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姓名/日本のおもな姓氏 せいめいにほんのおもなせいし

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

姓名/日本のおもな姓氏
せいめいにほんのおもなせいし

この表は次のような基準、観点で編集した。
(1)選択のおよその基準としては、〔1〕人口の多いもの、佐久間英(えい)が、姓氏を人口の多いものから順位をつけたいわゆる佐久間ランキング(1968)のうち上位にあるもの、〔2〕順位にかかわらず、歴史上著名なものの一部、〔3〕姓氏の型に特徴のあるもの、などである。
(2)書き方は同じでも、読み方の違う姓氏は、異なる読みもできるだけ掲げた。
(3)読みは同じでも、書き方の違う姓氏で、同概念、同範疇(はんちゅう)と考えられるものは、異なる書き方をできるだけ示した。「通用」の表示はその意味である。
(4)姓氏を、氏姓(うじせい)(古代の氏からくるもの)・古姓・地名姓・屋号姓・職業姓・佳称姓・カバネ姓・曰(いわ)く姓(特別な曰くから生じた姓)・名代(なしろ)姓(古代の御名代)・部(べ)姓(古代の部民)など、いくつかの型に分類明示した。そのほか適宜、著名姓・古族・大姓(数が多く、社会的にも活躍しているとみなされるもの)・名族・古名族などの表現を用いて姓氏の型を表した。
(5)なお、姓氏の後に*印を付したものは、本書中に歴史上重要な姓氏として独立した項目があることを示し、参照の便を図った。
 ただし、その本項目名は、「――氏(うじ)」「――家(け)」となっている。[丹羽基二]
〔あ行〕
相川(あいかわ)
 会川・合川・愛川・鮎川等に通用。地名姓。2川合流の地点を表す。それより姓氏へ。おもな族は〔1〕山辺郡相川村発祥の大和(やまと)の族、〔2〕常陸(ひたち)の族は藤原秀郷(ひでさと)流小野崎氏族、〔3〕陸奥(むつ)津軽郡の豪族、ほか異流が多い。
青木(あおき)
 仰木・青樹・青鬼・檍・碧木・青城等に通用。地名姓。全国約30万。おもな族は〔1〕甲斐国巨摩(こま)郡青木村より興る清和源氏武田氏流、〔2〕武蔵国入間郡青木村より興る丹(たん)党流、〔3〕蒲生(がもう)氏流、藤原秀郷(ひでさと)流佐野氏族など、ほかにも流派は多い。
青山(あおやま)
 碧山に通用。著名姓。地名姓。約8万。おもな族は〔1〕三河国額田(ぬかた)郡百百(どうどう)村発祥の藤原北家花山院流、篠山(ささやま)藩主家もこの系、〔2〕蒲生(がもう)氏流、〔3〕本間氏流、〔4〕ほか武蔵、尾張、美作(みまさか)などにもある。
赤松(あかまつ)
 地名姓。曰(いわ)く姓。中世の大姓。播磨(はりま)国赤穂郡赤松より興る。一般に村上源氏を称する。建武(けんむ)の中興では則村(のりむら)が名をあげる。則房のとき豊臣秀吉に降(くだ)り、阿波に封ぜられたが、関ヶ原の戦いで西軍につき、自刃して滅ぶ。支族が多い。
秋田(あきた)
 あいた。安慶田・安木田・龝田・飽田・齶田等に通用。地名姓。佳称姓。名族。羽後国秋田郡より興る。陸奥(むつ)安倍氏族。安東氏の裔(えい)という。安倍貞任(さだとう)の末子高星安東太郎の後胤(こういん)
秋葉(あきば)
 秋場・秋庭・秋羽等に通用。地名姓。曰(いわ)く姓。おもな族は〔1〕相模国高座郡秋葉発祥の桓武平氏三浦氏族、〔2〕武蔵国埼玉郡秋葉発祥の豪族、〔3〕三河、備中にもある。
秋元(あきもと)
 秋本・龝本等に通用。曰(いわ)く姓。地名姓。関東、東北に多い。おもな族は〔1〕上総(かずさ)国周准(すす)郡秋元庄発祥の宇都宮氏流、〔2〕武蔵国荏原(えばら)郡の菅原姓、ほか陸中にも名族がある。
秋山(あきやま)
 明山・龝山等に通用。地名姓。佳称姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕宇陀(うだ)郡神戸村秋山城発祥の大和の族、〔2〕甲斐国巨摩(こま)郡秋山村発祥の清和源氏加賀美氏族、〔3〕讃岐(さぬき)、下総(しもうさ)、武蔵などにもある。
芥川(あくたがわ)
 阿久刀川(あくとがわ)に通用。地名姓。淀(よど)川支流の芥川より地名へ、湿低地の川の意。おもな族は〔1〕摂津国島上郡芥川村発祥の桓武平氏流、〔2〕清和源氏小笠原流、ほか近江、羽後、阿波にもある。
(あくつ)
 阿久津・堆・安久津等に通用。地名姓。泥湿地帯の意。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国茨城郡阿久津発祥の桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、〔2〕下野(しもつけ)国の氏は丹治(たじ)氏流、〔3〕磐城(いわき)の氏は田村氏流、ほかがある。
浅井(あさい)
 浅居・阿佐井・阿佐伊・朝井等に通用。地名姓。東海地方に多い。〔1〕近江国浅井郡発祥の族は、浅井宿禰(すくね)の裔(えい)、〔2〕三河国幡豆(はず)郡浅井村発祥の族は橘(たちばな)氏流、ほか佐々木氏族などがある。
浅野(あさの)
 朝野・浅埜・安佐野等に通用。古姓。地名姓。古姓には朝野宿禰(すくね)の裔(えい)がある。そのほか〔1〕美濃国土岐郡浅野発祥の族は清和源氏土岐氏族、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓、〔3〕松平氏流などがある。
足利(あしかが)
 地名姓。名族。下野(しもつけ)国足利郡名を負う。おもな族は〔1〕秀郷(ひでさと)流藤原姓の氏、〔2〕清和源氏義家(よしいえ)流の氏、これより室町将軍家が出、中世、大いに活躍した。
安食(あじき)
 あしき。葦敷・芦敷・安飾等に通用。地名姓。〔1〕尾張国春部(かすかべ)郡安食郷発祥の族は清和源氏浦野氏族、〔2〕常陸(ひたち)国新治郡安食発祥の族は藤原北家道兼流、ほか異流もある。
(あずま)
 ひがし・やまと・とう。吾妻・我妻・吾嬬・東妻等に通用。地名姓。古大姓。おもな族は〔1〕東国造(くにのみやつこ)、〔2〕桓武平氏千葉氏流、〔3〕清和源氏佐竹氏流、〔4〕藤原秀郷(ひでさと)流、ほか異流が多い。
麻生(あそう)
 あさぶ。朝生・麻布・床生・安生・安相等に通用。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕豊前(ぶぜん)国宇佐郡麻生郷発祥の宇都宮氏流、〔2〕常陸(ひたち)国行方(なめかた)郡麻生郷発祥の桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、〔3〕清和源氏頼親(よりちか)流、〔4〕筑前宇都宮氏流、などである。
安達(あだち)
 足立・安建・安館・阿達等と通用。地名姓。物象姓。おもな族は〔1〕奥州の安達郡から興った高麗(こま)(高句麗(こうくり))渡来族、〔2〕同前地より発祥した坂上氏流、ほか全国に異流も多い。
足立(あだち)
 安達・足達・天建・安館等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕武蔵の族は武蔵国造(くにのみやつこ)の裔(えい)、〔2〕常陸(ひたち)の氏は江戸氏族、ほか尾張、三河、河内、常陸、丹波などにも名族がある。
安積(あづみ)
 あさか・あつみ。厚見・安曇・阿尺・阿坂・安坂等に通用。古名姓。地名姓。陸奥(むつ)国安積(あさか)郡安積郷発祥。〔1〕阿倍安積臣(おみ)の裔(えい)、〔2〕大伴安積連(むらじ)の裔、〔3〕藤原南家工藤氏流などがある。
畔蒜(あひる)
 あびる・あんびる。阿比留・安昼・安蒜・安蛭・阿蒜等に通用。地名姓。〔1〕上総(かずさ)国畔蒜郡発祥の族は蘇我(そが)氏族という、〔2〕対馬(つしま)の族は対馬直(あたい)の裔(えい)、ほか。
油谷(あぶらや)
 あぶらだに・ゆたに・ゆや。油家・油屋・油矢等に通用。職業姓。屋号姓。油屋の転。西日本に多く、約6000。
阿部(あべ)
 安拝・阿閉・安倍・安部・阿倍・阿閇等20通りに記されるが、ともに通用。古来から大姓。アベ姓約30万。本貫は大和国葛下(かつらぎしも)郡阿倍。一族が栄えるにしたがって諸国に「アベ」の地名をつくり、居住。主流は孝元(こうげん)天皇の皇子大彦命(みこと)という。命は四道将軍として東征したため、東北・東海方面の開拓にあたり、後世子孫はとくに東日本に広まった。
天野(あまの)
 天埜・天濃・尼野・阿万野等に通用。古名姓。地名姓。東海地方に多い。おもな族は〔1〕紀伊国伊都郡丹生都比女(にうつひめ)神社の天野祝(はふり)の後、〔2〕藤原南家流、〔3〕三河の名族、〔4〕秀郷(ひでさと)流藤原姓首藤(すどう)氏流、ほか異流が多い。
雨宮(あまみや)
 あめみや・あめのみや・あめのもり。甘宮等に通用。地名姓。信仰姓。おもな族は信濃国埴科(はにしな)郡雨宮発祥の清和源氏村上氏族、ほか甲斐、武蔵などに同族、異族も多い。
甘利(あまり)
 天利・余戸(あまりべ)・余目(あまるめ)に通用。古姓。地名姓。全国の古代余戸より興る。おもな族は〔1〕甲斐国北巨摩(きたこま)郡甘利発祥の清和源氏武田氏族、〔2〕陸前の余目氏は伊沢流、ほか全国に多い。
新井(あらい)
 にいい。新・新居・荒井・荒居・洗井・洗伊等に通用。新田開発によってできた地名姓。関東に多い。おもな族は〔1〕上野(こうずけ)国新田(にった)郡新井発祥の清和源氏新田氏流、〔2〕岩代(いわしろ)国安達郡荒居発祥の桓武平氏千葉国分氏流、ほか武蔵、甲斐などに名族も多い。
荒川(あらかわ)
 安楽川・新川・洗川等に通用。川名から地名、姓氏へ。東日本に多い。おもな族は〔1〕羽後国仙北郡荒川村発祥の吉彌侯部(きみこべ)流荒川氏族、〔2〕磐城(いわき)国磐城郡荒川郷発祥の桓武平氏磐城氏流、〔3〕三河国幡豆(はず)郡荒川発祥の清和源氏足利氏流、ほか全国に異流が多い。
安楽(あらき)
 あんらく・やすら。荒城・荒木等に通用。寺名姓。佳称姓。職業姓。〔1〕荒城、荒木を佳字にした場合、〔2〕安楽寺の寺名、またはそれより発祥した地名を姓にした場合などがある。西日本に多く、約4000。
荒木(あらき)
 墾・墾木・安楽城・新城・新木・新来等に通用。開拓の意、木柵(ぼくさく)や築城の意をもつ地名。古姓。地名姓。おもな族は〔1〕荒木臣(おみ)の古姓、〔2〕摂津の荒木氏は古代荒木臣の裔(えい)、ほか武蔵、伊賀、豊前(ぶぜん)など全国に多い。
有馬(ありま)
 在間・有麻・蟻馬等に通用。著名姓。地名姓。おもな族は〔1〕摂津国有馬郡有馬庄発祥の赤松流、〔2〕肥前国高来郡有馬発祥の大村氏族、〔3〕紀伊国牟婁(むろ)郡有馬荘発祥の榎本氏流、ほか異流もある。
安藤(あんどう)
 安道・安遠・安東等に通用。藤原姓を称する安倍氏の意。東日本に多く、約13万。おもな族は〔1〕陸奥(むつ)国津軽郡発祥の安東氏族、〔2〕同前族の秋田安藤氏族、ほか三河安藤、濃尾安藤、近江、伊勢、中国地方にも蔓延(まんえん)した。
飯島(いいじま)
 いいしま。地名姓。曰(いわ)く姓。おもな族は〔1〕信濃国伊那郡飯島邑(むら)発祥の清和源氏片切氏流、〔2〕清和源氏村上氏族、ほか常陸(ひたち)、会津、河内などにもある。
飯田(いいだ)
 いいた。飯多・伊々田等に通用。地名姓。職業姓。関東地方に多く、約10万。おもな族は〔1〕甲斐国西山梨郡飯田発祥の族は清和源氏武田氏族、〔2〕信濃国伊那郡飯田発祥の清和源氏村上氏流、ほか小笠原氏流、豊後(ぶんご)の清原氏流などがある。
飯塚(いいづか)
 めしづか。飯束に通用。飯を盛ったような塚の形より地名、姓氏へ。東日本に多い。おもな族は〔1〕武蔵国埼玉郡飯塚邑(むら)発祥の小野姓猪股(いのまた)党。〔2〕桓武平氏畠山氏流、〔3〕秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏流などがある。
五十嵐(いがらし)
 無凧・猪頭等に通用。地名姓。曰(いわ)く姓。信越、東北に多い。おもな族は〔1〕越後国蒲原(かんばら)郡五十嵐発祥の五十嵐神族、〔2〕坂上姓田村氏族、〔3〕清和源氏小笠原氏族、〔4〕会津の氏、その他。
池田(いけだ)
 池他・池多・池太等に通用。地名姓。諸国の池田地名より興る。〔1〕和泉(いずみ)国和泉郡池田郷は古代池田首(おびと)の発祥地という、〔2〕美濃国土岐郡池田発祥の族は清和源氏土岐氏流、〔3〕岡山・鳥取藩の池田氏は摂津橘(たちばな)氏流とする説と美濃池田説がある。
生駒(いこま)
 伊駒に通用。大和国生駒郡より興る氏が著名。藤原忠仁(ただひと)の後という。ほかに紀伊、美濃、尾張などにもある。
(いし)
 いそ・かず・せき。井志・伊四・壱師・壱志等に通用。物象姓。地名姓。略姓。〔1〕石井、石田などの略、〔2〕古代磯(いそ)族の裔(えい)、〔3〕安倍氏流社部臣(こそべのおみ)の裔などがある。
石井(いしい)
 いわい。伊志井・伊志伊・石伊・石射等に通用。地名姓。諸国の「イシイ」地名より興る。約12万。おもな族は〔1〕下野(しもつけ)国河内郡石井より興る藤原北家宇都宮流、〔2〕下総(しもうさ)国海上(うなかみ)郡石井郷発祥の族、〔3〕伊勢国鈴鹿郡石井発祥の桓武平氏関流、〔4〕公家(くげ)の桓武平氏西洞院流などがある。
石川(いしかわ)
 いしこ。石河に通用。地名姓。古大姓。諸国の石川より興る。約25万、全国にあまねく分布する。武内宿禰(たけしうちのすくね)より出たという石川臣(おみ)は河内発祥。蘇我倉山田石川麻呂(そがのくらのやまだのいしかわのまろ)を出す。ほか中近世に多くの石川氏が活躍した。
石田(いしだ)
 石多・伊志田等に通用。諸国の石田地名を負う。古姓。地名姓。約11万。おもな族は〔1〕垂仁(すいにん)帝の裔(えい)という山城の古名族、〔2〕相模国大住郡石田郷発祥の三浦氏族、〔3〕武蔵国多摩郡石田村発祥の武蔵七党小野流、ほか木曽氏流、大江流毛利氏族などがある。
石塚(いしづか)
 いしつか。石墳・石束等に通用。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国那珂(なか)郡石塚より興る清和源氏佐竹氏流、〔2〕下野(しもつけ)国安蘇(あそ)郡石塚発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族、ほかがある。
石橋(いしばし)
  いしはし。矼・磴等に通用。古姓。物象姓。地名姓。九州に多い。おもな族は〔1〕甲斐国八代郡小石和(こいさわ)筋石橋村発祥の清和源氏武田氏流、〔2〕下野(しもつけ)国河内郡石橋村発祥の清和源氏足利氏流、ほか美濃、摂津、若狭などにある。
石原(いしはら)
 いしわら。古姓。地名姓。諸国の地名より興る。西日本に多い。おもな族は〔1〕甲斐国造(くにのみやつこ)族は三枝(さえぐさ)氏流、〔2〕三河国宝飯(ほい)郡発祥の清和源氏斯波(しば)氏流、ほか備前、美濃、上野(こうずけ)、武蔵などにもある。
(いずみ)
 井泉・和泉・温泉・湶・出水等に通用。古姓。地名姓。全国の「イズミ」より発祥。おもな族は〔1〕平泉藤姓の泉氏は秀郷(ひでさと)流御館(みやかた)族、〔2〕小野寺氏流の泉氏、〔3〕相馬氏流の氏、〔4〕荒木田氏流、ほか名族が多い。
(いそ)
 礒・伊曽・五十・伊蘇等に通用。地名姓。古名族。伊勢の地名の原形をなし、古代海洋族を祖とする。おもな族は〔1〕伊勢国造(くにのみやつこ)族度会(わたらい)氏は磯部の首(おびと)長磯連(むらじ)の裔(えい)、〔2〕佐々木氏流、〔3〕中臣(なかとみ)氏流、ほかがある。
板垣(いたがき)
 板柿に通用。地名姓。甲斐の大姓は山梨郡板垣発祥で清和源氏武田氏流、ほか越後、信濃、安芸(あき)などにもある。
板倉(いたくら)
 板蔵に通用。地名姓。おもな族は〔1〕下野(しもつけ)国足利郡板倉邑(むら)発祥の足利氏流、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓板倉氏、ほか上総(かずさ)、相模、備中、甲斐にもある。
伊丹(いたみ)
 井丹・井民等に通用。地名姓。当て字姓。著名な族は、摂津国河辺郡伊丹庄発祥の利仁(としひと)流藤原姓の伊丹氏、ほかに清和源氏岩松流、同頼季(よりすえ)流もある。
市川(いちかわ)
 一川・依知川・市河・一河等に通用。一つは国内の第一の川、二つは市辺に市の立つ川の意という。姓氏は地名(川名)を負う。おもな族は〔1〕桓武平氏城氏流、〔2〕甲斐国市川庄の橘(たちばな)氏流、〔3〕佐々木氏流、〔4〕武蔵国の武田氏流などがある。
一条(いちじょう)
 地名姓。京都一条発祥の族と、地方の条里制一条からくるものとがある。多くは雲上家である。〔1〕九条道家から出る一条摂関家、〔2〕藤原定家を出した御子左(みこひだり)家、〔3〕西園寺公経(きんつね)から出た西園寺流、〔4〕世尊寺流や持明院流、〔5〕土佐の一条氏、甲斐の武田氏流一条氏などがある。
一宮(いちのみや)
 いちみや。一の宮・一之宮・一ノ宮・市宮等に通用。中世における社格一宮からくる。神社名から地名、姓氏へ。おもな族は〔1〕阿波国名方(なかた)郡一宮発祥の紀姓一宮氏、〔2〕甲斐国東八代郡一宮発祥の武田氏流、ほか全国に多い。
市橋(いちはし)
 一橋に通用。地名姓。物象姓。おもな族は美濃国池田郡市橋庄より興る藤原姓市橋氏。三条家の末。一説に清和源氏頼親(よりちか)流ともいう。ほか佐野流、武藤流などがある。
一色(いっしき)
 地名姓。全国の荘園より発生、全国に多い。おもな族は、三河国幡豆(はず)郡一色庄発祥の足利氏流、ほか伊勢、尾張、若狭、丹後、因幡(いなば)、紀伊、武蔵などにある。
伊東(いとう)
 伊藤・伊統・井東・渭東・以東等に通用。地名姓。大姓。おもな族は伊豆国田方郡伊東庄発祥の工藤氏流、東日本に多い。ただし日向(ひゅうが)・備中の伊東も同族。のち伊勢国発祥の藤原氏伊藤と混同。全国に広まる。
伊藤(いとう)
 伊東・井東・井藤・依藤等に通用。地名姓。氏姓。藤原秀郷(ひでさと)5世孫公清(きみきよ)の裔(えい)基景(もとかげ)が伊勢に来住して伊藤を称する。東海地方に多く、約70万。著名人が多出した。おもな族は〔1〕前述の秀郷流、〔2〕相良(さがら)氏流、〔3〕越智(おち)氏流、ほか異流も多い。伊豆から出た伊東氏は、本来は別流だが、のち合流する。
稲垣(いながき)
