日本大百科全書(ニッポニカ) 「如来教」の意味・わかりやすい解説
如来教
にょらいきょう
尾張(おわり)国(愛知県)熱田(あつた)の農村女性、一尊如来(いっそんにょらい)きの(1756―1826)が開いた宗教。如来を全知全能の創造主、慈悲の神とする。すでに釈迦(しゃか)が説いた教えは全真理の六分で、残りの四分の教えを説くとし、如来は末法のすべての人間を救済するために金毘羅(こんぴら)を使者として、きのに遣わしたという。あらゆる人間を悪の種とする独自の原罪説にたち、人間は如来の慈悲にすがってのみ救われるとし、如来の前では人間はすべて平等であると説いて、下積みの民衆の救済を求め続けた。如来教は幕末に尾張藩の禁圧を受け、国家神道(しんとう)体制下では曹洞(そうとう)宗に属して、仏教化した。この1世紀半近い受難のもとで、如来教は閉鎖的な小教団となり、教典「お経様」は教内ですら厳重に秘匿され、近年まで幻の教典となっていた。本部は愛知県名古屋市熱田区旗屋にあり、青大悲寺を本山とする。寺院数34、布教所数1、教師数11、信者数2982(『宗教年鑑』平成26年版)。
[村上重良]
『村上重良校注『お経様――民衆宗教の聖典・如来教』(平凡社・東洋文庫)』