《種瓢真書太閤記》のほか,85年《花見時瓢太閤記》がある。福地桜痴には,91年《太閤軍記朝鮮巻》がある。なお,江戸期の作品は,木下藤吉郎を此下当(東)吉,羽柴秀吉を真柴久吉,織田信長を小田春永,明智光秀を武智光秀として脚色するのが通例であった。
執筆者:佐藤 彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…余七は十返舎一九。太閤記物の一つ。実録小説《真書太閤記》や読本《絵本太閤記》などで知られた秀吉一代記のうち,今川義元の桶狭間(おけはざま)の戦を背景に,美濃の斎藤竜興の軍師竹中官兵衛(史実の半兵衛)と,小田春永(織田信長)の軍師此下当吉(このしたとうきち)(木下藤吉郎)との知略比べや,盗賊石川五右衛門の活動などを取り合わせたもの。…
※「太閤記物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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