 伊奈垣・稲墻・稲城等に通用。物象姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕三河の稲垣氏は清和源氏を称し、もと紀伊、伊勢が本貫、〔2〕越中、美作(みまさか)、肥前などにも名族がある。
稲富(いなとみ)
 いなどみ。稲留に通用。佳称姓。地名姓。おもな族、相模の氏は相良(さがら)氏流、「相良長頼(ながより)―頼貞(よりさだ)(稲富十郎)―彌十郎頼為(やじゅうろうよりため)」とある。ほか豊前(ぶぜん)国筑城(ついき)郡の氏は稲留ともいう。
稲葉(いなば)
 因幡・稲場・稲波・稲庭・稲羽等に通用。地名姓。古名族。〔1〕美濃国厚見郡稲葉発祥の族は河野氏流、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓伊賀氏流、ほか異流が多い。
犬飼(いぬかい)
 いぬがい。犬養・犬甘等に通用。職業姓。古代職業部より興る。名族。大和、山城、河内、和泉(いずみ)、信濃ほか全国に多い。おもな族は〔1〕信濃の安曇(あずみ)犬養氏は清和源氏平賀氏流、〔2〕丹波には源満仲(みつなか)より出た源姓犬甘党がある。
犬塚(いぬつか)
 いぬづか。犬束に通用。地名姓。犬の形をした塚から出た。おもな族は〔1〕三河国幡豆(はず)郡上犬塚村発祥の桓武平氏千葉氏流、〔2〕筑後国三潴(みづま)郡犬塚邑(むら)発祥の筑後宇都宮流などがある。
井上(いのうえ)
 いのえ。井ノ上・井之上・井於・井野上・伊野上に通用。井戸(泉)の上手、井戸の辺(へり)の意。全国の同地名より発祥。古姓。〔1〕坂上姓土師(はじ)氏流、〔2〕清和源氏頼季(よりすえ)流、〔3〕三河の安倍姓の氏、〔4〕佐々木氏流など、全国に広まる。
伊吹(いぶき)
 いふく・いぶく。伊福に通用。地名姓。職業姓。古代鍛冶部(かじべ)に関係がある。美濃国不破郡伊吹邑(むら)発祥の族は古代伊福部の裔(えい)。近江、美作(みまさか)にもある。
今井(いまい)
 今伊・今居等に通用。古井、本居(もとおり)などに対しての地名。新井に近い概念である。地名姓。約12万。おもな族は〔1〕信濃国筑摩(ちくま)郡今井邑(むら)発祥の族は中原氏流、〔2〕武蔵国児玉郡今井邑発祥の族は児玉党、ほか越後、羽前、上野(こうずけ)その他にもある。
今村(いまむら)
 今邑・今邨等に通用。地名姓。新村と同概念、東日本に多い。おもな族は〔1〕近江国伊香郡今村庄発祥の中原氏流、〔2〕佐々木氏流、〔3〕秀郷(ひでさと)流藤原姓河村氏流、ほか異流が多い。
入江(いりえ)
 入栄・煎江等に通用。著名姓。地名姓。おもな族は〔1〕京都上京区入江より発祥の村上源氏久我(くが)流の入江家、〔2〕藤原北家御子左(みこひだり)流、〔3〕駿河国有度(うど)郡入江荘発祥の藤原北家工藤氏流、ほか名族が多い。
岩井(いわい)
 岩居・盤井・伊和井等に通用。地名姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕物部(もののべ)氏流岩井氏、〔2〕海上(うなかみ)郡岩井発祥の下総(しもうさ)の岩井氏、〔3〕清和源氏宇野氏流、〔4〕信濃国高井郡岩井村発祥の信濃源氏、ほかがある。
岩崎(いわさき)
 いわざき・いわがさき。岩前・岩先・厳崎・巌崎・磐崎等に通用。地名姓。西日本に多く、約10万。おもな族は〔1〕甲斐国東八代郡岩崎発祥の清和源氏武田氏流、〔2〕磐城(いわき)国磐前郡発祥の桓武平氏岩城氏流、ほか秀郷(ひでさと)流佐野氏族、清和源氏里見氏流、渋谷氏流、紀姓大野氏流などがある。
岩田(いわた)
 岩多・巌田・盤田・磐田等に通用。石田に近い概念である。地名姓。全国約9万。おもな族は〔1〕武蔵国秩父郡岩田村発祥の丹党、〔2〕筑後国御原(みはら)郡岩田庄発祥の菅原姓、ほか三浦氏流、熊野別当族、児玉党などがある。
岩戸(いわと)
 いわど。岩門に通用。地名姓。おもな族は〔1〕三河国額田(ぬかた)郡岩戸発祥の藪田氏流、〔2〕下総(しもうさ)国印旛(いんば)郡岩戸村発祥の平姓千葉氏流、〔3〕筑前国那珂(なか)郡岩戸邑(むら)発祥の大蔵氏流などがある。
岩本(いわもと)
 岩下・岩元・巌本・磐本等に通用。地名姓。中国地方に多い。おもな族は〔1〕駿河国富士郡岩本邑(むら)発祥の藤原南家入江氏流、〔2〕清和源氏義光(よしみつ)流、〔3〕藤原北家熊野別当流、その他がある。
宇井(うい)
 鵜井に通用。曰(いわ)く姓。古名姓。熊野新宮党。鈴木、穂積氏とともに古来から熊野一帯を支配した古豪族。大和の氏、熊野別当族も同族である。
上杉(うえすぎ)
 上椙に通用。地名姓。中世以来の大族。〔1〕藤原北家高藤流で、丹波国何鹿(いかるか)郡上杉荘より興る。室町期に関東管領(かんれい)の執事となって栄える。〔2〕戦国のころ、長尾景虎(かげとら)が上杉憲政(のりまさ)より上杉の称号と管領の地位を譲られ、北陸に威を振るった。これが有名な謙信である。〔3〕次の景勝のとき、会津から出羽に移された。支流は全国に多い。
上田(うえだ)
 かみた。上多・植田・宇江田・殖田等に通用。古姓。地名姓。約11万。おもな族は〔1〕紀伊国伊都郡上田邑(むら)発祥の橘(たちばな)氏流、〔2〕近江国蒲生(がもう)郡発祥の佐々木氏流、〔3〕信濃国小県(ちいさがた)郡上田発祥の清和源氏小笠原氏流、ほか大江氏流、日奉(ひまつり)姓西党、桓武平氏長尾氏流などがある。
植田(うえだ)
 上多・上田・宇恵田・殖田等に通用。地名姓。〔1〕讃岐(さぬき)国山田郡植田郷発祥の族は讃岐公(きみ)姓、〔2〕磐城(いわき)国菊多郡植田邑(むら)発祥の族は桓武平氏岩城氏流、〔3〕近江国甲賀郡植田村発祥の族は佐々木氏流、ほか異流も多い。
上野(うえの)
 こうずけ・あがの・かみの。上乃・上埜・上之・植野等に通用。地名姓。上毛野(かみつけの)国の国名を負う氏と、諸国の上野地名を負うものとある。おもな族は〔1〕上毛野国造(くにのみやつこ)の裔(えい)、〔2〕三河国碧海(あおみ)郡上野荘発祥の清和源氏足利氏流、〔3〕越後国魚沼(うおぬま)郡上野邑(むら)発祥の清和源氏新田氏族、ほかがある。
上原(うえはら)
 かみはら・かみのはら。植原・宇栄原・上腹等に通用。古姓。地名姓。おもな族は〔1〕古代上原首(おびと)の裔(えい)、〔2〕桓武平氏千葉氏流、〔3〕赤松氏流、〔4〕清和源氏平賀氏流、ほか異流が多い。
植村(うえむら)
 上村・上邑・植邨・樹村等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕遠江(とおとうみ)国上村より興った清和源氏土岐氏流、〔2〕三河の氏は〔1〕の後裔(こうえい)、ほか土佐、丹波にもある。
鵜飼(うかい)
 うがい。鵜養・鵜甘・宇甘等に通用。古代の職業姓。地名姓。おもな族は〔1〕伊賀の名族は嵯峨(さが)源氏安中氏流、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓久下(くげ)氏流、ほか諸国に異流がある。
宇佐美(うさみ)
 宇佐見に通用。地名姓。当て字姓。伊豆国田方郡宇佐見庄発祥の族。工藤氏伊東流で、別流は越後、常陸(ひたち)、伊勢、阿波、讃岐(さぬき)ほか諸国に広まる。
氏家(うじいえ)
 うじえ。氏部・宇治部に通用。地名姓。名代姓。古名族。応神(おうじん)天皇の皇太子菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)の名代部よりくる。おもな族、下野(しもつけ)国芳賀(はが)郡氏家郷発祥の藤原北家宇都宮氏流。
宇田川(うだがわ)
 宇多川・宇陀川等に通用。ウタとは湿地か。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕佐々木氏族、〔2〕上杉氏流、〔3〕清和源氏流、ほか因幡(いなば)、会津などにも名族がある。
内田(うちだ)
 中田・内多・宇智田等に通用。古姓。地名姓。約25万。多く、自己の管理にある田をいう。『姓氏録』にも右京神別に内田臣(おみ)がみえる。〔1〕遠江(とおとうみ)国城飼(きかう)郡内田庄より興る者は藤原南家工藤氏流、〔2〕肥後国山鹿郡内田邑(むら)発祥の族は相良(さがら)氏流、ほか異流が多い。
内山(うちやま)
 中山・打山等に通用。地名姓。諸国の内山地名を負う。おもな族は〔1〕信濃国佐久郡内山邑(むら)発祥の清和源氏小笠原氏流、〔2〕筑後国筑紫郡内山邑発祥の大宰(だざい)少弐流、ほか異流が多い。
宇都宮(うつのみや)
 宇津宮に通用。大姓。地名姓。社名姓。下野(しもつけ)国宇都宮発祥、全国に広まる。粟田関白藤原道兼の曽孫宗円が宇都宮座主(ざす)となって宇都宮氏を興す。以来、東北はもちろん四国、九州まで一族は栄える。
榎本(えのもと)
 榎下・榎元・朴本・柄本等に通用。地名姓。古名姓。〔1〕山城国乙訓(おとくに)郡榎本発祥の大伴連(むらじ)の裔(えい)、〔2〕熊野新宮党の古族、〔3〕下野(しもつけ)国都賀(つが)郡榎本邑(むら)発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓小山氏流、〔4〕藤原北家上杉氏流、ほか異流が多い。
海老名(えびな)
 蛯名・蝦名・恵比名・蛭名等に通用。地名姓、物象姓。おもな族は〔1〕相模国高座郡海老名邑(むら)発祥の族、〔2〕小野姓横山党、ほか一族は武蔵、伊勢、淡路、備中などに広まる。
圓城寺(えんじょうじ)
 寺名姓。地名姓。名族。下総(しもうさ)国印旛(いんば)郡城村円城寺発祥。桓武平氏千葉氏族。その支族は肥前、筑後にもある。中世に活躍した。
遠藤(えんどう)
 円藤・延藤・淵藤等に通用。地名姓。氏姓。遠江守(とおとうみのかみ)を職とする藤原氏の意。藤原南家工藤氏族、一説には渡辺党ともいう。東日本に多く、約20万。摂津を本拠に、渡辺氏と組んで諸国に広まる。別流に桓武平氏千葉氏流がある。
及川(おいかわ)
 尾井川・生川・老川・笈川等に通用。地名姓。当て字姓。東北地方の特姓。岩代国河沼郡笈川邑(むら)発祥の族は清和源氏頼政(よりまさ)流、ほか異流もある。
大石(おおいし)
 おおし。多石。古大姓。地名姓。東海地方に多く、約8万。おもな族は〔1〕近江国栗太(くりもと)郡大石発祥の大石村主(すぐり)の裔(えい)、〔2〕武蔵の豪族は清和源氏義仲(よしなか)流、〔3〕岩代国信夫(しのぶ)郡大石発祥の清和源氏為義(ためよし)流、ほか名族が多い。
大内(おおうち)
 おおち。太内に通用。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕伊賀国伊賀郡大内郷発祥の清和源氏義光(よしみつ)流、〔2〕周防(すおう)国吉敷(よしき)郡大内邑(むら)発祥の任那(みまな)族多々良公(たたらのきみ)流、中世史上に大いに活躍した。ほか佐竹氏流、菊池氏流、河野氏流などがある。
大川(おおかわ)
 凡河・太川等に通用。代表的な著名姓。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕羽後国山本郡大河発祥の奥州藤原氏、〔2〕陸中国下閉伊(しもへい)郡大川発祥の源姓閉伊族、ほか関東、九州にも名族がある。
大久保(おおくぼ)
 大窪に通用。地名姓。佳称姓。「窪」の字を忌んで久保に改めた。おもな族は〔1〕武蔵国入間郡大久保発祥の桓武平氏畠山氏流、〔2〕下野(しもつけ)国塩谷郡大久保邑(むら)発祥の宇都宮氏盛綱(もりつな)流、ほか全国に多い。
大沢(おおさわ)
 大佐和・太沢等に通用。地形地名から姓氏へ。東日本に多い。おもな族は〔1〕越前の藤原北家魚名(うおな)流、〔2〕藤原北家小田氏流、〔3〕清和源氏佐竹氏流、ほかがある。
大島(おおしま)
 多島・大志万・巨島・大志摩等に通用。古姓。地名姓。諸国の大島の地名より興る。古くは、大島国造(くにのみやつこ)、大島首(おびと)などと称した。おもな族は〔1〕肥前国松浦(まつら)郡的山大島発祥の源姓松浦党、〔2〕信濃国伊那郡大島邑(むら)発祥の清和源氏片切氏流、〔3〕上野(こうずけ)国新田郡大島邑発祥の清和源氏新田氏流、ほかがある。
太田(おおた)
 大田・多田・太多・大多等に通用。地名姓。地名を佳字にした傾向が強い。全国の地名でも大田と太田が両用される。古大姓。約25万。おもな族は〔1〕景行(けいこう)帝の裔(えい)大田君、美濃国安八(あはちま)郡大田郷発祥か、〔2〕摂津国三島郡太田邑(むら)発祥の清和源氏愛子(あやし)氏流、〔3〕上野(こうずけ)国新田郡太田邑発祥の清和源氏里見氏流などがある。
大竹(おおたけ)
 大宅・大岳・大嵩・大嶽・大武等に通用。地名姓。佳称姓。おもな族は〔1〕武蔵国足立郡大竹邑(むら)発祥の藤原北家糟谷(かすや)氏流、〔2〕下総(しもうさ)国埴生(はにゅう)郡大竹邑発祥の清和源氏畠山氏流、ほか武田氏流、浅野氏流などがある。
大谷(おおたに)
 おおや。多谷・大渓・大硲・大峪等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕桓武平氏渋谷氏流、〔2〕藤原魚名(うおな)氏流、〔3〕在原氏流、ほか丹後、越後、美作(みまさか)、因幡(いなば)などにもある。
大塚(おおつか)
 大墳・大束・大柄・大津加等に通用。地名姓。約20万。おもな族は〔1〕河内国丹比(たちひ)郡大塚邑(むら)発祥の橘(たちばな)姓楠(くすのき)氏族、〔2〕近江国蒲生(がもう)郡大塚村発祥の佐々木氏流、〔3〕常陸(ひたち)国多賀郡大塚邑発祥の藤原秀郷(ひでさと)流小野崎氏族、ほか異流も多い。
大友(おおとも)
 大伴・大供・大部等に通用。古大姓。職業姓。大伴氏は弘仁(こうにん)(810―824)以来、天皇の諱(いみな)を避けて大友にする。天皇に付き従う一族の意を表す。おもな族は〔1〕近江国滋賀郡大友郷発祥の大友漢人(あやひと)の裔(えい)、〔2〕相模国足柄郡大友邑(むら)発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓波多野氏族、〔3〕豊後(ぶんご)の氏は利仁(としひと)流藤原姓近藤氏流、ただし藤原秀郷流説もある。
大西(おおにし)
 太西に通用。太西の場合は、「大」に点を付けて同流異家を表す。地名姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕阿波国三好(みよし)郡大西邑(むら)発祥の清和源氏小笠原氏流、〔2〕近藤氏流、〔3〕本間氏流、〔4〕伏見稲荷(いなり)の秦(はた)姓大西氏などがある。
大野(おおの)
 多・大・太・大濃・太野・大埜等に通用。普通「オオノ」は地形からきた地名姓をさすが、古代の名族多(太)をさすこともある。「オオノ」姓は約13万。おもな族は〔1〕毛野(けの)氏より分かれた大野君の裔(えい)、〔2〕清和源氏斯波(しば)氏流、〔3〕桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、ほか佐竹氏流、美作(みまさか)の橘(たちばな)氏流、佐伯(さえき)氏流などがある。
大橋(おおはし)
 大梁・大峡・大箸等に通用。橋名から地名を通して姓氏へ。おもな族は〔1〕肥前国山本郡大橋邑(むら)発祥の桓武平氏流、〔2〕下野(しもつけ)国都賀郡大橋邑発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓小山氏族、ほか異流が多い。
大原(おおはら)
 大洞・太原等に通用。古大姓。地名姓。古姓には大原史(ふひと)、大原首(おびと)等がある。おもな族は〔1〕熱田神宮の社家で大原真人(まひと)から出た尾張族、〔2〕宇多源氏大原家、〔3〕設楽(しだら)氏流、〔4〕佐々木氏流などがある。
大森(おおもり)
 大守・大杜・大盛等に通用。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕駿河国駿河郡大森発祥の藤原北家中関白流、〔2〕武蔵の豪族、大森氏流、〔3〕秀郷(ひでさと)流藤原姓小野寺氏流、ほか大族が多い。
大山(おおやま)
 太山・鴻山等に通用。著名姓。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕羽前国西田川郡大山邑(むら)発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓、〔2〕常陸(ひたち)国茨城郡大山発祥の清和源氏佐竹氏流、〔3〕佐々木氏流、ほか異流が多い。
大和田(おおわだ)
 大輪田に通用。地名姓。海洋族ともいう。おもな族は〔1〕和田義盛(よしもり)の裔(えい)という桓武平氏三浦氏流、〔2〕駿河の族は和邇(わに)部姓という、ほか白河郡大和田邑(むら)発祥磐城(いわき)の大和田氏などがある。
(おか)
 丘・岳・嵩・邱等に通用。古姓。地名姓。西日本に多く、約9万。古くは岡連(むらじ)、岡日佐(おさ)、岡真人(まひと)などと称した。おもな族は〔1〕備前の宇喜多氏流、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏流、〔3〕清和源氏吉見流などがある。
岡崎(おかざき)
 おかさき。丘咲・岡咲等に通用。地名姓。四国に多い。おもな族は〔1〕藤原北家勧修寺(かじゅうじ)流、〔2〕武蔵七党の児玉党、〔3〕佐々木氏流、〔4〕大和の葛下(かつらぎしも)郡岡崎発祥の橘(たちばな)氏流、〔5〕大友氏流などがある。
小笠原(おがさわら)
 おがさはら。著名姓。地名姓。大族。約5万。発祥は甲斐国中巨摩(なかこま)郡小笠原邑(むら)。甲斐源氏加賀美遠光(かがみとおみつ)の次男長清(ながきよ)の後、清和源氏武田氏流、中世以降、九州から東北まで天下に広まり、史上に活躍した。
岡田(おかだ)
 丘田・岡多・岳田・崗田等に通用。地名姓。諸国の岡田より発祥。〔1〕讃岐(さぬき)国寒川郡岡田村発祥の族は古代の岡田臣(おみ)の裔(えい)という。〔2〕信濃国筑摩(ちくま)郡岡田邑(むら)発祥の族は清和源氏義光(よしみつ)流、ほか佐竹氏流、千葉氏流、相馬氏流、佐々木氏流など、異流が多い。
緒方(おがた)
 尾形・緒片・小形等に通用。著名姓。地名姓。おもな族は豊後(ぶんご)国大野郡緒方郷発祥の三輪氏の裔(えい)、九州の大族で、蛇身伝説をもち、歴史上に活躍した。近世以降は医学に尽くした。異流もある。
岡部(おかべ)
