南北戦争中リンカーン大統領が発した宣言。1862年9月の予備宣言と翌63年1月1日の本宣言とがある。戦争の勃発(ぼっぱつ)(1861)以来、内戦の目的は、奴隷の解放にあるのか、連邦の維持(国家統一の維持)にあるのかが最大の論争点であった。リンカーンは一貫して戦争の主要目的を連邦の維持に限定し、奴隷解放の問題に関しては、連邦にとどまった奴隷州への影響を考慮して態度を明らかにしなかった。しかし、連邦軍の占領下に置かれた地域の奴隷や、連邦軍支配下の地域に逃亡してくる奴隷の処置は深刻な問題となった。このような軍事上の必要とヨーロッパ諸国からの干渉の危険を排除するために、リンカーンは62年9月22日の予備宣言を経て、63年1月1日付けで、「これ以降、依然として合衆国に対して反乱状態にある地域の奴隷は即時、無償解放される」と宣言する。この宣言は、境界奴隷州や連邦軍占領下の地域を対象から除外し、その実質的効果は限定されたものであったが、内外の世論を連邦軍支持に結び付けるうえで大きな役割を果たし、同時に南北戦争上の大きな画期点となった。
[長田豊臣]
『山口房司著『南北戦争研究』(1985・啓文社)』
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リンカン大統領は1862年9月,アメリカ合衆国に対して反乱を起こしている州内の奴隷は63年1月1日を期して自由となると宣言し(予備宣言),翌年1月1日それを確認した(本宣言)。合衆国に忠誠な奴隷州の奴隷は除外されていたが,この宣言は憲法修正による奴隷制の全面的廃止を促し,それは憲法修正第13条(65年発効)として実現した。
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出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…黒人に対する差別の歴史はきわめて古いが,奴隷解放以後現在までの経過は,次の六つの段階に分けられる。(1)再建時代 南北戦争中の1863年に出された奴隷解放宣言は,戦争が終わった65年に憲法修正第13条として明文化された。南部が連邦軍の支配下にあったこの時代に,解放された黒人に対する権利保障の法制化が進む。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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