 丘部・岡辺・小加部等に通用。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕武蔵国榛沢(はたさわ)郡岡部発祥の小野姓猪股(いのまた)党、〔2〕駿河国益頭(ましず)郡岡部邑(むら)発祥の藤原南家工藤氏流、ほか遠江(とおとうみ)、伊勢、美作(みまさか)、豊前(ぶぜん)などにもある。
岡村(おかむら)
 丘村・岡邑等に通用。地形地名より姓氏へ。おもな族は〔1〕信濃国小県(ちいさがた)郡岡村発祥の桓武平氏惟茂(これしげ)流、〔2〕桓武平氏三浦氏流、〔3〕伊達(だて)氏流、〔4〕首藤(すどう)山内氏流などがある。
岡本(おかもと)
 丘基・丘本・岡基・岡元・陵本等に通用。古姓。地名姓。西日本に多く、約20万。おもな族は〔1〕河内国交野(かたの)郡岡本郷発祥の族は岡本忌寸(いみき)の裔(えい)という、〔2〕下野(しもつけ)国河内郡岡本邑(むら)発祥の桓武平氏君島氏流、ほか赤松氏流、小山氏流、里見氏流などがある。
小川(おがわ)
 こがわ。小河・尾川・男川・緒川等に通用。地名姓。地名も姓氏もきわめて多い。おもな族は〔1〕武蔵国多摩郡小川郷発祥の日奉(ひまつり)姓西党、〔2〕尾張国知多郡小川邑(むら)発祥の清和源氏浦野氏流、〔3〕近江国神崎郡小川村発祥の桓武平氏下河辺(しもかわべ)流などがある。
荻野(おぎの)
 小木埜・小木野・荻埜等に通用。地名姓。大姓。関東に多い。おもな族は相模国愛甲郡荻野郷発祥の武蔵小野氏流。多くこの流が全国に広まる。ほか菅原姓植月氏流、藤原南家二階堂氏流などもある。
(おく)
 尾久・於久・尾来・邑等に通用。地形の奥からくる。地名姓。全国に多い。おもな族は〔1〕武蔵小野姓横山党、〔2〕清和源氏小椋(おぐら)氏族、〔3〕源姓を称する紀伊の奥一族、ほか桓武平氏鹿伏兎(かぶと)氏族、大伴氏族などがある。
奥田(おくだ)
 億田・尾久田・奥多・御供田等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕尾張の清和源氏足利氏流、〔2〕大和の清和源氏宇野氏流、ほか菅原姓、中臣(なかとみ)姓の奥田氏などがある。
奥村(おくむら)
 大久村・奥邨・遠久村等に通用。地名姓。近畿地方に多い。おもな族は〔1〕尾張国中島郡奥村発祥の藤原姓赤尾氏流、〔2〕清和源氏武田氏流、ほか宇野氏流、土岐氏流などがある。
小倉(おぐら)
 こくら。小椋・巨椋・尾倉・小蔵等に通用。古名姓。地名姓。おもな族は〔1〕藤原北家閑院流小倉家、〔2〕小野姓横山党、〔3〕織田氏流、〔4〕菅原氏流、〔5〕丹後の大族小倉氏、ほか異流も多い。
小此木(おこのぎ)
 小此鬼・小柴に通用。地名姓。合字姓。〔1〕上野(こうずけ)国佐位郡小此木邑(むら)発祥の族は紀姓、〔2〕小此木を小柴に詰めた氏もある。
刑部(おさかべ)
 ぎょうぶ・おさべ・うたえ。忍坂部・押坂部等に通用。地名姓。職業姓。名代姓。允恭(いんぎょう)皇后忍坂(おしさか)大中姫の御名代(みなしろ)部。のち刑部の職をつかさどる。全国に地名が多く、姓氏は約5000。おもな族は〔1〕物部(もののべ)氏流の氏、〔2〕武蔵国造(くにのみやつこ)流の氏、〔3〕尾張氏族の氏などがある。
尾崎(おざき)
 小崎・尾碕・雄崎等に通用。地形地名より姓氏へ。西日本に多い。おもな族は〔1〕清和源氏里見氏流、〔2〕荒木田姓、〔3〕津軽氏流、〔4〕清和源氏足利氏流、ほか全国に異流が多い。
小沢(おざわ)
 おさわ・こざわ。小佐波・尾沢等に通用。古姓。地名姓。おもな族は〔1〕武蔵国橘樹(たちばな)郡小沢発祥の桓武平氏小山田氏族、〔2〕春日(かすが)氏族横山党、〔3〕出雲氏族大江広之(ひろゆき)流、ほかがある。
小田(おだ)
 こだ・しょうだ。小多・尾田・佇田・織田・御田等に通用。古姓。地名姓。古くは小田連(むらじ)、小田臣(おみ)など。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国筑波(つくば)郡小田邑(むら)発祥の藤原北家八田氏流、〔2〕磐城(いわき)国白河郡小田郷発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓結城(ゆうき)氏族、ほか成田氏流、小野姓横山党など異流が多い。
織田(おだ)
 小田・御田・雄田等に通用。当て字姓。地名姓。おもな族は〔1〕越前国丹生(にゅう)郡織田荘発祥の斎部(いんべ)姓、一説には桓武平氏重盛(しげもり)流という、〔2〕尾張の氏は〔1〕の系で、戦国のころ信長を出して世に広まる。
越智(おち)
 小市・越知・小知等に通用。地名姓。当て字姓。古代の大族。四国に多い。おもな族は〔1〕小市国造(くにのみやつこ)の裔(えい)は伊予国越智郡発祥の物部(もののべ)氏族、〔2〕河野氏流越智氏族、ほかがある。
小野(おの)
 おぬ・さぬ。小埜・小乃・尾能・小能等に通用。古大姓。地名姓。約13万。西日本に多い。〔1〕近江国滋賀郡小野村発祥の族は小野臣(おみ)の裔(えい)、〔2〕常陸(ひたち)国那珂(なか)郡小野邑(むら)発祥の族は清和源氏佐竹氏流、〔3〕武蔵七党の横山党は小野姓、ほかに江戸氏流、新田氏流などがある。
小原(おばら)
 こはら・おはら・こばる。尾原・佇原等に通用。地名姓。日本の代表的な姓である。諸国に同地名多く、それより出る。おもな族は〔1〕武田氏流、〔2〕里見氏流、〔3〕清原氏流、ほか美作(みまさか)、豊前(ぶぜん)、信濃、遠江(とおとうみ)、肥後などにもある。
恩田(おんだ)
 御田・穏田・音田・推田等に通用。地名姓。姓氏は寺領、神領などの特別の田より興る。関東に多く、約4万。下野(しもつけ)国那須郡恩田邑(むら)発祥の名族がある。
恩地(おんち)
 おんじ。恩智に通用。地名姓。古名族。隠地すなわちかくし地。河内国高安郡恩地発祥の族は恩地使主(おみ)の裔(えい)という。紀伊にも坂上姓の豪族がある。
〔か行〕
貝塚(かいづか)
 海塚に通用。地名姓。古代貝塚の地より地名、姓氏へ。全国に散見され、とくに東日本に多い。下総(しもうさ)国千葉郡貝塚発祥の族は桓武平氏千葉氏族。
垣内(かいと)
 かきうち・かいたい。垣外・替戸・海戸・門内等に通用。地名姓。小地域の内側という意で、近畿地方に多い。大和の族は藤原姓が多いという。ほか紀伊、加賀、信濃などにある。
柿本(かきもと)
 かきのもと。柿元・柿下に通用。古姓。地名姓。曰(いわ)く姓。おもな族は大和国添上(そうのかみ)郡柿本発祥の柿本臣(おみ)の裔(えい)、ほか山城、若狭、大隅などにもある。
(かけい)
 かけひ。懸樋・樋・掛合・掛樋等に通用。物象姓。地名姓。全国にわたるが、とくに西日本に多い。伊勢の名族は藤原姓。豊後(ぶんご)国国埼(くむさき)郡富来(とみく)の氏は平姓、関ヶ原の戦いで西軍にくみして没落した。
籠屋(かごや)
 かごたに・こもりや・こもりたに。小森屋・加護谷等に通用。地名姓。職業姓。〔1〕下野(しもつけ)国芳賀(はが)郡籠谷邑(むら)発祥の族は藤原姓、〔2〕商家で、職業をそのまま姓にしたもの、ほかがある。
葛西(かさい)
 かっさい。笠居・河西に通用。地名姓。中世の名族。〔1〕下総(しもうさ)国葛飾(かつしか)郡葛西庄発祥、桓武平氏豊島(としま)氏流、〔2〕奥州葛西氏は〔1〕の流、清重(きよしげ)は源頼朝に従い、奥州征伐に功があり、胆沢(いさわ)の地を賜り、子孫が栄えた。
鍛冶(かじ)
 かぬち・かたし。鍛・鍛治・鍛次・鍜冶等に通用。職業姓。古代の鍛師(かぬち)からくる。倭(やまと)鍛冶や韓(から)鍛冶があるが、全国に広まり、地名や族名を残す。とくに大和、河内の鍛冶戸(かぬちべ)などが著名である。
柏原(かしはら)
 かしわら・かしわばら。樫原・橿原・柏良等に通用。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕古代の柏原造(みやつこ)、柏原連(むらじ)、柏原公(きみ)など、〔2〕大和国高市郡橿原発祥の清和源氏宇野氏流、〔3〕近江国伊香郡柏原郷発祥の清和源氏頼平(よりひら)流、ほか武蔵の丹党、赤松氏流、橘(たちばな)氏流などがある。
片岡(かたおか)
 方岡・片丘・形岡・潟岡等に通用。地名姓。地形地名から姓氏へ。古代には、片岡大連(おおむらじ)がある。おもな族は〔1〕大和国葛下(かつらぎしも)郡片岡邑(むら)発祥の藤原姓、〔2〕清和源氏足助(あすけ)氏流、〔3〕同前佐竹氏流など、ほかに異流が多い。
片桐(かたぎり)
 かたきり。片切・片霧等に通用。地名姓。当て字姓。著名姓。おもな族は〔1〕信濃国伊那郡片桐邑(むら)発祥の清和源氏満快(みつよし)流、この系に戦国武将片桐且元(かつもと)を出す、〔2〕ほかに美濃、近江、甲斐、三河などにもあるが、〔1〕の後が多い。
片倉(かたくら)
 方倉・片蔵等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕信濃国伊那郡片倉邑(むら)発祥の諏訪神家流、〔2〕白石藩片倉氏は〔1〕の族という。ほか秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族が著名である。
片山(かたやま)
 形山・方山・剛山・固山等に通用。地形地名から姓氏へ。約13万。おもな族は〔1〕上野(こうずけ)国多胡(たこ)郡片山邑(むら)発祥の有道(ありみち)姓児玉党、〔2〕武蔵国新座郡片山村発祥の藤原北家葛山(かつらやま)氏流、ほか異流が多い。
(かつ)
 かち・すぐる・すぐり・まさ。カバネ姓。地名姓。〔1〕上代の勝氏または勝部の後裔(こうえい)、〔2〕近江発祥の物部(もののべ)氏流、〔3〕清和源氏武田氏流、ほか異流が多い。
加藤(かとう)
 佳藤・嘉藤・賀藤・香藤等に通用。地名姓。氏姓。約70万。加賀出身の藤原氏の意である。藤原利仁(としひと)流が多い。のち伊勢に本拠が移り、東海一帯にとくに広まった。ほかにおもな族は〔1〕藤原北家道長流、〔2〕桓武平氏金子氏流、〔3〕清和源氏武田氏流、戦国武将加藤清正は〔1〕の流という。
角川(かどかわ)
 すみかわ・すみがわ・つのかわ・かくかわ・かくがわ。門川・住川・墨川・格川等に通用。地名姓。多く川名より地名、姓氏へ。全国に約5000。日向(ひゅうが)国臼杵(うすき)郡門川邑(むら)発祥の族は藤原南家伊藤氏流。
金井(かない)
 叶・叶井・家内・金居・鼎(かなえ)等に通用。関東方面の特姓。地名姓。〔1〕上野(こうずけ)国新田郡金井邑(むら)発祥の族は清和源氏新田氏族、〔2〕相模国高座郡金井邑発祥の族は桓武平氏三浦氏族、〔3〕都筑(つつき)郡および多摩郡発祥の武蔵の大族、ほかがある。
金刺(かなさし)
 かなさす。金指に通用。名代姓。古名族。欽明(きんめい)天皇の御名代(みなしろ)、磯城島(しきしま)金刺宮名を負う。おもな族は〔1〕金刺朝臣(あそん)、金刺宿禰(すくね)の裔(えい)など、〔2〕信濃国造(くにのみやつこ)族金刺舎人(とねり)より出、信濃全域に栄えた多臣(おおのおみ)族、〔3〕伊豆の名族金指氏は清和源氏を称する。
金沢(かなざわ)
 かねざわ。地名姓。金さびや丹(に)などの出る沢から地名、姓氏へ。おもな族は〔1〕武蔵国久良岐(くらき)郡金沢邑(むら)発祥の桓武平氏北条氏流、北条泰時(やすとき)の弟実泰(さねやす)の子実時(さねとき)を祖とする、〔2〕陸奥(むつ)国津軽郡金沢邑発祥の清和源氏武田氏流、ほか羽後、岩代、武蔵、信濃などにも名族がある。本項目は「金沢氏(かねさわうじ)」で示してある。
金丸(かなまる)
 かねまる。兼丸に通用。地名姓。職業姓。古代の鞠部(まりべ)からくるものと、神戸(かんべ)の余戸(あまるべ)とがある。おもな族は〔1〕下野(しもつけ)国那須の豪族、〔2〕清和源氏武田氏族、ほか筑前、常陸(ひたち)などにもある。
金持(かなもち)
 かねもち・かなじ・かもち。曰(いわ)く姓。地名姓。もともと金地で、金の出土に由来する地名から姓氏へ。伯耆(ほうき)の豪族は日野郡金持邑(むら)発祥。
可児(かに)
 加児・蟹等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕美濃国可児郡可児郷発祥、清和源氏土岐氏流、〔2〕清和源氏斯波(しば)氏流、〔3〕伴姓上野氏流などがある。
金子(かねこ)
 金児・金古・金戸・兼子等に通用。地名姓。職業姓。約30万。踏鞴(たたら)すなわち鍛冶(かじ)に関係があるという。本貫は武蔵国入間郡金子村(多摩郡金子村ともいう)。桓武平氏村山党。中世の戦記物などに出てくる金子十郎は著名である。
加納(かのう)
 叶・嘉納・狩野・十七夜等に通用。佳称姓。当て字姓。地名姓。荘園の加納田からくる。おもな族は〔1〕三河国加茂郡加納村発祥の松平姓、〔2〕駿河の名族は加茂姓という、〔3〕岩代国耶麻(やま)郡加納庄発祥の桓武平氏三浦氏流、ほか美濃、武蔵、丹後などにもある。
鎌田(かまだ)
 加満田・鎌多・蒲田・烟田・釜田等に通用。地名姓。当て字姓。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国鹿島郡烟田発祥の桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、〔2〕守部姓首藤(すどう)氏流、〔3〕葛飾(かつしか)郡鎌田邑(むら)発祥の武蔵の大族、ほか全国に多い。
(かみ)
 みわ・こう・じん。三輪・美輪に通用。族名姓。神名姓。古名族。〔1〕古代伊勢国の神国造(くにのみやつこ)の裔(えい)、〔2〕紀国造族の裔で、紀神直(あたい)の後、〔3〕諏訪神家ほか。
神山(かみやま)
 こうやま・かみのやま。上山に通用。地名姓。信仰姓。おもな族は〔1〕駿河国駿河郡神山邑(むら)発祥の藤原北家大森氏流、〔2〕下野(しもつけ)国芳賀(はが)郡上山邑発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族、ほか異流が多い。
亀井(かめい)
 亀位・亀居・加目井・瓶井等に通用。佳称姓。地名姓。おもな族は〔1〕紀伊国熊野発祥の穂積姓鈴木氏流、〔2〕出雲の佐々木氏流、〔3〕三河伴氏流、ほかがある。
亀山(かめやま)
 地名姓。山城、伊勢、上総(かずさ)そのほか全国の同地名を負う。東日本に多く、約4万。おもな族は〔1〕亀山天皇裔(えい)の亀山源氏、〔2〕伊勢国鈴鹿郡亀山邑(むら)発祥の桓武平氏関氏流、ほかがある。
賀茂(かも)
 加茂・鴨・加毛等に通用。地名姓。信仰姓。日本最古の古名族。もとは神、三輪族と同一と考えられ、古代は各地に「カモ」神を祀(まつ)り、栄えた。各地に地名としても存在していたが、なかでも大和国葛城(かつらぎ)の鴨や山城国愛宕(おたぎ)郡賀茂は著名。連綿として古代より続く。
軽部(かるべ)
 かりべ。加留部・刈部・軽辺等に通用。名代姓。地名姓。允恭(いんぎょう)天皇の皇子木梨(きなしの)軽皇子の名を負う。諸国に多い。おもな族は〔1〕毛野(けの)発祥の軽部君の裔(えい)、〔2〕但馬(たじま)国養父(やぶ)郡軽部庄発祥の日下部(くさかべ)流、ほかがある。
河合(かわい)
 かわあい。川井・川会・川居等に通用。二つの川の落ち合う所をさす。地名姓。おもな族は〔1〕藤原北家上杉氏流、〔2〕藤原南家二階堂氏流、〔3〕度会(わたらい)氏流、ほか異流が多い。
川勝(かわかつ)
 古名族。渡来族。丹波の名族で、秦忌寸(はたいみき)より出る。『寛永諸家系図伝』には「秦(しん)始皇帝十五代、広隆が後胤(こういん)」とある。京都広隆寺が祖地。西日本に多い。
川上(かわかみ)
 河上・川可美・川神・加輪上等に通用。古姓。地名姓。諸国の同地名より興る。古くは川上造(みやつこ)、川上首(おびと)などと称した。おもな族は〔1〕石見(いわみ)国那賀郡河上邑(むら)発祥の佐々木氏族、〔2〕薩摩国川辺郡川上郷発祥の島津氏流、ほか武蔵、近江、越後などにも名族がある。
川口(かわぐち)
 河之口に通用。地名姓。川の出入口に付けられた地名から姓氏へ。おもな族は〔1〕武蔵国多摩郡川口郷発祥の日奉(ひまつり)姓西党、〔2〕岩代国大沼郡河口村発祥の山内氏流、ほか諸国の同地名を負う。名流が多い。
川崎(かわさき)
 川先・川前・川埼・川岬・川碕等に通用。地形地名から姓氏へ。地名姓。著名姓。東日本に多く、約8万。おもな族は〔1〕武蔵国橘樹(たちばな)郡河崎庄発祥の桓武平氏秩父氏流、〔2〕伊勢国度会(わたらい)郡河崎発祥の度会氏流、〔3〕下野(しもつけ)国塩谷郡川埼庄発祥の宇都宮氏流、ほか異流、大姓が多い。
川島(かわしま)
 側島・革島等に通用。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕近江国高島郡川島村発祥の佐々木氏六角流、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓河村氏流、ほか桓武平氏秩父氏流、藤原利仁(としひと)流など、異流、大姓が多い。
川俣(かわまた)
 川又・川跨に通用。地名姓。2川が分かれて川又になっている地形からの地名。おもな族は〔1〕伊勢の大族は川俣県造(あがたのみやつこ)の裔(えい)、〔2〕桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、〔3〕秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族、ほか異流が多い。
川村(かわむら)
 川邑・川邨等に通用。諸国の地名を負う。おもな族は相模国足柄郡川村発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓波多野氏流、ほか陸中、越後、駿河、備中などにもある。
神田(かんだ)
 かみた・こうだ・しんでん。完田・官田・加美田・嘉味田等に通用。地名姓。職業姓。神領田、宮田をさす。おもな族は〔1〕伊勢外宮旧社家の度会(わたらい)姓の氏、〔2〕嵯峨(さが)源氏松浦(まつら)氏流、〔3〕桓武平氏将門(まさかど)流、〔4〕同前貞道(さだみち)流、ほか異流が多い。
神戸(かんべ)
 こうべ・じんべ・かんど・かみと・じんこ。古大姓。地名姓。もと神社所有の戸。全国に多い。おもな族は〔1〕桓武平氏関氏流、〔2〕服部(はっとり)氏流、〔3〕藤原姓魚名流、〔4〕織田氏流などである。
菊地(きくち)
 くくち。菊千・菊池・菊知・喜久智・菊久池等に通用。地名姓。東北方面に多く、約10万。九州「キクチ」氏は多く菊池を使用、関東、東北では菊地と変える。会津、信濃、志摩などにも多く、菊池氏とは同祖である。
菊池(きくち)
 くくち・きくいけ。鞠智・喜久智・菊千・菊地・規矩地等に通用。地名姓。名大族。約13万。おもな族は肥後国菊池郡発祥の藤原姓隆家(たかいえ)流、ただし異説があり、大宰府(だざいふ)官司の紀氏流で高木、大村、草野氏と同族ともいう。この族は全国に広まり、勤王家として世に知られる。
(きし)
 崕・崖・涯・吉士・吉師・貴志等に通用。地名姓。古姓。おもな族は〔1〕美作(みまさか)の清和源氏山名氏流、〔2〕古代吉士(きし)部の伴造(とものみやつこ)の裔(えい)、本貫は摂津、ほか異流、古名族の裔が多い。
喜多(きた)
 北・喜田・記多等に通用。佳称姓。地名姓。もともと方向や位置を表す北の地名を佳字化したもの。おもな族は〔1〕大和国山辺郡の豪族は藤原姓、〔2〕伊予国喜多郡発祥の河野氏流、〔3〕河内発祥の橘(たちばな)姓楠木(くすのき)氏流、〔4〕猿楽の喜多家、〔5〕度会(わたらい)姓、ほか異流が多い。
喜田(きだ)
 よした。木田・喜多・北等と通用。佳字姓。地名姓。多く、北などの地名を瑞祥文字にて飾った。全国に異流が多い。おもな族は〔1〕清和源氏佐竹氏流の北氏、〔2〕越前国足羽(あすは)郡木田庄発祥の利仁(としひと)流藤原氏の木田氏などである。
北川(きたがわ)
 喜多川・喜田川・木田川等に通用。地名姓。佳称姓。おもな族は〔1〕近江国蒲生(がもう)郡発祥の蒲生氏流、〔2〕藤原北家姉小路流、〔3〕坂上氏流などである。
北島(きたじま)
 きたしま。北多島に通用。地名姓。日本最古の古名族、出雲国造(くにのみやつこ)の裔(えい)。53世孝時(たかとき)のとき、子の孝宗は千家、貞孝は北島を称する。中世に2家に分かれたが、出雲大社を根拠として現在まで続く。異流もある。
北出(きたで)
 きたいで。地名姓。本村、本郷から北に分出した新村などにつける名称で、それより発祥した西出、南出なども同じである。全国に散見されるが、とくに北陸、東日本に多い。
北村(きたむら)
 北邑・喜多村・北邨・来多村等に通用。地名姓。原意は本村(本郷)より北にある分村で、佳字に転じた。異流が多い。おもな族は〔1〕桓武平氏柘植(つげ)氏族、〔2〕清和源氏大館氏流、〔3〕蒲生(がもう)氏流、〔4〕清和源氏井上氏流、ほかである。
鬼頭(きとう)
 鬼藤・紀藤・喜藤等に通用。氏姓。当て字姓。紀藤すなわち藤原氏と紀氏が合併した意、鬼頭はそれを飾ったもの。東海地方に多い。常陸(ひたち)、伊予、陸前、阿波などにもある。
絹川(きぬかわ)
 きぬがわ。衣川・鬼怒川・亀怒川等に通用。当て字姓。地名姓。「コロモ」川、紀ノ川等からの転もある。西日本に多い。丹波国に名族がある。
木下(きのした)
 きした・きげ。木ノ下・樹下・木之下等に通用。地名姓。曰(いわ)く姓。〔1〕桓武平氏柘植(つげ)氏族、〔2〕佐々木氏族、〔3〕嵯峨(さが)源氏松浦(まつら)党、〔4〕尾張の氏、豊臣秀吉の父の系、ほか神官に多くみられる。
木村(きむら)
 喜村・木邑・木邨・貴村等に通用。なかには鬼村もあるが、同じである。地名姓。近江国蒲生(がもう)郡木村発祥の族は紀姓を称するゆえに紀村ともいう。ほか〔1〕佐々木族、〔2〕足利氏流、〔3〕物部(もののべ)姓、〔4〕日下部(くさかべ)姓などがあり、異流も多く、中・近世に活躍した。
金城(きんじょう)
 かなぐすく・かねしろ・かねき。地名姓。聖なる土地の意である。おもな族に〔1〕沖縄県那覇市金城発祥の琉球の名族、〔2〕山背(やましろ)国紀伊郡が本拠の古代の新羅(しらぎ)族がある。
久我(くが)
 こが。陸・空閑・玖珂・古賀等に通用。地名姓。古名族。〔1〕山城の族は久我直(あたい)の裔(えい)、〔2〕久我国造(くにのみやつこ)の裔、〔3〕雲上家の村上源氏久我(こが)家、ほか各地のクガ・コガの地名より発祥した。曹洞(そうとう)宗開祖道元もこの氏。本項目は「久我氏(こがうじ)」で示した。
日下部(くさかべ)
 草下部・草壁・久坂部・草香部等に通用。名代姓。古大姓。仁徳(にんとく)帝の皇子大日下王(おおくさかのおおきみ)のために設けた名代部。のち地名を負って全国に広まる。物部(もののべ)氏族、丹波氏族、隼人(はやと)族、ほか異流がきわめて多く、とくに東海地方にみられる。
(くすのき)
 楠木に通用。曰(いわ)く姓。物象姓。南北朝期に活躍した楠木正成(まさしげ)一族がとくに著名。橘(たちばな)姓。ほか熊野新宮神裔(しんえい)、伊勢三重郡の豪族などがある。
工藤(くどう)
 久藤・公藤・貢藤・宮藤等に通用。氏(藤原)と職名(木工助の職)からきた姓。〔1〕藤原南家狩野(かのう)氏流、〔2〕「家次―祐次(すけつぐ)(伊東)―祐経(すけつね)(工藤)」となって、伊豆伊東を領したため、伊東氏を称する族もある。曽我(そが)氏と同祖、祐経は曽我兄弟に討たれる。ほか一族は全国に広まり、ことに陸奥(むつ)の大族が著名である。
久保(くぼ)
 窪・久宝・九保・久芳等に通用。地形の窪地を久保と佳字にした。地名姓。約11万。おもな族は〔1〕大和国山辺郡窪庄発祥の白石氏流、〔2〕甲斐国山梨郡久保発祥の清和源氏武田氏流、〔3〕土佐国香美郡久保邑(むら)発祥の桓武平氏流で、ほかに異流も多い。
久保田(くぼた)
 久保多・久甫田・久程田・窪田等に通用。地形姓の窪田から佳称姓の久保田へ。おもな族は〔1〕甲斐国山梨郡窪田発祥の三枝(さえぐさ)姓、〔2〕岩代国安積(あさか)郡窪田村発祥の藤原南家伊東氏流、ほか大友氏流、足立(あだち)氏流、高階(たかしな)姓高氏流などがある。
熊谷(くまがい)
 くまかえ・くまがや・くまたに。熊ヶ谷・熊飼・熊耳等に通用。地名姓。曰(いわ)く姓。中世の大族。武蔵国大里郡熊谷発祥の族。桓武平氏北条氏流。中世に熊谷次郎直実(なおざね)を出して有名。一族全国に広まる。
熊野(くまの)
 くまぬ・ゆや。熊埜・隅野・隈野等に通用。族名姓。社名姓。古名族。各地に地名があるが、熊野社からくる。古代の熊野国造(くにのみやつこ)や熊野三社関係の族が多い。熊野信仰によって全国に広まった。
久米(くめ)
 くま・くみ。久目・来目・久馬・久味等に通用。古大姓。地名姓。職業姓。九州の大族で、久米部の首領または久米郡の居住地より発祥した。おもな族は〔1〕伊予国久米郡発祥の久味国造(くにのみやつこ)の裔(えい)、〔2〕大和国高市郡来目郷発祥の大和の久米直(あたい)の裔、ほか全国に同族が多く分布。
栗原(くりはら)
 久里原・来原・操原等に通用。古姓。地名姓。約10万。古姓には栗原勝(すぐり)、栗原連(むらじ)、栗原宿禰(すくね)などがある。おもな族は〔1〕大和国高市郡呉原発祥の物部(もののべ)氏流、〔2〕甲斐国山梨郡栗原邑(むら)発祥の清和源氏武田氏流、ほか武蔵、上野(こうずけ)など関東に多い。
(くれ)
 ご。伎に通用。外来姓。地名姓。一つは中国の呉(ご)の国から渡来した族をいい、一つは呉国の人の住地からくる。おもな族は〔1〕呉国渡来の呉勝(すぐり)の裔(えい)、〔2〕百済(くだら)族の呉氏の裔、その他がある。
黒田(くろだ)
 くるた。久呂田・玄田・畔田・黒太等に通用。多くは新田に対して古い田をいう。地名姓。おもな族は〔1〕近江国伊香郡黒田邑(むら)発祥の佐々木氏流、〔2〕この系より播磨(はりま)、筑前の黒田氏を出した備前国邑久(おく)郡福岡邑発祥の〔1〕と同じ族、〔3〕丹党や桓武平氏、木曽氏流の黒田氏がある。
桑原(くわはら)
 くわばら。久和原・鍬原等に通用。古名姓。地名姓。おもな族は〔1〕大和国葛上(かつらぎかみ)郡桑原郷発祥の桑原漢人(あやひと)の裔(えい)、〔2〕毛野(けの)氏流桑原公(きみ)の裔、〔3〕菅原姓桑原氏、〔3〕下総(しもうさ)国葛飾(かつしか)郡桑原郷発祥の桓武平氏流で、ほか名族が多い。
郡司(ぐんじ)
 軍司・群治・群司等に通用。古姓。職業姓。古代の郡司職の裔(えい)。各地に発祥し、とくに薩摩、常陸(ひたち)、陸前、日向(ひゅうが)などの系が著名である。
小池(こいけ)
 古池・子池・小湲等に通用。地名姓。東日本に多く、約9万。おもな族は〔1〕清和源氏逸見氏流、〔2〕清和源氏佐竹氏流、〔3〕桓武平氏村岡氏流、〔4〕宇都宮氏流などである。
小泉(こいずみ)
 五泉・児泉・古泉・巨泉等に通用。地名姓。諸国の同地名より発祥。おもな族は〔1〕大和国添下(そうのしも)郡小泉庄発祥の藤原姓、〔2〕信濃国小県(ちいさがた)郡小泉郷発祥の清和源氏村上氏族で、ほか武蔵、上野(こうずけ)、越前、越後、岩代などに大族がある。
小出(こいで)
 古井出・小井弖等に通用。地名姓。著名姓。おもな族に〔1〕信濃国伊那郡小井(むら)発祥の諏訪神家流、〔2〕同前地発祥の藤原南家二階堂流があり、〔3〕尾張の氏は〔2〕と同流で、戦国時代に活躍した。
(こう)
 たか。略姓。外来姓。古名族。古くは高麗(こま)(高句麗(こうくり))から渡来した族の呼称、のち高階(たかしな)氏の略。高家一党という。なお古代の族には近江の高史(ふひと)、高連(むらじ)などがある。
纐纈(こうけつ)
 こうけち・くくり・きくとち・きくとじ・あやめ・はなぶさ。久々利に通用。地名姓。事象姓。古代染織の括染(くくりぞ)めに由来した古代の名姓である。おもな族に〔1〕美濃国可児郡久々利邑(むら)発祥の清和源氏土岐氏族、〔2〕同前木曽氏族がある。
河野(こうの)
 かわの。河埜・川乃・幸野・甲野等に通用。古大姓。地名姓。四国、九州に多く、約10万。古姓には、伊予国風早郡河野郷発祥の伊予国造(くにのみやつこ)の後がある。一族は全国に栄え、歴史上にも活躍し、のち越智(おち)氏とも交流した。
(こおり)
 ぐん。評に通用。職名姓。古代の行政区画。もと渡来人によって組織されていた。韓語。この長(おさ)が郡司である。全国の地名、職名などから興る。摂津、大和、伊勢をはじめ、異流の族が多い。
古賀(こが)
 久我・古閑・空閑・古我等に通用。地名姓。中世の空閑荒蕪地(こうぶち)をさす。九州に多い。おもな族に〔1〕肥前国の空閑邑(こがむら)に名を負う清和源氏武田氏流、〔2〕劉(りゅう)姓古賀族、〔3〕狛(こま)姓古賀族などがある。
国分(こくぶ)
 こふ・こくぶん・くにわけ。国府・国符・国部等に通用。地名姓。古代の国衙(こくが)の在地より名づけられた。異流が多い。〔1〕伊勢の国府氏は桓武平氏関氏流、〔2〕三河の国府氏は松平氏流、〔3〕下野(しもつけ)の国府氏は秀郷(ひでさと)流藤原姓などである。
小島(こじま)
 こしま・おじま。児島・古島・尾島・於島等に通用。地名姓。諸国の同地名より発祥。おもな族に〔1〕清和源氏浦野氏流の尾張源氏、〔2〕武蔵国加美郡小島郷発祥の族の丹治(たじ)姓丹(たん)党。〔3〕三河発祥の佐々木氏流の幕臣の小島氏、ほか藤原北家姉小路流などがある。
児島(こじま)
 小島・古島等と通用。地名姓。名族。おもな族は備前国児島郡発祥の氏、伝説の人高徳(たかのり)を出したことで著名である。この氏は三宅連(むらじ)の裔(えい)という。中国地方に広まった。
児玉(こだま)
 児珠・古玉・子玉等に通用。地名姓。武蔵の大族。武蔵七党の一の児玉党として著名である。有道姓。武蔵国児玉郡児玉に発祥し、全国に広まった。とくに九州に多い。
後藤(ごとう)
 五藤・后藤・呉藤・護藤等に通用。氏姓。曰(いわ)く姓。藤原利仁(としひと)流。源頼義(よりよし)の臣(おみ)則明(のりあき)のとき後藤太と号し、孫助明のとき後藤五郎と称する。後藤姓の祖。約15万。基清から出た系もあるほか、武田氏流、佐々木氏流、長井氏流など、一族は他と交流して天下に広まった。
小西(こにし)
 児西・古西・小丹枝等に通用。地名姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕上総(かずさ)国山辺郡小西邑(むら)発祥の桓武平氏千葉氏流、〔2〕佐々木氏流、ほか下総(しもうさ)、和泉(いずみ)、摂津などにもある。
小林(こばやし)
 児林・古林・小早志・木林等に通用。地名姓。古名族。北関東、信越方面に分布し、約80万。神官に多い。〔1〕伊勢国度会(わたらい)郡発祥の氏は度会姓、〔2〕大和国宇陀(うだ)郡小林より興る族は大神(おおみわ)姓、ほか摂津、越後などにもある。
小堀(こぼり)
 古堀に通用。地名姓。全国の小堀より興る。おもな族は〔1〕下野(しもつけ)国安蘇(あそ)郡小堀発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏流、〔2〕近江国坂田郡小堀村発祥の秀郷流藤原姓、ほか異流も多い。
小松(こまつ)
 おまつ。児松・子松等に通用。地名姓。中部地方、四国に多く、約10万。堂上家にもある。おもな族に〔1〕洛西葛野(かどの)郡御室発祥の小松宮、〔2〕前項の宮名を負う小松家、〔3〕小松帝(光孝(こうこう)天皇)の裔(えい)光孝源氏、〔4〕桓武平氏清盛流、〔5〕羽前国置賜(おきたま)郡小松邑(むら)発祥の奥州安倍姓の氏がある。ほか大隅の氏(禰寝(ねじめ)氏)、信濃の氏、安房(あわ)の氏など異流も多い。
小山(こやま)
 おやま。尾山・御山・児山に通用。古姓。地名姓。諸国の小山地名から興る。忌部(いんべ)氏の族に小山連(むらじ)がある。おもな族は〔1〕下野(しもつけ)国都賀郡小山庄発祥の藤原秀郷(ひでさと)流の氏、〔2〕下野国河内郡児山邑(むら)発祥の藤原道兼流宇都宮氏族、〔3〕武蔵国多摩郡小山邑発祥の小野姓横山党があり、そのほか異流も多い。
(こん)
 きん・こがね・かね。今・昆・紺等に通用。外来姓。物象姓。おもな族は〔1〕古代新羅(しらぎ)族の裔(えい)、〔2〕阿倍氏流、〔3〕小野姓横山党などである。
近藤(こんどう)
 今藤・根藤・金藤等に通用。氏姓。地名姓。藤原秀郷(ひでさと)流、秀郷の裔(えい)である脩行が近江掾(じょう)であったために近藤と称する。約25万の大姓。利仁(としひと)流近藤を称する者もある。全国にくまなく分布している。
〔さ行〕
雑賀(さいが)
 さいか。最賀・斎賀・斎下等に通用。地名姓。当て字姓。紀伊国海部(あま)郡雑賀荘発祥の雑賀党は鈴木氏族、戦国のころ孫市が出て織田氏に反抗した。一族は北陸にも広まる。
斎木(さいき)
 斎喜・斎城・采木等に通用。物象姓。信仰姓。神木を祀(まつ)ることから興るが、おもな族は〔1〕甲斐の族は清和源氏武田氏流、〔2〕岩代の族は桓武平氏流、ほかがある。
西郷(さいごう)
 にしごう。斎郷に通用。地名姓。全国の西郷より発祥。東郷に対する郷名で、九州に多い。おもな族は〔1〕肥前国高来郡西郷発祥の菊池氏流、〔2〕美濃国席田(むしろた)郡西郷発祥の清和源氏土岐氏流、〔3〕遠江(とおとうみ)国佐野郡西郷荘発祥の藤原北家二階堂流、ほか異流が多い。
税所(さいしょ)
 ざいしょ・たどころ。斎所・最所等に通用。職名姓。古代の税務を管掌する役人。おもな族は〔1〕大隅の大族は宇多帝裔(えい)を称し、〔2〕常陸(ひたち)の族は桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、ほか陸奥(むつ)、若狭などにもある。
斎藤(さいとう)
 斉藤・妻藤等に通用。氏姓。職業姓。約80万。藤原利仁(としひと)の子、叙用(のぶもち)より出る。叙用は斎宮頭(さいくうのかみ)であったため、その「斎」と藤原氏の「藤」を合して斎藤と称した。のち、一族は大いに栄え、北陸、東北をはじめ全国に広まる。
佐伯(さえき)
 さいき。三柄木・斉木等に通用。古名族。大姓。職業姓。種族姓。全国約5万。中国地方に多い。おもな族は〔1〕播磨(はりま)の佐伯氏は佐伯直(あたい)の裔(えい)、〔2〕前項の族が諸国に広まり、軍事、職業、政治集団として栄える、〔3〕豊後(ぶんご)の佐伯氏は大神(おおみわ)姓を称する、ほか。
三枝(さえぐさ)
 さいぐさ・みえ・みえだ。福草・三枝部・六月一日等に通用。名代姓。古名姓。顕宗(けんそう)天皇の御名代(みなしろ)より発祥。おもな族に〔1〕赤松氏流、〔2〕菅原姓、〔3〕全国の三枝部より興る族などがある。
早乙女(さおとめ)
 そうとめ。五月女に通用。地名姓。信仰姓。北関東に多い。下野(しもつけ)国塩谷郡早乙女邑(むら)より興る。藤原姓。
(さかい)
 坂井・酒井・坂合に通用。地名姓。多くは2国または2郡等の堺より興る。おもな族は〔1〕上総(かずさ)国武射(むさ)郡境邑(むら)発祥の桓武平氏千葉氏族、〔2〕磐城(いわき)国菊多郡酒井郷発祥の桓武平氏岩城氏流、ほか異流も多い。
酒井(さかい)
 坂井・境・境井・堺井・栄井等に通用。古大姓。地名姓。古代には酒井勝(すぐり)、酒井宿禰(すくね)等がある。おもな族は〔1〕清和源氏新田氏流、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓波多野氏流、〔3〕ほか大江氏流、土肥氏流など、異流も多い。
(さかき)
 坂城・神木・賢木・栄木等に通用。古姓。物象姓。神職、神社関係に多く、常陸(ひたち)、岩代などに名族がある。安芸(あき)の厳島(いつくしま)神社の神主は大友氏流である。
榊原(さかきばら)
 さかきはら。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕伊勢国壱志(いちし)郡榊原村発祥の清和源氏足利氏族、〔2〕前項の後で三河の族、〔3〕伊勢外宮の社家は度会(わたらい)氏流、ほかがある。
坂田(さかた)
 酒田・坂太・阪田等に通用。古名姓。地名姓。おもな族は〔1〕古くは坂田君、坂田酒人(さかひと)、坂田宿禰(すくね)など、〔2〕摂津国矢田部郡の和気(わけ)姓坂田氏、〔3〕武蔵国発祥の丹党、〔4〕佐々木氏流、ほかがある。
坂部(さかべ)
 酒部・酒辺等と通用。地名姓。職業姓。古代酒部の裔(えい)か。おもな族に〔1〕吉野郡吉野庄の赤松氏流、〔2〕桓武平氏流の三河の豪族などがある。
坂本(さかもと)
 坂元・阪本・酒本・酒元・迫本等に通用。古大姓。地名姓。和泉(いずみ)国和泉郡坂本郷発祥の武内宿禰(たけしうちのすくね)の裔(えい)、坂本臣(おみ)の後をいう。ほか、おもな族は〔1〕藤原北家二階堂氏流、〔2〕清和源氏新田氏流、〔3〕清和源氏佐竹氏族などである。
佐久間(さくま)
 佐熊・作間・咲間・狭隈等に通用。当て字姓。地名姓。迫った小地域を意味する。おもな族に〔1〕安房(あわ)国平群(へぐり)郡狭隈郷発祥の桓武平氏三浦氏流、〔2〕藤原北家大森氏流があり、ほか諸国に多い。
桜井(さくらい)
 桜居・佐倉井・柵頼等に通用。桜の茂生地または迫(さこ)地につけられた地名から姓氏へ。古名姓。東日本に多い。おもな姓は〔1〕桜井臣(おみ)、桜井宿禰(すくね)など、〔2〕三河国碧海(あおみ)郡桜井発祥の松平氏族、〔3〕甲斐国西山梨郡桜井邑(むら)発祥の清和源氏武田氏流、〔4〕信濃国佐久郡桜井邑発祥の安倍氏流、ほか異流も多い。
左近(さこん)
 佐近に通用。職名姓。左近衛府の役人の裔(えい)。西日本に多い。おもな族は〔1〕菊池氏流、〔2〕近江発祥の伴姓の族、〔3〕清和源氏佐竹氏流、その他がある。
佐々木(ささき)
 佐々貴・沙々貴・篠笥・陵・鷦鷯等に通用。古名族。近江国蒲生(がもう)郡篠笥郷が発祥の地。〔1〕阿部氏族、山の君として山部を統率。〔2〕宇多源氏流、敦実(あつざね)親王より出る。古代から中世を経、現代まで、大族として傑出者を多出した。
佐竹(さたけ)
 佐武・佐汰毛・狭武等に通用。地名姓。中世の名族。おもな族は、常陸(ひたち)国久慈郡佐竹郷発祥の清和源氏義光(よしみつ)流。支流は全国に広まる。主流は関ヶ原の戦いで西軍にくみし、秋田に移封された。
佐藤(さとう)
 佐当・佐東・左藤・沙藤・甘庶・砂糖・沙濤等に通用。職名姓。地名姓。氏姓。「藤」は藤原の氏を表し、「佐」は佐野庄または左衛門尉を表す。祖は藤原秀郷(ひでさと)、関東・東北ほか全国に広まる。日本最大の姓氏。約200万。一族中より多くの著名人を出す。
里見(さとみ)
 地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕上野(こうずけ)国碓氷(うすい)郡里見邑(むら)発祥の清和源氏新田氏流、〔2〕同前流の房総里見氏、『南総里見八犬伝』のモデルとなってからとくに著名である。ほか同族は武蔵、常陸(ひたち)、羽前、九州にも広まった。
真田(さなだ)
 佐奈田・真多・佐那田等に通用。当て字姓。地名姓。中世の名族。おもな族は〔1〕相模国大住郡真田村発祥の桓武平氏三浦氏流、〔2〕信濃国小県(ちいさがた)郡真田発祥の滋野(しげの)姓海野氏流、戦国のころ昌幸(まさゆき)、幸村(ゆきむら)父子が出て活躍した。
佐野(さの)
 さぬ・さや。佐埜・佐能・左農・左濃・狭野等に通用。狭い野の意か。著名姓。地名姓。東日本に多く、約8万。おもな族は〔1〕近江国浅井郡佐野邑(むら)発祥の佐々木氏流、〔2〕下野(しもつけ)国佐野庄発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族、ほか三浦氏流、菊池氏流、千葉氏流など、全国に異流が多い。
沢田(さわだ)
 さわた。佐和田・寒田・沢多等に通用。地名姓。地形地名から姓氏へ。おもな族に〔1〕荒木田姓、〔2〕賀茂県主裔(あがたぬしえい)、〔3〕大江姓、〔4〕佐々木氏流、その他がある。
塩谷(しおや)
 しおのや・えんや・しおたに。塩ノ谷・汐谷・塩屋・潮谷等に通用。地名姓。職業姓。古大族。おもな族は〔1〕武蔵国児玉郡塩屋邑(むら)発祥の有道姓児玉党、〔2〕下野(しもつけ)国塩谷郡発祥の宇都宮氏族、〔3〕佐々木氏族、ほか名流が多い。
志賀(しが)
 信賀・四賀・磁賀等に通用。地名姓。当て字姓。「シガ」とは氷、霜などの方言という。〔1〕古姓に志賀村主(すぐり)、志賀史(ふひと)、志賀忌寸(いみき)などがあり、〔2〕近江の氏は佐々木氏流、〔3〕豊後(ぶんご)国大野郡志賀荘発祥の大友氏族、ほか名族が多い。
(しの)
 ささ・しぬ。小竹・志野・佐々に通用。地名姓。おもな族は〔1〕武蔵の大族に篠党があり、私市(きさいち)党という、〔2〕紀伊の名族篠氏は那賀郡志野発祥、小竹祝(はふり)の後、ほかがある。
篠原(しのはら)
 信原・小竹原・四ノ原・志濃原等に通用。全国の同地名を負う。地名姓。おもな族は〔1〕清和源氏桃井氏族、〔2〕村上源氏北畠氏族、〔3〕阿波国勝浦郡篠原郷発祥の橘(たちばな)姓篠原氏、ほか全国に多い。
司馬(しば)
 志馬・斯波・柴・芝等に通用。職名姓。もと左右馬寮の官人。称号から姓氏へ。鞍作(くらつくり)の司馬達等(たっと)などは外来の氏である。多くは斯波氏などの転。
斯波(しば)
 志波・子波・紫波・芝・柴等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕陸中国紫波郡発祥の物部(もののべ)斯波連(むらじ)の裔(えい)、〔2〕同前流で清和源氏足利氏流、足利氏三管領(かんれい)筆頭として著名である。
柴田(しばた)
 新発田・柴多・芝田・芝多等に通用。古姓。地名姓。約10万。東海地方に多い。おもな族は〔1〕柴田臣(おみ)の後で奥州の柴田郡発祥の古族、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓下河辺(しもかわべ)氏流、〔3〕小笠原氏流その他がある。
渋谷(しぶや)
 しぼや・しぶたに。志部谷・渋屋等に通用。地名姓。大族。鉄錆(さび)などの出る沢名から地名に。おもな族は〔1〕相模国高座郡渋谷庄発祥の桓武平氏秩父氏族、〔2〕武蔵国豊島(としま)郡渋谷庄発祥の族は〔1〕と同族、ほか九州はじめ陸前、遠江(とおとうみ)、三河、美濃にも広まる。
島崎(しまざき)
 しまさき。島先に通用。地名姓。古大族。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国行方(なめかた)郡島崎邑(むら)発祥の桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、〔2〕肥後の豪族の菊池氏流、ほか北条氏流、藤原氏流などがある。
島田(しまだ)
 四馬田・島多・志満田等に通用。地名姓。「シマ」は、小さな、隔離された、の意がある。諸国の同地名より発祥。古大姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕多臣族の島田臣(おみ)は尾張国海部(あま)郡島田郷発祥、〔2〕駿河国志太郡島田より興る族は秀郷(ひでさと)流近藤氏族、ほか清和源氏武田氏族などがある。
島津(しまづ)
 島図・島豆・志摩津等に通用。地名姓。大姓。〔1〕古代島津国は島ノ国の意。島津県(あがた)、直(あたい)などの人がみえる。〔2〕日向(ひゅうが)国諸県(もろかた)郡島津庄より興った族は惟宗(これむね)姓という。中世以後、忠久(ただひさ)流(薩摩島津氏)が史上に活躍した。
清水(しみず)
 きよみず。志水・泗水・冷水・冷泉等に通用。全国の冷水湧出地から地名、姓氏になる。古大姓。光孝(こうこう)帝の裔(えい)に清水朝臣(あそん)がある。おもな族は〔1〕清和源氏木曽氏流、〔2〕清和源氏多田氏流、〔3〕武蔵国発祥の丹治(たじ)姓丹(たん)党、〔4〕秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族などがある。
(しょう)
 荘・荘野・庄野に通用。地名姓。略姓。庄野すなわち庄園の略。おもな族は〔1〕武蔵国児玉郡本庄発祥の有道姓児玉党、〔2〕備中国小田郡草壁庄発祥の児玉党支流、〔3〕大友氏流や菊池氏流などである。
庄子(しょうじ)
 庄司・荘司・荘子・正司・東海林等に通用。職名姓。中世の荘園管理者の職名であった。おもな族は〔1〕紀伊の名族には息長(おきなが)姓や清和源氏義光(よしみつ)流または清和源氏宇野氏流などがあり、〔2〕出羽の清原姓、〔3〕藤原南家相良(さがら)氏流、ほか異流が多い。
東海林(しょうじ)
 とうかいりん。荘司・庄司・庄子・荘子等に通用。職名姓。地名姓。当て字姓。東海林(地名)の荘司(職名)の意。東北地方に多い。羽前の豪族は最上(もがみ)郡発祥の白鳥氏族、ほか清和源氏兼光(かねみつ)流や桓武平氏流もある。
白井(しらい)
 伯井・白居・白飯・白猪等に通用。地形地名。「シラ」とは新の意。新井に同じ。おもな族は〔1〕嵯峨(さが)源氏渡辺氏族、〔2〕清和源氏山田氏族、〔3〕桓武平氏吉田氏族、ほかがある。
白石(しらいし)
 しろいし。白讃・城白等に通用。地名姓。物象姓。古大族。四国に多い。おもな族は〔1〕陸前国刈田郡白石邑(むら)発祥の白石公(きみ)の裔(えい)、〔2〕常陸(ひたち)国久慈郡白石邑発祥の清和源氏佐竹氏族、ほかがある。
白鳥(しらとり)
 しろとり。白取に通用。古名姓。地名姓。古代職業部の一つ。日本武尊(やまとたけるのみこと)の白鳥伝説よりくる。おもな族は〔1〕武蔵国秩父郡白鳥庄発祥の丹治(たじ)姓丹(たん)党、〔2〕宇陀(うだ)郡白鳥居神社発祥の大和の族、〔3〕鹿島郡白鳥郷発祥の常陸(ひたち)の安倍氏族、ほか名族が多い。
(しん)
 にい・あらた・いまき・あたらし。進に通用。地名姓。略姓。新しく開拓された土地などにつける。おもな族は〔1〕伊予の新氏は新居氏から分かれた同族、〔2〕阿波の豪族は都筑(つつき)氏族、ほか進氏系の桓武平氏流などがある。
進士(しんじ)
 しんし。役職姓。称号姓。もと古代の文章生をいう。のち称号から姓氏に転じた。おもな族は藤原南家真作(まなり)流、ほか鎌倉、室町の幕臣に多出する。
進藤(しんどう)
 新藤・信藤等に通用。氏姓。職名姓。修理進の進と藤原氏との合姓。藤原利仁(としひと)の裔(えい)。〔1〕斎藤氏流、〔2〕清和源氏乙部(おとべ)氏流、ほか佐藤氏流、綾(あや)氏流など異流、大族が多い。
神保(じんぼ)
 しんほ・しんぼ・じんぼう。仁保・新保・神宝等に通用。地名姓。神社の領地。諸国の同地名を負う。東日本に多い。おもな族は〔1〕桓武平氏土肥氏族、〔2〕惟宗(これむね)姓長根党、越中、能登、加賀ほかにもある。
末広(すえひろ)
 末弘等に通用。佳称姓。曰(いわ)く姓。おもな族は〔1〕摂津国西成郡の豪族は橘(たちばな)姓楠木(くすのき)氏族、〔2〕島津氏族、〔3〕豊前(ぶぜん)国下毛(しもつけ)郡の族、ほかがある。
末吉(すえよし)
 末好・末良・末次等に通用。佳字姓。地名姓。おもな族は、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)を祖とするという摂津の末吉氏。平野氏より分流し、江戸時代海運業に従事し、大いに発展した。
(すが)
 すげ・かん。寿賀・洲賀・清・須賀等に通用。地名姓。菅の茂生地または砂地、あるいは菅原姓を意味する。おもな族は〔1〕信濃国伊那郡の大族、〔2〕但馬(たじま)国出石(いずし)郡菅発祥の日槍族、〔3〕筑後の名族は菅原姓、ほか全国に多い。
菅野(すがの)
 かんの・すげの。寿賀野・管野・菅乃・萱野等に通用。古名姓。地名姓。約7万。おもな族は〔1〕大和国宇陀(うだ)郡菅野邑(むら)発祥の菅野朝臣(あそん)の裔(えい)、〔2〕多くは〔1〕の裔と称し、後世全国に広まる。とくに東北に多い。
菅原(すがわら)
 すがはら・かんばら。管原・菅家原・須賀原等に通用。大姓。地名姓。約7万。本貫は大和国添下(そうのしも)郡菅原庄である。古名族。東北地方に多い。おもな族は〔1〕菅原宿禰(すくね)の裔(えい)、〔2〕菅原道真(みちざね)を出した菅家流、〔3〕美作(みまさか)菅家党、ほか菅原氏一族一門は全国に広まる。
杉浦(すぎうら)
 椙浦に通用。地名姓。東日本に多く、約8万。おもな族は〔1〕桓武平氏三浦氏族、〔2〕嵯峨(さが)源氏渡辺氏族、ほか三河、美濃などにも豪族がある。
杉田(すぎた)
 杉多・椙田等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕岩代国安達(あだち)郡杉田邑(むら)発祥の清和源氏畠山氏族、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓波多野氏族、ほか武蔵、甲斐、相模などにもある。
杉本(すぎもと)
 杉元・椙本・椙元等に通用。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕相模国鎌倉郡杉本邑(むら)発祥の桓武平氏三浦氏族、〔2〕藤姓上杉氏族、〔3〕河内の橘(たちばな)姓楠木(くすのき)氏流、ほかがある。
杉山(すぎやま)
 椙山に通用。地名姓。東海地方に多い。おもな族は〔1〕三河国渥美(あつみ)郡杉山邑(むら)発祥の藤原姓、〔2〕幕臣杉山氏は〔1〕の同族、〔3〕桓武平氏関氏族、ほか武蔵、伊豆、丹波などに多い。
図師(ずし)
 図司・逗子等に通用。職名姓。中世の国郡や荘園の図帳師よりくる。おもな族は〔1〕紀伊国那賀郡の族は中原姓図師氏、〔2〕日向(ひゅうが)、武蔵、大隅などにも名族がある。
鈴木(すずき)
 すすき。寿々木・鈴城・進木・鈴樹・薄・鱸等に通用。物象姓。信仰姓。日本の代表的な大姓。約200万。原意は稲積みに立てる聖木。本姓穂積氏。紀伊の熊野神社が本拠で、米作信仰とともに全国に広まる。神官に多い。
首藤(すどう)
 しゅどう・すとう。守藤・須藤・周藤・主藤等に通用。氏姓。古大族。守部氏と藤原氏との合姓。首は守を飾ったもの。〔1〕秀郷(ひでさと)流藤原姓、〔2〕藤原北家小一条流、〔3〕藤原北家摂関家流など、ほか全国に多い。
須藤(すどう)
 すとう。周藤・守藤・首藤・周東・主藤等に通用。職業姓。氏姓。古代守部の守と藤原氏の藤をとった。大姓。おもな族は〔1〕藤原北家小一条流、〔2〕藤原北家摂関家流、ほか諸国に多い。
諏訪(すわ)
 諏方・須輪・洲波等に通用。地名姓。古名族。諏訪神(建御名方(たけみなかた)神)を奉戴(ほうたい)し、古代諏方国を根拠に諸国に広まる。おもな族は〔1〕諏訪上宮の神主家、〔2〕諏訪下社の神主家の金刺(かなさし)系、〔3〕須波国造(くにのみやつこ)の系などがあり、後世多くの支流が分派した。
(せき)
 堰・栫・積・世喜・勢木等に通用。諸国の「セキ」の地名より出た。原意は「塞(ふせ)ぐ」である。関所もその一つ。大姓。おもな族は〔1〕伊勢国鈴鹿郡関発祥の桓武平氏流、〔2〕美濃国武義(むぎ)郡関発祥の関鍛冶族、ほか清和源氏山県(やまがた)氏流、秀郷(ひでさと)流藤原姓結城(ゆうき)氏流などがある。
関口(せきぐち)
 堰口・塞口・折口等に通用。水流、人馬を「セキ」止める所。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕三河国宝飫(ほお)郡関口邑(むら)発祥の清和源氏今川氏族、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族、ほか丹(たん)党遠山氏流、また源姓を称する武蔵の豪族などがある。
関根(せきね)
 堰根に通用。地名姓。地形地名より姓氏へ。東北に多い。おもな族は〔1〕下野(しもつけ)国那須郡関根邑(むら)発祥の清和源氏足利氏流、〔2〕武蔵の清和源氏多田氏流、〔3〕伊勢発祥の桓武平氏流、ほかがある。
仙石(せんごく)
 千石・仙谷・千斛等に通用。地名姓。おもな族に〔1〕磐城(いわき)国白川郡仙石邑(むら)発祥の族は清和源氏石川氏族、〔2〕清和源氏土岐氏族、〔3〕利仁(としひと)流斎藤氏族などがある。
(そう)
 むね。宋に通用。略姓。外来姓。惟宗(これむね)姓の略、秦(はた)氏の嫡流で中世以降大いに栄える。鎮西の大族として著名である。〔1〕筑前の氏は大宰府(だざいふ)府官惟宗氏の後。対馬(つしま)の宗氏、〔2〕同前別流に桓武平氏清盛流、ほか肥前、肥後にもある。
相馬(そうま)
 宗右馬・相間・左右馬等に通用。地名姓。著名姓。下総(しもうさ)国相馬郡相馬郷発祥の族は桓武平氏将門(まさかど)流。同上流の後を継いだのが千葉氏。さらに、相馬師常(もろつね)は源頼朝より奥州行方(なめかた)郡を賜る。支族も多い。
十河(そごう)
 そが・そがわ・とかわ・とこう。十合・曽川・祖川等に通用。地名姓。おもな族は讃岐(さぬき)国山田郡蘇甲郷発祥の清和源氏三好氏族。もと讃岐公(きみ)の裔(えい)である。
園田(そのだ)
 圃田・囿田・曽野田・苑田・薗田等に通用。地名姓。全国に多く、とくに九州に分布する。おもな族は〔1〕薗田首(おびと)は河内国交野(かたの)郡園田郷発祥の古名族、〔2〕伊勢内宮の荒木田姓の氏、〔3〕上野(こうずけ)国山田郡園田郷発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓、ほかがある。
〔た行〕
醍醐(だいご)
 地名姓。当て字姓。瑞祥的意味の地名から姓氏へ。〔1〕醍醐天皇の裔(えい)である醍醐源氏、〔2〕高倉(たかくら)天皇裔醍醐宮の流、〔3〕藤原北家醍醐家、ほかがある。
大徳(だいとく)
 だいとこ・おおとく。佳称姓。地名姓。名族。九州に多い。常陸(ひたち)国信太(した)郡大徳村発祥。約4000。
高木(たかぎ)
 高城・高来・高樹・鷹木・竹城等に通用。地名姓。高木の茂生地または高い築城から地名、姓氏へ。約20万。おもな族は〔1〕肥前国佐賀郡高木庄発祥の紀姓高木氏流、〔2〕藤原北家中関白流(ただし〔1〕と混同)、〔3〕大友氏流、清和源氏頼親(よりちか)流などがある。
高田(たかだ)
 たかた。峠田・隆田・鷹田等に通用。地名姓。高田首(おびと)は山城国葛野(かどの)郡高田郷発祥という。ほか高田臣(おみ)、高田公(きみ)などの古姓も多い。おもな族は〔1〕坂上氏流土師(はじ)氏族、〔2〕佐藤氏族、〔3〕多田氏族、〔4〕日下部(くさかべ)氏族などがある。
鷹取(たかとり)
 職名姓。地名姓。おもな族は〔1〕古代鷹甘(たかかい)部の裔(えい)、〔2〕美作(みまさか)国勝田郡鷹取郷発祥の菅原氏族、ほか異流も多い。
高梨(たかなし)
 小鳥遊・少女遊・高梨子・高無・鳥遊・鳥楽等に通用。地名姓。当て字姓。高所地形に対する当て字から姓氏へ。信仰的意味をもつ。東日本に多い。約3万。清和源氏を称する。
高野(たかの)
 こうの・たかぬ・こうや。高埜・高濃・鷹野等に通用。古姓。地名姓。古く高野造(みやつこ)、高野朝臣(あそん)等がある。おもな族は〔1〕藤原北家摂家流、〔2〕同前中御門(なかみかど)家流、〔3〕清和源氏三上氏流、〔4〕桓武平氏三浦氏流、ほかがある。
高橋(たかはし)
 高梁・高椅・高嘴・高箸・高階等に通用。地名姓。物象姓。古名族。約100万。多く安倍氏族。膳臣(かしわでのおみ)として皇室に奉仕。おもな族は〔1〕古代高橋邑人、高橋連(むらじ)などの裔(えい)、〔2〕駿河国庵原(いはら)郡高橋発祥の大宅(おおたか)氏族、〔3〕筑後国御原(みはら)郡高橋邑発祥の大蔵姓の族、ほか武蔵、陸奥(むつ)、丹波など全国に分布する。
高山(たかやま)
 多嘉山・嵩山・鷹山等に通用。佳称姓。地名姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕上野(こうずけ)国緑野(みどの)郡高山より興る桓武平氏秩父氏族、〔2〕美濃国土岐郡高山邑(むら)発祥の清和源氏土岐氏族、〔3〕近江国甲賀郡高山邑発祥の佐々木氏族、ほか異流が多い。
宝田(たからだ)
 宝多・財田・高良田等に通用。地名姓。佳称姓。江戸城周辺の田地名。太田氏族。約1万。江戸城を開いて著名である。
財部(たからべ)
 ざいべ。宝辺・悦部・宝部等に通用。地名姓。名代姓。宝皇女(皇極(こうぎょく)天皇)の名代部より興る。おもな族は〔1〕芳賀(はが)郡財部郷発祥の下野(しもつけ)の族、〔2〕日向(ひゅうが)国諸県(もろかた)郡財部郷発祥の土持(つちもち)氏族、ほか異流が多い。
滝沢(たきざわ)
 多喜沢等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕羽後国由利郡滝沢邑(むら)発祥の由利氏族、〔2〕清和源氏頼光(よりみつ)流の滝沢氏、ほかがある。
田口(たぐち)
 たのぐち。多口に通用。古姓。地名姓。古くは田口臣(おみ)、田口朝臣(あそん)、田口宿禰(すくね)等がある。おもな族は〔1〕秀郷(ひでさと)流藤原姓足利氏族、〔2〕日奉(ひまつり)姓西党、〔3〕大友氏族、〔4〕阿波の古族など。
竹内(たけうち)
 たけのうち。武内・岳内・健内等に通用。古名族。地名姓。おもな族は〔1〕葛下(かつらぎしも)郡竹内邑(むら)発祥の大和の名族、〔2〕清和源氏流の堂上家の氏、〔3〕武内宿禰(たけしうちのすくね)の裔(えい)、〔4〕藤原北家閑院流、〔5〕村上源氏久我氏流、ほかがある。
竹田(たけだ)
 丈田・武田・竹多・菌田等に通用。古名族。地名姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕阿部氏の族である竹田臣(おみ)の裔(えい)、〔2〕大和源氏の流である清和源氏頼親(よりちか)族、ほか名族名流がきわめて多い。のち甲斐の武田氏と合流した。
武田(たけだ)
 竹田・丈田・健田・猛田・菌田等に通用。古大姓。地名姓。約30万。おもな族は〔1〕甲斐国北巨摩(きたこま)郡武田邑(むら)発祥の清和源氏武田氏族、もと竹田臣(おみ)(古姓)より出、のち常陸(ひたち)を本貫とする。一族は全国に蔓延(まんえん)、〔2〕桓武平氏流、〔3〕松平氏流、〔4〕佐々木氏流などがある。
太宰(だざい)
 大宰に通用。職名姓。大宰府の官人の裔(えい)。おもな族は大宰少弐武藤氏族が九州大宰府の官人として勤務、以来父祖の官名を称号として姓氏化された。
田島(たじま)
 たしま。多島・太島・多縞等に通用。地名姓。諸国の同地名より発祥。おもな族は〔1〕尾張国智多郡田島邑(むら)発祥の尾張族、熱田神宮の社家、〔2〕日向(ひゅうが)国那珂(なか)郡田島発祥の藤原南家工藤氏族、〔3〕上野(こうずけ)国新田郡田島発祥の清和源氏新田氏族などがある。
多田(ただ)
 おおた。他田・多々・太田・田々等に通用。地名姓。大姓名族。おもな族は〔1〕摂津国河辺郡多田発祥の清和源氏満仲流、源満仲が祖で、摂津源氏の祖、のち大いに栄える、〔2〕下総(しもうさ)国香取(かとり)郡多田邑(むら)発祥の桓武平氏千葉氏流、ほか全国に異流も多い。
多々良(たたら)
 達良・多々羅・田多羅・田々楽等に通用。古姓。職業姓。古代製鉄の従事者。地名も多い。おもな族は〔1〕任那(みまな)国主の後、多々良公(きみ)の裔(えい)、〔2〕桓武平氏三浦氏族、〔3〕筑前国糟屋(かすや)郡の多々良党ほかがある。
(たちばな)
 立花・立華・橘樹・橘花・龍華等に通用。物象姓。下賜姓。氏姓。古名族。敏達(びだつ)天皇の皇子難波(なにわ)皇子から出て、葛城(かつらぎ)王のとき降下して橘諸兄(もろえ)と名のる。以来、日本の四大姓(源平藤橘)の一つとして史上に活躍。広房流、広仲流、以実(もちざね)流など支流も多く、全国に広まる。
伊達(だて)
 いだて。城・館に通用。地名姓。当て字姓。中世以来、奥州の名族として著名。岩代国伊達郡発祥。桓武平氏伊佐氏族、政宗(まさむね)をはじめ史上に活躍する者が多い。
田中(たなか)
 多中・田仲等に通用。地名姓。古大姓。諸国の田中地名より発祥。約150万。農耕とともに広まる。とくに西日本、近畿に地名、姓氏ともに多い。〔1〕古姓に田中直(あたい)、田中臣(おみ)、田中連(むらじ)など、〔2〕近江発祥の佐々木氏族、〔2〕同上高島流、〔3〕清和源氏土岐氏流、〔4〕桓武平氏北条氏流などがあり、異流も多い。
田辺(たなべ)
 たべ。田那辺・田部・多名部・田名辺等に通用。古大姓。地名姓。職業姓。一つは古代の田部より出、一つは田のあたりを意味する地名。おもな族は〔1〕河内から出た田辺史(ふひと)の裔(えい)、〔2〕甲斐の藤原姓熊野氏族、〔3〕紀伊国牟婁(むろ)郡田辺邑(むら)発祥の藤原北家流、ほかがある。
(たに)
 はざま。多仁・多児・峪・渓・田仁等に通用。西日本に多い。約7万。古名姓。地名姓。おもな族は〔1〕佐々木氏族、〔2〕坂上氏族、〔3〕秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族、ほか全国に分布する。
谷川(たにがわ)
 たにかわ。地名姓。古姓。おもな族は〔1〕筑後国上妻(かむつま)郡谷川村発祥の調(みつぎ)姓黒木氏族、〔2〕清和源氏新田氏族、〔3〕桓武平氏千葉氏族、ほかがある。
谷口(たにぐち)
 渓口・澗口・谷久知等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕佐々木氏族、〔2〕村上源氏久我氏族、〔3〕平姓種子島(たねがしま)族、ほか摂津、美作(みまさか)、日向(ひゅうが)などにもある。
田沼(たぬま)
 地名姓。〔1〕下野(しもつけ)国安蘇(あそ)郡田沼邑(むら)発祥の族は秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族、〔2〕清和源氏新田氏族もある。この系より江戸中期の政治家田沼意次(おきつぐ)が出た。
田部(たべ)
 たなべ・たのべ。田戸・田倍・田家・多部等に通用。地名姓。古姓。古代職業部の一つ、田部からくるものと、田の周辺の田辺からくるものとがある。全国に多い。
玉置(たまき)
 たまおき。玉木・環・玉城・太巻等に通用。当て字姓。地名姓。大和の大族。桓武平氏重盛(しげもり)流という。ほか〔1〕上総(かずさ)国天羽(あまは)郡環邑(むら)発祥の清和源氏武田氏族、〔2〕紀伊国熊野本宮神官の尾張姓などがある。
田村(たむら)
 多務良・多村・多武良・田邑・田邨等に通用。古姓。地名姓。約23万。おもな族は〔1〕山城国葛野(かどの)郡田邑郷発祥の田村臣(おみ)の裔(えい)、〔2〕磐城(いわき)国田村郡発祥の坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)の裔という、坂上氏族、ほか藤原姓伊達(だて)氏族、秦(はた)姓、平姓など異流も多い。
丹下(たんげ)
 たんした・あかした。地名姓。河内国丹比(たちひ)郡丹下郷発祥。比の郷の意。おもな族は〔1〕武蔵の桓武平氏畠山氏族、〔2〕河内国丹下郷発祥の橘(たちばな)姓丹下氏などである。
丹野(たんの)
 丹埜・丹農・反野等に通用。地名姓。丹治比野(たじひの)の意。東北地方に多く、約1万。陸前国宮城郡の名族は丹治姓。
千葉(ちば)
 千羽・智葉・知葉等に通用。古大姓。地名姓。約7万。おもな族は〔1〕千葉国造(くにのみやつこ)の裔(えい)、現在の千葉県千葉市がその分布の中心、〔2〕桓武平氏良文(よしぶみ)流、〔1〕の後で、一族は全国に広まり、とくに中世以降歴史上に大いに活躍した。
(ちょう)
 おさ・なが。カバネ姓。称号姓。また、長谷部(はせべ)を「長」というような略号的な使用もある。長谷部姓の族は物部(もののべ)氏族、ほか中原氏族、武藤氏族などがある。
塚本(つかもと)
 塚元・墳本・束元・柄本・津下本等に通用。地名姓。全国の同地名より発祥。おもな族は〔1〕河内国発祥の橘(たちばな)姓塚本氏、楠木正成(くすのきまさしげ)に属する同族、〔2〕筑後の名族は平姓を称する、ほか会津、駿河、肥後などにもある。
筑波(つくば)
 筑簟・築波等に通用。古姓。地名姓。常陸(ひたち)国筑波郡名を負う。おもな族は〔1〕筑波国造(くにのみやつこ)の裔(えい)、〔2〕八田氏族、ほかがある。
(つじ)
 十・十字・巷・津司・逵・都地等に通用。地名姓。全国に地名、姓氏ともに多出、姓約20万。おもな族は〔1〕清和源氏善積(よしづみ)氏族、〔2〕菅原姓田原氏族、〔3〕藤原利仁(としひと)流後藤氏族などがある。
津田(つだ)
 津多・都田・都祁等に通用。地名姓。北陸に多い。おもな族は〔1〕近江国蒲生(がもう)郡津田庄発祥の忌部(いんべ)氏族、〔2〕桓武平氏織田氏族、〔3〕橘(たちばな)姓楠木(くすのき)氏流、ほか異流が多い。
土屋(つちや)
 土家・土谷・土矢・槌屋等に通用。地名姓。物象姓。おもな族は〔1〕相模国大住郡土屋邑(むら)発祥の桓武平氏中村氏族、〔2〕秀郷(ひでさと)流藤原姓小山氏族、〔3〕清和源氏足利氏族、ほかがある。
筒井(つつい)
 津々井・筒居・筒威等に通用。著名姓。地名姓。おもな族は大和国添下(そうのしも)郡筒井邑(むら)発祥の大神(おおみわ)姓、大和の大族として知られる。ほか、卜部(うらべ)氏族、菅原氏族、藤原氏族などがある。
角田(つのだ)
 かくた・すみだ・かどた。津野田・墨田・隅田等に通用。地名姓。諸国の同地名から発祥。異流も多く、全国に約6万。おもな族は〔1〕相模国愛甲郡角田邑(むら)発祥の桓武平氏与野党、〔2〕陸前国伊具(いく)郡角田館発祥の源姓石川氏族などがある。
椿(つばき)
 津波木に通用。物象姓。地名姓。植物の佳名をとるものと地名姓とがある。植物からきたものは橘(たちばな)氏の改姓がある。おもな族は〔1〕古代椿連(むらじ)は橘氏の裔(えい)、〔2〕荒木田姓、〔3〕蝮橋(たじひのはし)姓などである。
都留(つる)
 水流・津留・鶴等に通用。地名姓。「ツル」とは田んぼの小川を意味する。全国に多い。おもな族は〔1〕清和源氏新田氏族、〔2〕豊前(ぶぜん)国宇佐郡の豪族、ほか筑後、日向(ひゅうが)、豊後(ぶんご)などにもある。
出口(でぐち)
 地名姓。諸国の同地名を負う。古名族。おもな族は伊勢外宮の祠官(しかん)で度会(わたらい)氏族。ほか相模、摂津、志摩、美濃等にも族がある。
勅使河原(てしがわら)
 てしがはら。勅使川原・勅使源原等に通用。地名姓。武蔵国児玉郡勅使河原発祥の族は丹治(たじ)姓丹(たん)党。ほか信濃、甲斐、上野(こうずけ)、奥州、鎮西にもある。
寺島(てらじま)
 てらしま。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕下総(しもうさ)国葛飾(かつしか)郡寺島邑(むら)発祥の桓武平氏流、〔2〕駿河国発祥の清和源氏今川氏族、ほか安房の佐々木氏族、越中の族などがある。
寺田(てらだ)
 てらた。寺太に通用。寺領の田である。地名姓。全国に分布する。おもな族は〔1〕藤姓上妻(かみつま)氏族、〔2〕和泉(いずみ)郡寺田村発祥の和泉の寺田族、〔3〕伊賀の服部(はっとり)氏族、ほかがある。
(でん)
 た。略姓。職業姓。一般に田部をいう。また、田島・田川・田中などの略にも用いる。おもな族は〔1〕古代田連(むらじ)の裔(えい)で、紀国造(くにのみやつこ)の族、〔2〕丹波の坂上大宿禰(すくね)の裔、ほか異流が多い。
土井(どい)
 つちい。土居・土肥・土斐・槌井等に通用。もと豪族の屋敷の囲いや築城に用いる土築を意味した。物象姓。地名姓。おもな族は〔1〕伊予国久米郡石井郷土居発祥の族は河野氏族、〔2〕三河国額田(ぬかた)郡土井邑(むら)発祥の族は清和源氏土岐氏族、ほか名族が多い。
土居(どい)
 どひ。土井・土肥等に通用。地名姓。当て字姓。おもな族は〔1〕相模国足柄郡土肥郷発祥の桓武平氏良文(よしぶみ)流、〔2〕越中国新川郡の大族は戦国のころ活躍、ほか阿波、伊予、安芸(あき)、豊後(ぶんご)などにもある。
東条(とうじょう)
 地名姓。古代条里制より興る。おもな族は〔1〕長狭(ながさ)郡東条発祥の安房の氏、〔2〕常陸(ひたち)国信太(した)郡東条発祥の桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、ほか足利氏族、松平氏族、三浦氏族など異流が多い。
富樫(とがし)
 とみかし・とんがし。藤樫に通用。地名姓。加賀国石川郡富樫郷が本拠。利仁(としひと)流藤原姓の氏がもっとも栄えた。斎藤、井口と同族、北陸の雄族でもある。
土岐(とき)
 どき。兆・土器・斎・土城・十時等に通用。地名姓。信仰姓。大族。美濃国土岐郡土岐郷を発祥の地とし、天下に広まる。清和源氏頼光(よりみつ)流。いわゆる美濃源氏。戦国のころ主流は滅亡したが、一族は広まった。
徳重(とくしげ)
 得重に通用。佳称姓。地名姓。〔1〕甲斐の豪族は尾張国愛智郡鳴海発祥。〔2〕薩摩の氏は薩摩国日置(ひおき)郡伊集院発祥。異流も多い。
徳田(とくだ)
 得田・篤田等に通用。地名姓。佳称姓。おもな族は〔1〕羽咋(はくい)郡得田庄発祥の能登の徳田氏、〔2〕那賀郡徳田村発祥の石見(いわみ)の氏、〔3〕新田氏族、などがある。
徳富(とくとみ)
 得富に通用。佳称姓。肥後国葦北(あしきた)郡水俣邑(みなまたむら)の名族。菅原姓を称する。長門、肥前にも同流がある。
徳永(とくなが)
 得永・徳長・篤永等に通用。佳称姓。曰(いわ)く姓。約4万。おもな族は伊賀国の名族清和源氏頼政(よりまさ)流である。
得能(とくのう)
 徳能に通用。当て字姓。地名姓。河野氏流で、伊予国桑村郡得能邑(むら)発祥の名族。多くは中世に活躍し、南朝の忠臣として著名である。
豊島(としま)
 てしま・とよしま。戸島・手島・富島・敏島・利島等に通用。佳称姓。地名姓。古く、豊島連(むらじ)や豊島真人(まひと)がある。おもな族は〔1〕摂津国豊島郡発祥の清和源氏宇野氏族、〔2〕武蔵国豊島郡発祥の桓武平氏秩父氏族、ほか下総(しもうさ)、常陸(ひたち)、羽後、土佐、安芸(あき)などにもある。
戸田(とだ)
 へだ。十田・外田・利田・富田等に通用。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕尾張国海部(あま)郡戸田邑(むら)発祥の桓武平氏流、〔2〕三河の大族は藤原北家三条家流、〔3〕磐城(いわき)国磐城郡戸田邑発祥の桓武平氏磐城氏流などである。
(とどろき)
 等々力・舍利仏・十十六木・八十八騎等に通用。地名姓。車馬、渓流音からくる。各地にあり、異流の族が多い。おもな族は〔1〕羽前国置賜(おきたま)郡轟邑(むら)発祥の出羽の氏、〔2〕山梨郡等々力邑発祥の甲斐の族、〔3〕和賀郡轟邑発祥の陸中の氏などである。
富田(とみた)
 とんだ・とだ。冨田・富多・富太等に通用。地名姓。佳称姓。東日本に多く、約8万。おもな族は〔1〕伊勢国朝明(あさけ)郡富田庄発祥の桓武平氏流、〔2〕河内国丹比(たちひ)郡富田荘発祥の橘(たちばな)姓楠木(くすのき)氏族、〔3〕紀伊国牟婁(むろ)郡富田邑(むら)発祥の藤原北家熊野別当族、〔4〕出雲国能義郡富田邑発祥の佐々木氏族、ほか諸国に大族が多い。
富永(とみなが)
 冨永・富長・臣永等に通用。佳称姓。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕三河国設楽(しだら)郡富永庄発祥の族は伴姓、〔2〕近江国伊香郡富永庄より興る族は佐々木氏族、ほか諸国に多い。
富山(とやま)
 とみやま。兎耳山・兎見山等に通用。地名姓。佳称姓。大族。おもな族は〔1〕大隅国富山発祥の禰寝(ねじめ)流という、〔2〕日向(ひゅうが)国諸県(もろかた)郡都城の名族は藤原北家近衛(このえ)家流、〔3〕熱田大宮司族などである。
豊川(とよかわ)
 土代川に通用。地名姓。佳称姓。三河国宝飫(ほお)郡豊川郷発祥の族が著名。陸奥(むつ)国の名族は南部氏とともに入国、繁栄した。
豊田(とよだ)
 とよた。十代田に通用。地名姓。佳称地名より姓氏へ。古姓に豊田造(みやつこ)がある。おもな族は〔1〕相模国大住郡豊田庄発祥の桓武平氏鎌倉氏族、〔2〕下総(しもうさ)国豊田郡豊田邑(むら)発祥の常陸大掾(ひたちだいじょう)氏族、〔3〕加賀国加賀郡豊田邑発祥の利仁(としひと)流斎藤氏族、ほか異流が多い。
鳥居(とりい)
 鳥井・酉井等に通用。地名姓。物象姓。神社の鳥居にちなんだ姓で、神官に多い。おもな族は〔1〕伏見稲荷(いなり)社の社家は秦(はた)姓、〔2〕京都北野社の社家は菅原姓、〔3〕河内国河内郡枚岡(ひらおか)神社の旧社家は枚岡連(むらじ)姓、〔4〕熊野鈴木氏族、ほか武家にも多い。
〔な行〕
内藤(ないとう)
 内等・内頭・内納等に通用。氏姓、職名姓。藤原秀郷(ひでさと)の裔(えい)頼俊(よりとし)の子行俊が舎人(うどねり)なので、その職名の一字と出自のとをあわせて内藤の姓が発生した。全国に多く、約10万。おもな族は〔1〕藤原北家道長流、〔2〕藤姓椿井(つばい)氏流、〔3〕三河の大族、ほか武田氏族、丹波の名族、伯耆(ほうき)の族など、異流も多い。
(なか)
 那珂・中・長・那賀等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国那珂郡発祥の古代仲国造(くにのみやつこ)の裔(えい)、〔2〕武蔵国入間郡の桓武平氏流の裔、ほか異流が多い。
中井(なかい)
 なかつい。中位・中居・仲井等に通用。地名姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕大和国中井庄発祥の越智(おち)氏族、〔2〕楠木(くすのき)氏族、〔3〕常陸(ひたち)国鹿島郡中居発祥の桓武平氏大掾(だいじょう)氏族、ほか異流が多い。
永井(ながい)
 永居・長井・永易・長居等に通用。「ナガイ」族あわせて約12万。地名姓。おもな族は〔1〕桓武平氏長田氏族、〔2〕同上三浦氏族、〔3〕甲斐の斎藤氏族、〔4〕大江姓長田氏族、ほか異流が多い。
中尾(なかお)
 中生・中雄・仲尾・長尾等に通用。地名姓。当て字姓。〔1〕伊勢国安濃郡の豪族は藤原南家工藤氏族、〔2〕紀伊国海部(あま)郡笠畑邑(かさはたむら)発祥の族は加茂氏族、〔2〕三浦氏族、〔4〕赤松氏族、ほか異流が多い。
中川(なかがわ)
 なかつがわ。仲川・中津川等に通用。川名、地名より発祥。約13万。おもな族は〔1〕大和国広瀬郡発祥の中川党、〔2〕伊勢内宮の祠官荒木田氏流、〔3〕美濃国安八(あはちま)郡中川庄発祥の藤原南家真作(まなり)流、〔4〕清和源氏斯波(しば)氏流、ほかがある。
中沢(なかざわ)
 なかさわ・なかのさわ。仲沢・長沢等に通用。大姓。地名姓。中部地方に多い。おもな族は〔1〕諏訪神族、〔2〕清和源氏佐竹氏族、〔3〕足利氏族、〔4〕新田氏族、〔5〕秩父氏族、ほか名流、異流も多い。
中島(なかじま)
 仲島・那賀島等に通用。地名姓。全国の中島の地名を負う。のち長島に混同。古姓。尾張の古大族に中島海部直(あまのあたい)がみえる。おもな族は〔1〕清和源氏小笠原氏族、〔2〕藤原南家工藤氏族、〔3〕桓武平氏三浦氏族などがある。
永島(ながしま)
 えいしま。名賀島・良島・長島等に通用。地名姓。東日本に多い。佳称姓。おもな族は下野(しもつけ)国安蘇(あそ)郡永島発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族。ほか相模、武蔵、紀伊、そのほかにもある。
長島(ながしま)
 永島・名賀島・良島等に通用。地名姓。佳称姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕但馬(たじま)発祥の日下部(くさかべ)姓、〔2〕肥前発祥の源姓、〔3〕下野(しもつけ)発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓、ほか。
中田(なかだ)
 なかた。中多・中太・仲多・仲田等に通用。田中は田の居住に、中田は田の位置に重点がある。地名姓。おもな族は〔1〕秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族、〔2〕清和源氏太田氏族、〔3〕ほか武蔵、備後(びんご)などにもある。
永田(ながた)
 えいだ。永多・長多・長田等に通用。地名姓。佳称姓。おもな族は〔1〕近江国蒲生(がもう)郡長田村発祥の佐々木氏族、〔2〕紀伊国熊野新宮衆の族、〔3〕武蔵の豪族永田氏流、ほかがある。
中谷(なかたに)
 なかや。中渓・仲谷・半谷等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕石見(いわみ)国美濃郡の清和源氏吉見氏族、〔2〕磐城(いわき)の氏は清和源氏石川氏族、ほか異流が多い。
中西(なかにし)
 仲西・那珂西等に通用。大姓。地名姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕大和国中西庄発祥の藤原氏流、〔2〕伊勢外宮の度会(わたらい)氏族、ほか清原姓、菅原姓、橘(たちばな)姓などである。
中野(なかの)
 中ノ・中之・中埜・中濃・仲野・中能等に通用。地名姓。大姓。西日本に多く、約20万。おもな族は〔1〕伊勢国朝明(あさけ)郡中野邑(むら)発祥の藤原秀郷(ひでさと)流赤堀氏族、〔2〕武蔵国多摩郡中野邑発祥の日奉(ひまつり)姓西党、〔3〕尾張国中野邑発祥の清和源氏為義(ためよし)流、ほか異流も多い。
中村(なかむら)
 中邑・仲村・中邨・仲邑等に通用。地名姓。古大姓。約130万。田中とともに日本の代表的な族であり、農耕姓である。おもな族は〔1〕古代の中村連(むらじ)、上毛野(かみつけの)中村公(きみ)など、〔2〕大和の名族吐田氏族、〔3〕藤原南家巨勢麿(こせまろ)流、〔4〕小笠原氏流、〔5〕戦国ごろ中村一政(かずまさ)を出した橘(たちばな)氏流、そのほか異流はきわめて多い。
中山(なかやま)
 なかつやま。仲山・名嘉山等に通用。古姓。地名姓。諸国の中山から発祥。西日本に多い。おもな族は〔1〕藤原北家松殿流の中山家、〔2〕同前家九条流、大炊御門(おおいみかど)流、長良(ながら)流、花山院流など、〔3〕武蔵国入間郡中山邑(むら)発祥の丹党、〔4〕上野(こうずけ)国吾妻(あづま)郡中山邑発祥の有道姓児玉党、ほか桓武平氏大掾(だいじょう)氏族、同前磐城(いわき)氏族などがある。
那須(なす)
 奈洲・奈須等に通用。地名姓。古大族。おもな族は〔1〕古代那須直(あたい)、那須国造(くにのみやつこ)などの裔(えい)、〔2〕その後裔と思われる藤原姓を称する族、本拠は下野(しもつけ)国那須郡那須郷、支流は東北に広まる。
夏目(なつめ)
 夏梅・棗・夏女等に通用。当て字姓。地名姓。東日本に多く、約1万。おもな族は〔1〕信濃国発祥の清和源氏満快(みつよし)流、〔2〕三河の氏は〔1〕の支流、三方ヶ原の戦いに夏目吉信(よしのぶ)は主の徳川家康の命を救う。文豪夏目漱石はこの裔(えい)である。
名取(なとり)
 名執・揖取に通用。陸前国名取郡名を負う。古くは名取公(きみ)、名取朝臣(あそん)がある。おもな族は甲斐の名取氏。陸前から移ったもので、清和源氏を称する。
奈良(なら)
 乃楽・名良・奈羅・楽世等に通用。地名姓。佳称姓。おもな族は〔1〕古姓、奈良己知(こち)は秦(はた)氏族、ほか奈良忌寸(いみき)、奈良真人(まひと)など、〔2〕大和国吉野郡奈良発祥の藤原南家流、〔3〕武蔵の成田氏流、ほか異流が多い。
南部(なんぶ)
 なんべ・みなべ。南浮に通用。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕甲斐国南巨摩(みなみこま)郡南部邑(むら)発祥の清和源氏武田氏族、〔2〕奥州南部氏は〔1〕の同族、光行(みつゆき)が奥州征伐のおり源頼朝より5郡を賜って土着した。ほかに支流もある。
新名(にいな)
 しんみょう・しんめい。地名姓。新名田からくる。東日本に多い。日向(ひゅうが)国那珂(なか)郡新名郷発祥の族は土持(つちもち)氏族。讃岐(さぬき)の豪族は綾(あや)姓である。
新家(にいや)
 しんや・あらや・にいのみ・しんけ。新屋・新宅に通用。地名姓。古姓。郡家または本家から分流新設した役所や家、それより地名へ。物部(もののべ)氏族、丹比(たちひ)族、有道姓児玉党などがあり、異流も多い。
二階堂(にかいどう)
 建造姓。地名姓。中世の大族。相模国鎌倉郡二階堂発祥。その地に二階建ての堂を建立したことによる。藤原南家伊東氏族で工藤氏の分流。行政(ゆきまさ)のとき鎌倉幕府に権力を振るい、以来一族天下に広まる。
西(にし)
 かわち・さい。仁志・仁紫・二司等に通用。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕武蔵国多摩郡発祥の日奉(ひまつり)西党、〔2〕上野(こうずけ)国佐位郡発祥の族は秀郷(ひでさと)流藤原姓、〔3〕安芸(あき)の西氏は清和源氏東(あずま)氏族、ほか諸国に名流も多い。
西川(にしかわ)
 さいかわ。仁志川・西側等に通用。諸国の地名から興る。おもな族は〔1〕信濃の豪族で、清和源氏村上氏族の氏、〔2〕吉野郡西河村(川上邑(むら))発祥の大和の氏、〔3〕清和源氏を称する紀伊国牟婁(むろ)郡の豪族、ほかがある。
錦織(にしごり)
 にしきおり。錦・錦部・錦郡・西郷里等に通用。職業姓。地名姓。古代の職業部である錦織部より興る。全国に散見される。おもな族は山城、河内、和泉(いずみ)、近江などの諸族。近江の族は清和源氏山本氏族。雲上家に卜部(うらべ)姓の氏もある。
西田(にしだ)
 仁志田・西多等に通用。代表的な地名姓。おもな族は〔1〕石見(いわみ)国邇摩(にま)郡西田村発祥の清和源氏流、〔2〕伊賀国発祥の藤原氏流、ほか摂津、和泉(いずみ)、紀伊、美作(みまさか)など全国に広まる。
西野(にしの)
 西乃・西埜・西能・西迺等に通用。地名姓。約7万。おもな族は〔1〕羽後国平鹿郡西野邑(むら)発祥の奥州西野氏、〔2〕伊勢神宮(内宮)社家の荒木田姓の氏、ほか常陸(ひたち)、越中、近江などにもある。のちに西と略称するに至った。
西村(にしむら)
 西志村・西邑・西邨等に通用。地名姓。本村から西に位置する村の意。約12万。おもな族は〔1〕大和国式上郡西村発祥の藤原姓西村氏、〔2〕甲斐国発祥の清和源氏武田氏族、〔3〕清和源氏細川氏族、〔4〕村上源氏北畠氏族、などである。
西山(にしやま)
 さいざん。地名姓。全国の同地名を負う。西日本に多く、約6万。おもな族は〔1〕土佐の名族は香宗我部(こうそがべ)氏より出る、〔2〕雲上家の西山家は藤原北家流、ほか滋野(しげの)姓、宇都宮氏族、北畠氏族などがある。
新田(にった)
 しんでん・あらた・にいた・にゅうた。仁田・新多・日田・安良田・改田・荒田等に通用。新田開発によって発生した地名姓。中近世の大姓である。おもな族は〔1〕上野(こうずけ)国新田郡発祥の清和源氏義国流、新田義貞を出す、〔2〕磐城(いわき)国磐城郡新田(仁井田)邑(むら)発祥の桓武平氏岩城氏流、ほか諸国の同地名を負う異流も多い。
二宮(にのみや)
 にみや・ふたみや。二ノ宮に通用。宮名姓。地名姓。全国の二宮鎮座地から地名、姓氏へ。異流も多い。〔1〕武蔵国多摩郡小川郷二宮邑(むら)発祥の族は日奉(ひまつり)姓西党、〔2〕相模国余綾(よろき)郡二宮邑発祥の族は桓武平氏三浦氏族、〔3〕甲斐国八代郡小石和(こいさわ)筋二ノ宮邑発祥の族は清和源氏武田氏族、ほかがある。
丹羽(にわ)
 たんば・たにわ。二輪・邇波・土神・爾波・丹生等に通用。地名姓。古姓。おもな族は〔1〕尾張国丹羽郡発祥の丹羽臣(おみ)、丹羽県君(あがたのきみ)の後、〔2〕武蔵の族は平姓児玉党、〔3〕清和源氏足利氏族、ほかがある。
根来(ねごろ)
 ねぎ。十八娘・寝来・根頃に通用。地名姓。当て字姓。おもな族は紀伊国那賀郡根来邑(むら)発祥の族。織田信長や豊臣秀吉と争った根来衆徒は同族。ほか紀伊国伊都郡発祥の藤原姓成神(なるがみ)流の氏や、和泉(いずみ)国日根郡発祥の佐代氏流の氏もある。
根本(ねもと)
 根元に通用。山の尾根などに発生した地名から姓氏へ。関東に多い。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国信太(した)郡根本邑(むら)発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓、〔2〕紀姓の氏、源姓の氏もある。
野口(のぐち)
 ののぐち。埜口・濃口・能口等に通用。地名姓。約11万。東海方面に多い。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国那珂(なか)郡野口邑(むら)発祥の清和源氏佐竹氏族、〔2〕下野(しもつけ)国都賀郡野口村発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓小山氏族、ほか佐々木氏族、三好氏族など異流が多い。
野田(のだ)
 乃田・埜田・能多・能田・野多等に通用。地名姓。「ノタ」姓は約20万。全国に分布。おもな族は〔1〕三河国設楽(しだら)郡野田邑(むら)発祥の藤原南家熱田大宮司族、〔2〕下野(しもつけ)国梁田(やなだ)郡野田邑発祥の桓武平氏梁田氏族、ほか千葉氏族、楠木(くすのき)氏族、渡辺氏族などの異流が多い。
野村(のむら)
 ののむら。乃村・埜村・野邑・野邨・能村等に通用。中村とともに日本の代表的な地名姓。約12万。おもな族は〔1〕近江国浅井郡野村庄発祥の佐々木氏族、〔2〕山城国野村を負う秀郷(ひでさと)流藤原姓阿曽沼(あそぬま)族、〔3〕武蔵国の小野姓横山党、その他がある。
〔は行〕
萩原(はぎわら)
 はぎはら・はぎばる。大姓。地名姓。関東に多い。おもな族は〔1〕小野姓猪股(いのまた)党、〔2〕赤松氏族、〔3〕秀郷(ひでさと)流藤原姓佐野氏族、ほか上野(こうずけ)、大和、河内、美濃などに多い。
迫間(はざま)
 迫・狭間・硲・間・波佐間等に通用。地名姓。山あいの迫った地形より出た。おもな族は〔1〕肥後国菊池郡迫間邑(むら)発祥の菊池氏族、〔2〕豊前(ぶぜん)国大分郡狭間邑発祥の大友氏族、ほか摂津、近江にもある。
土師(はじ)
 はにし。吐師・埴石等に通用。職業姓。古大族。一族居住の地に地名を残す。異流が多い。おもな族は〔1〕出雲族で土師臣(おみ)の裔(えい)、〔2〕武蔵の族で土師直(あたい)の族、〔3〕喪葬をつかさどった土師宿禰(すくね)の裔などがある。
橋詰(はしづめ)
 橋爪に通用。地名姓。橋のたもとをいう。おもな族は〔1〕駿河の豪族は藤原南家工藤氏族、〔2〕伊勢外宮の祠官の族は度会(わたらい)姓、〔3〕清和源氏畠山氏族、ほかがある。
橋本(はしもと)
 橋下・橋元・端本・觜本・橋頭等に通用。地名姓。橋爪・橋詰も同概念を表す。おもな族は〔1〕和泉(いずみ)国日根郡橋本より興る和田氏族、〔2〕藤原北家西園寺家流、〔3〕桓武平氏相馬氏族、などがある。
長谷川(はせがわ)
 長瀬川・長谷河・馳川に通用。当て字姓。地名姓。「長谷の初瀬(泊瀬)川」の呼称より、長谷をハ(ツ)セと訓(よ)む。姓氏は地名を負って全国に広まる。約30万。おもな族は〔1〕中原姓の大和国十市郡の豪族、〔2〕同上国式上郡長谷より発祥の長谷川党、〔3〕秀郷(ひでさと)流藤原姓の族などで、東日本に多い。
(はた)
 はだ・しん。波陀・八多・波多等に通用。外来姓。古代の大族。約3万。同族異姓100を超える。古代は公(きみ)・連(むらじ)・忌寸(いみき)・宿禰(すくね)姓を賜るものが多かった。古代文化の伝播(でんぱ)にも尽くし、各地に居住し、勢力を得た。政治上にも絶大な力をもち、雄略(ゆうりゃく)帝のとき大蔵の創建に尽くした。現在の秦氏はこの古代秦氏の後という。
服部(はっとり)
 はとり・はとりべ。羽鳥・服織・服・羽取・波登理・八鳥・八取等に通用。古代職業部よりくる。古大姓。約12万。おもな族は〔1〕大和国山辺郡服部郷の族、〔2〕伊賀国阿拝(あへ)郡服部郷の族、ほか三河、常陸(ひたち)、美濃など諸国に地名、姓氏がある。
(はなわ)
 ばん。花和・花曲・花輪・鼻輪等に通用。地名姓。当て字姓。崎の曲がった地形からくる。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国鹿島郡塙邑(むら)発祥の中臣(なかとみ)氏族、〔2〕武蔵国児玉郡児玉発祥の秩父族、塙保己一(ほきいち)はその系である。
羽田(はねだ)
 はた。羽子田・波根田・羽根田等に通用。古姓。地名姓。おもな族は〔1〕羽田臣(おみ)、羽田公(きみ)、羽田真人(まひと)、羽田朝臣(あそん)など、〔2〕尾張発祥の族は清和源氏足利氏族、〔3〕下野(しもつけ)国足利郡羽田邑(むら)発祥の族は足利氏族、ほか新田氏族、越前の斯波(しば)氏族、などがある。
馬場(ばば)
 ばんば。馬庭・番場・場ば・馬々等に通用。馬の調練場より地名、姓氏へ。全国に広まる。おもな族は〔1〕清和源氏頼光(よりみつ)流、〔2〕清和源氏満政(みつまさ)流、〔3〕佐々木氏流、ほか異流も多い。
浜田(はまだ)
 浜多・葉満田等に通用。地名姓。四国に多い。おもな族は〔1〕伊勢国三重郡浜田邑(むら)発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓田原氏族、〔2〕陸前国気仙郡浜田邑発祥の桓武平氏流、〔3〕肥前の菊池氏族、ほかがある。
早川(はやかわ)
 そうかわ。速川・鮠川に通用。地名姓。川名から地名、姓氏へ。おもな族は〔1〕相模国足柄郡早川庄発祥の族は桓武平氏流、〔2〕甲斐国南巨摩(みなみこま)郡早川より興る族は清和源氏武田氏族、〔3〕肥後国益城(ましき)郡早川邑(むら)発祥の族は嵯峨源氏渡辺党、ほか異流が多い。
(はやし)
 拝志・拝師・茂・早等に通用。古名族。地名姓。約35万。古代は林を二字佳名にして拝志ともした。全国に蔓延(まんえん)。百済(くだら)、高麗(こま)(高句麗(こうくり))渡来の族もある。異流はきわめて多い。
葉山(はやま)
 端山・麓山・麓等に通用。山の端からくる地名姓。おもな族は〔1〕播磨(はりま)の豪族は赤松氏流、〔2〕甲斐の氏は秀郷(ひでさと)流藤原姓、ほかがある。
(はら)
 幡羅・幡良・波羅・波良・腹等に通用。地名姓。古名族。諸国の同地名より興る。約15万。おもな族は〔1〕物部(もののべ)氏から出た原造(みやつこ)、〔2〕伊勢の内宮祠官の荒木田姓原氏、〔3〕清和源氏土岐氏族、〔4〕尾張発祥の良峰(よしみね)氏族、ほかがある。
原田(はらだ)
 原多・腹田・胎田等に通用。地名姓。約12万。九州に多い。おもな族は〔1〕筑前国御笠(みかさ)郡原田邑(むら)発祥の大蔵姓原田氏、〔2〕肥後国球磨(くま)郡原田邑発祥の菊池氏族、〔3〕美作(みまさか)国久米郡原田邑発祥の桓武平氏流、ほか菅原氏流、工藤氏流、真髪部(まかみべ)姓などがある。
針谷(はりがい)
 はりがや・はりたに・はりや。張ヶ谷・張貝・針ヶ谷・張替・榛谷等に通用。当て字姓。地名姓。「ハリ」も「カイ」も開拓上の語。関東地方に多い。おもな族に武蔵国都筑(つつき)郡榛谷庄発祥の桓武平氏秩父氏流がある。
(ばん)
 よろず・まん。古姓。佳称姓。屋号姓。万屋の屋号の略、または萬行(まんぎょう)、萬木(ゆるぎ)姓などの略である。伴姓の転。西日本に多い。「正倉院文書」に出る。異流が多い。
(ばん)
 とも。大伴氏の後。古大姓。職業姓。古代より現代まで連綿として続く。山城の伴宿禰(すくね)系、甲斐の伴直(あたい)系、三河の伴朝臣(あそん)系、伴党、佐々木氏族、ほか異流全国にわたる。
樋口(ひぐち)
 といぐち。樋ノ口・樋之口等に通用。水道の取入口から地名、姓氏へ。おもな族は〔1〕清和源氏武田氏族、〔2〕藤原北家道綱(みちつな)流、〔3〕藤原南家工藤氏族、ほか加賀、丹波、伊予などにもある。
久永(ひさなが)
 くなが。久長に通用。佳称姓。地名姓。おもな族は〔1〕石見(いわみ)国邑智(おおち)郡久永庄発祥の賀茂姓、〔2〕美作(みまさか)国勝北郡豊田庄近藤発祥の清和源氏新田氏族、ほかがある。
日出(ひで)
 ひじ・ひので。秀に通用。地名姓。全国の同地名より興る。約4000。豊後(ぶんご)国速見郡日出庄発祥の族は清原氏流、ほか異流が多い。
人見(ひとみ)
 一見・一美等に通用。当て字姓。地名姓。摂津の古族に人見金田麿(かねたまろ)がいる。おもな族は〔1〕武蔵国幡羅(はら)郡人見邑(むら)発祥の小野姓猪股(いのまた)党は『源平盛衰記』や『吾妻鏡(あづまかがみ)』等に多出、〔2〕斎藤氏族、〔3〕平姓、常陸(ひたち)の豪族、ほかがある。
日向(ひゅうが)
 ひなた・ひむか・ひがの。日当・陽日に通用。地名姓。古大族。日の当たる地の意。おもな族は〔1〕日向国造(くにのみやつこ)の裔(えい)、〔2〕日向の国司高木氏族、〔3〕佐久郡日向邑(むら)発祥の信濃氏族、ほか各地の地名を負う族も多い。
平井(ひらい)
 平居・平得・平意等に通用。平居が原意に近い。地名姓。おもな族は〔1〕摂津国河辺郡平井邑(むら)発祥の藤原南家流、〔2〕近江国高島郡平井邑発祥の佐々木氏族、〔3〕甲斐国山梨郡平井邑発祥の清和源氏武田氏族、ほか異流が多い。
平田(ひらた)
 平太・平多・枚田・辟田等に通用。古大姓。地名姓。おもな族は〔1〕倭漢(やまとのあや)坂上氏族の平田忌寸(いみき)の末、〔2〕大和国葛下(かつらぎしも)郡平田荘発祥の平田党、〔3〕伊賀国山田郡名を負う桓武平氏流、ほか異流も多い。
平野(ひらの)
 平之・平埜・平能・枚野等に通用。古姓。地名姓。約10万。古くは平野宿禰(すくね)、平野朝臣(あそん)、卜部(うらべ)氏族などがある。さらに〔1〕摂津国住吉郡平野郷発祥の坂上氏族、〔2〕美濃国安八(あはちま)郡平野庄発祥の安八氏流、ほか清和源氏山県(やまがた)氏族、桓武平氏北条氏族、などもある。
平山(ひらやま)
 平安山・比良山等に通用。地名姓。大族。おもな族は〔1〕武蔵国多摩郡平山発祥の武蔵七党のなかの日奉(ひまつり)姓西党、〔2〕肥後国山鹿郡平山邑(むら)発祥の菊池氏族、ほか島津族、結城(ゆうき)族、丹党などである。
広瀬(ひろせ)
 広世・広端・弘瀬等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕大和国広瀬郡広瀬発祥の広瀬臣(おみ)の裔(えい)。〔2〕甲斐国八代郡小石和(こいさわ)筋広瀬邑(むら)発祥の清和源氏武田氏族、〔3〕播磨(はりま)国宍粟(しさわ)郡広瀬邑発祥の赤松氏族、ほか異流が多い。
広田(ひろた)
 博田・広多・弘田等に通用。佳称姓。地名姓。おもな族は〔1〕摂津国武庫(むこ)郡広田郷発祥の族はもと百済(くだら)族で、広田連(むらじ)の後、〔2〕出雲の豪族は佐々木氏流、ほか全国に多い。
福井(ふくい)
 富久井・福居・復井等に通用。地名姓。佳称姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕播磨(はりま)国揖保(いいほ)郡福井庄発祥の古代出雲臣(おみ)族、〔2〕阿波国那賀郡福井庄発祥の清和源氏武田氏族、ほか菅原氏族、佐々木氏族、足利氏族などがある。
福島(ふくしま)
 副島に通用。佳称・地名姓。全国に多い。おもな族は〔1〕摂津国西成郡福島庄発祥の清和源氏頼光(よりみつ)流、〔2〕桓武平氏北条氏流、〔3〕諏訪氏族、〔4〕福島正則を出した尾張国海部(あま)郡発祥の豪族、その他がある。
福田(ふくだ)
 さきた。富久田・福多・服田等に通用。地名姓。もと吹田か。多く佳字を使用。「フクダ」姓約20万。おもな族は〔1〕桓武平氏渋谷氏族、〔2〕赤松氏族、〔3〕平姓隈(くま)氏族、〔4〕日向(ひゅうが)氏族、その他である。
福富(ふくとみ)
 佳字姓。曰(いわ)く姓。尾張国海部(あま)郡の豪族は橘(たちばな)姓という。もと福住か。近江、土佐にも名族がある。九州に多い。
藤井(ふじい)
 葛井・藤伊・藤居・不二井等に通用。古姓、地名姓。なかには藤原氏の出を意味するものもある。約20万。おもな族は〔1〕佐々木氏族、〔2〕藤原北家近衛(このえ)家流、〔3〕三河の藤井松平氏族、秀郷(ひでさと)流藤原姓小山氏族、〔4〕清和源氏佐竹氏族、〔5〕三宅氏族などがある。
藤田(ふじた)
 藤太・藤多・葛田等に通用。全国の同地名を負う。おもな族は〔1〕武蔵国榛沢(はたさわ)郡藤田郷発祥の小野姓猪股(いのまた)党、〔2〕桓武平氏畠山氏族、〔3〕同前北条氏族、ほか多数。
藤野(ふじの)
 とうの。富士野・藤埜・輔治能等に通用。古姓。地名姓。古くは垂仁(すいにん)帝裔(えい)と称する藤野別公(わけのきみ)、藤野別真人(まひと)、藤野別宿禰(すくね)もいる。一族約7万。備中、摂津、若狭などにも名族がある。
藤村(ふじむら)
 地名姓。おもな族は岩代国河沼郡藤村発祥の佐々木盛綱の裔(えい)という佐々木氏族。ほか奥州に広まった清和源氏南部氏族もある。
藤本(ふじもと)
 富士本・藤元・藤基・藤源等に通用。地名姓。曰(いわ)く姓。「元は藤原氏」の意。おもな族は〔1〕藤原北家兼家(かねいえ)流、〔2〕度会(わたらい)姓、〔3〕服部(はっとり)姓、ほか異流が多い。
藤原(ふじわら)
 富士原・不死原・藤藁等に通用。一つは古名族の藤原氏を受け継ぎ、一つは藤原の地名からくる。前者は大和国高市郡藤原発祥で、藤原宮の旧址がある。中臣鎌足(なかとみのかまたり)が天智(てんじ)帝から氏と土地とを下賜された。したがって古代の氏である。後者は諸国の藤の茂生地から地名が出たもので、苗字である。前者は現在ほとんど消失、後者の苗字が大部分である。その数約10万、西日本に多い。
布施(ふせ)
 布勢・布瀬・伏等に通用。地名姓。約4万。おもな族は〔1〕因幡(いなば)国高草郡布勢郷発祥の族は清和源氏足利氏族、〔2〕甲斐国中郡布施村発祥の族は清和源氏武田氏族、〔3〕応神(おうじん)帝の裔(えい)と称する大和国葛下(かつらぎしも)郡の豪族、〔4〕近江国蒲生(がもう)郡布施郷発祥の蒲生氏族、などがある。
古川(ふるかわ)
 こかわ。布留川に通用。川名から地名、姓氏へ。全国に多い。おもな族は〔1〕陸前国志田郡古川邑(むら)発祥の新田氏族、〔2〕飛騨国荒城郡古川邑発祥の藤原北家姉小路氏族、ほか小笠原氏族、大江姓、佐々木氏族などがある。
逸見(へんみ)
 へみ・いつみ。辺見・片見・免見・逸見等に通用。地名姓。甲州の大族。甲斐国巨摩(こま)郡逸見筋発祥の清和源氏武田氏族。おもに中世に活躍した。ほか武蔵、美濃、若狭など全国に広まる。
北条(ほうじょう)
 きたじょう・ほくじょう。地名姓。中世の大族。古代の条里制より発生、地名から姓氏へ。おもな族は〔1〕伊豆国田方郡北条庄発祥の桓武平氏維将(これまさ)流。鎌倉幕府創建と維持に尽くした、〔2〕後北条氏は桓武平氏伊勢氏族で、伊勢新九郎長氏の後裔(こうえい)、ほか異流も多い。
保坂(ほざか)
 ほさか。穂坂・帆坂・甫坂等に通用。地名姓。おもな族は〔1〕甲斐の保坂氏は倭連(やまとのむらじ)の裔(えい)という、〔2〕武蔵の名族は仁平氏族という、ほか上野(こうずけ)、下野(しもつけ)、越後などにもある。
(ほし)
 保士・保司・保志等に通用。地名姓。信仰姓。東北地方に多い。おもな族は〔1〕藤原姓を称する岩代国会津郡の豪族、〔2〕越後国蒲原(かんばら)郡の族、多くは神官である。
星野(ほしの)
 星埜・干野・保志野・乾野等に通用。東日本に多く、地名を負う。約10万。おもな族は〔1〕三河国宝飯(ほい)郡星野荘発祥の藤原南家熱田大宮司族、〔2〕筑後国生葉(いくは)郡星野邑(むら)発祥の調(みつぎ)姓、一説に清和源氏ともいう。ほか桓武平氏流などがある。
細川(ほそかわ)
 地名姓。古姓。中世の大族。〔1〕「正倉院文書」に細川氏がある。大和国高市郡細川村発祥、〔2〕三河国額田(ぬかた)郡細川邑(むら)発祥の族は清和源氏足利氏族、室町期に頼之(よりゆき)、江戸期に忠興(ただおき)などを出し活躍した。
堀田(ほった)
 ほりた。発田に通用。地名姓。中世の大族。おもな族は尾張国中島郡堀田村発祥の紀氏流の氏、幕末の老中堀田正睦(まさよし)はその系。ほか丹党、磐城(いわき)の族、出羽の族などがある。
穂積(ほづみ)
 八月一日・八月朔日・八朔・秀積・穂集等に通用。信仰姓。事象姓。古名族。大族。物部(もののべ)氏流。約1万。本拠は大和国山辺郡穂積邑(むら)という。ただし、全国に地名がある。後の鈴木氏も同族で、農耕の発展に多大の貢献をした。
保谷(ほや)
 ほうや・やすたに。地名姓。関東方面では「ホウヤ」、西日本では「ヤスタニ」が多い。約5000。武蔵の豪族は新座郡保谷邑(むら)に発祥した。
(ほり)
 保利・保理・壕・法里等に通用。日本の代表的地名姓。中部地方に多い。おもな族は〔1〕大和国宇陀(うだ)郡の族は大神(おおみわ)姓、〔2〕吉野の名族、〔3〕清和源氏頼光(よりみつ)流、〔4〕久太郎秀政を出した美濃の族、ほか異流も多い。
堀内(ほりうち)
 ほりのうち。堀打・湟打・堀ノ内等に通用。地名姓。もと屋敷の外周に堀を巡らしたことから興り、地名、姓氏へ。〔1〕藤原姓熊野別当族、〔2〕清和源氏新宮氏流、〔3〕清和源氏里見氏流、ほか名族が多い。
堀口(ほりぐち)
 ほりくち。堀口・堀之口・堀ノ口に通用。地名姓。おもな族は〔1〕上野(こうずけ)国新田郡堀口郷発祥の清和源氏新田氏族、〔2〕武蔵の豪族は丹治(たじ)姓丹(たん)党、ほか美濃、加賀、近江、九州などにもある。
本郷(ほんごう)
 地名姓。郷里制によって興る。諸国に多い。おもな族は〔1〕若狭国大飯郡本郷発祥の族は村上源氏の後、〔2〕伊勢の族は桓武平氏杉原氏族、ほか異流が多い。
本庄(ほんじょう)
 本荘・本城・本成等に通用。地名姓。荘園制において、新設の荘園や別符に対して元の荘園をいう。したがって全国に多い。おもな族は〔1〕武蔵国児玉郡本庄発祥の児玉党、〔2〕下総(しもうさ)国海上(うなかみ)郡本城邑(むら)発祥の桓武平氏千葉氏族、ほかがある。
本田(ほんだ)
 ほんでん・もとだ。本多・挙田・誉田・品田・大海等に通用。族名姓。地名姓。古来の大古族で大海(おおあま)姓安曇(あずみ)氏族。本拠は信濃であるが、全国に広まった。おもな族は〔1〕武蔵国男衾(おぶすま)郡本田邑(むら)発祥の丹治(たじ)姓、〔2〕桓武平氏千葉氏族、〔3〕清和源氏今川氏族、ほかがある。
本間(ほんま)
 本摩・本馬に通用。地名姓。東北、北陸に多い。〔1〕相模国愛甲郡本間村発祥の族は小野姓横山党、〔2〕武蔵の氏は〔1〕と同族。ほか支流多く、なかでも越後、佐渡、出羽の氏は著名である。
〔ま行〕
前川(まえかわ)
 まえがわ。前側に通用。地名姓。〔1〕備前国上道郡財(たから)村の族は財田朝臣(あそん)姓、〔2〕播磨(はりま)国赤穂郡矢野庄の氏は赤松氏族、ほか清原姓、藤原姓、清和源氏流、などが多い。
前田(まえだ)
 前多・前甸・真栄田などに通用。古姓。地名姓。西日本に多く、約20万。おもな族は〔1〕美濃国安八(あはちま)郡前田邑(むら)発祥の利仁(としひと)流斎藤姓、〔2〕藤原北家押小路流、〔3〕加賀前田氏流は前田臣(おみ)の裔(えい)とも斎藤氏流ともいうが、菅原氏流説が通っている。戦国のころ前田利家(としいえ)を出す。
牧野(まきの)
 巻野・槇野・真木野・蒔野等に通用。地名姓。名族。約10万。〔1〕古姓に蘇我(そが)氏の族で、田口臣(おみ)から出た三河の豪族がある。〔2〕藤原北家道隆流、〔3〕清和源氏宇野氏族、ほかがある。
益子(ましこ)
 ますこ。増子・猿子・益戸等に通用。地名姓。当て字姓。北関東の特姓。おもな族は〔1〕下野(しもつけ)国芳賀(はが)郡益子邑(むら)発祥の紀姓の益子氏、〔2〕美濃国土岐郡猿子邑発祥の清和源氏土岐氏族などがある。
真下(ましも)
 ました。地名姓。武蔵の名族。有道姓児玉党。武蔵国児玉郡真下邑(むら)発祥。武蔵七党の一つとして中世に活躍した。
増田(ますだ)
 升田・枡田・益田・真清田・舛田・沙田等に通用。升形の田の意より佳称の益や増の字に転。地名姓。おもな族は〔1〕信濃の滋野(しげの)姓増田氏、〔2〕清和源氏小笠原氏族、武蔵、紀伊、讃岐(さぬき)にもある。
増山(ますやま)
 ましやま。益山・升山・舛山等に通用。地名姓。曰(いわ)く姓。おもな族は下野(しもつけ)国下都賀郡高島村発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓小山氏族。この系は徳川3代将軍家光の室宝樹院おらくの局(つぼね)を出して栄える。
町田(まちだ)
 丁田・待田・町太・真知田・街田等に通用。地名姓。当て字姓。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国久慈郡町田邑(むら)発祥の桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、〔2〕清和源氏佐竹氏流、〔3〕島津氏族、〔4〕ほか武蔵、近江にも大族がある。
松井(まつい)
 待井・末井・松位・松居等に通用。古姓。地名姓。瑞祥姓。関西に多い。おもな族は〔1〕『続日本紀(しょくにほんぎ)』に松井連(むらじ)があり、〔2〕清和源氏為義(ためよし)流、〔3〕三河発祥の松井侯、〔4〕清和源氏石河氏族などがある。
松浦(まつうら)
 まつら。松裏・松良・末羅等に通用。古姓。地名姓。おもな族は〔1〕古代末羅国造(くにのみやつこ)の末、〔2〕肥前国松浦(まつら)郡発祥の嵯峨源氏渡辺氏族、ほか武蔵、遠江(とおとうみ)、岩代、磐城(いわき)の氏などがある。本項目は「松浦氏(まつらうじ)」で示してある。
松尾(まつお)
 まつのお。松生に通用。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕山城国葛野(かどの)郡松尾村松尾神社社家の氏、〔2〕河内国文徳源氏坂戸氏族、〔3〕桓武平氏柘植(つげ)氏族、〔4〕清和源氏武田氏族、ほか名族が多い。
松岡(まつおか)
 松丘・松岳等に通用。地名姓。古名族。諸国の同地名より興る。神官系が多い。〔1〕熱田神宮の祠官は松岡真人(まひと)の末、〔2〕鹿島神宮の大祝(おおはふり)は卜部(うらべ)姓、〔3〕桓武平氏畠山氏族、〔4〕荒木田姓、〔5〕赤松氏族、などがある。
松下(まつした)
 松ノ下に通用。瑞祥的地名姓。おもな族は〔1〕遠江(とおとうみ)国発祥の族は佐々木氏族、〔2〕三河の族も〔1〕と同じ、〔3〕利仁(としひと)流藤原姓、〔4〕大村氏族、ほか紀伊、信濃、会津などにもある。
松田(まつだ)
 松多・望田・茨田等に通用。田地名(田の区別)より興る。西日本に多い。おもな族は〔1〕相模国足柄上郡松田庄発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓波多野氏族、〔2〕清和源氏新田氏族、〔3〕三宅氏族、河野氏族、賀茂県主(あがたぬし)姓などがある。
松原(まつばら)
 まつはら。全国の地名を負う著名姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕伊勢外宮の祠官の度会(わたらい)氏族、〔2〕近江国犬上郡松原発祥の中原氏族、〔3〕武蔵の大族松原氏、〔4〕清和源氏南部氏族、ほかがある。
松村(まつむら)
 松邑・松邨・松茂良等に通用。諸国の松村より興る。約10万。おもな族は〔1〕清和源氏森氏族、〔2〕信濃の滋野(しげの)氏族、〔3〕大和の卜部(うらべ)姓松村氏、〔4〕三宅姓松村氏、ほかがある。
松本(まつもと)
 松元・枩本・満津元等に通用。地名姓。西日本に多い。約35万。〔1〕桓武平氏伊勢氏族、〔2〕近江国滋賀郡松本村発祥の族は佐々木氏流、ほか清和源氏伊那氏族、桓武平氏千葉氏族などがあり、異流も多く、史上に活躍した。
丸子(まりこ)
 まるこ・わにこ。椀子・鞠子・円子等に通用。古姓。地名姓。職業姓。和邇(わに)氏の子部(こべ)または鞠部(まりべ)の裔(えい)。諸国の「マリコ」地名を負うものが多い。おもな族は〔1〕大伴の族で丸子連(むらじ)の裔、〔2〕信濃国小県(ちいさがた)郡丸子邑(むら)発祥の清和源氏流、ほか異流が多い。
(まる)
 まり・わに。円・麻呂・満・鰐等に通用。職業姓。地名姓。和邇部(わにべ)の裔(えい)やその居住地、または職掌からくる。麻呂の名前から発生したものもある。〔1〕安房の丸氏は桓武平氏流、〔2〕大和の氏は和邇臣(おみ)の裔という。
丸山(まるやま)
 円山・完山等に通用。地形から出た地名姓。おもな族は〔1〕遠江(とおとうみ)国発祥の藤原姓勝間田氏族、〔2〕甲斐国巨摩(こま)郡上条丸山発祥の清和源氏加賀美氏族、〔3〕藤原南家工藤氏族などがある。
三浦(みうら)
 御浦・美浦・弥浦・見浦等に通用。地名姓。約12万。おもな族は相模国御浦郡発祥の桓武平氏三浦氏族。高望(たかもち)王―良文(よしぶみ)―義澄―義明と続き義明のとき三浦大介を名のる。頼朝の幕府創建に尽くす。のち、宝治合戦(1247)で北条氏にほとんど滅ぼされたが、支族が全国に広まった。ほかに異流もある。
三木(みき)
 みつぎ。三亀・三樹・三鬼・実木等に通用。もと祭祀(さいし)に関係のある語か。大姓。地名姓。〔1〕讃岐(さぬき)国三木郡の讃岐朝臣(あそん)姓の裔(えい)、〔2〕阿波国麻殖(おえ)郡三木村発祥の忌部(いんべ)姓、〔3〕三河国碧海(あおみ)郡三木村発祥の松平氏族などがある。
御厨(みくりや)
 三厨・御厨屋・御来屋等に通用。地名姓。全国の御厨(神宮の御領)からくる。著名なものは尾張国愛知郡の御厨郷。おもな族は〔1〕下総(しもうさ)国相馬郡の桓武平氏族、〔2〕肥前国松浦(まつら)郡の嵯峨源氏松浦党、ほかがある。
三島(みしま)
 三洲・美島・見島等に通用。地名姓。古名族。おもな族は〔1〕古姓三島の族、三島県主(あがたぬし)、三島耳(みみ)、三島公(きみ)、三島真人(まひと)など、〔2〕大三島神社の系、〔3〕伊豆三島大社系、ほか異流が多い。
水谷(みずたに)
 みずのや。水渓に通用。古姓。地名姓。おもな族は〔1〕磐城(いわき)国磐城郡水谷邑(むら)発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓、〔2〕清和源氏義家流、〔3〕清和源氏土岐氏流、ほか丹波、因幡(いなば)に名族がある。
水野(みずの)
 水之・水埜・水納・瑞野等に通用。地名姓。〔1〕尾張国春日井(かすがい)郡水野邑(むら)発祥の清和源氏浦野氏族、〔2〕藤原姓戸田氏族、ほか近江、甲斐、紀伊などにもある。
溝口(みぞくち)
 みぞのくち。水口・渠口等に通用。地名姓。諸国の溝口の地名を負う。おもな族は〔1〕筑後国下妻郡溝口邑(むら)発祥の少弐氏族、〔2〕尾張国海東郡溝口邑発祥の清和源氏武田氏族、ほか大族が多い。
三田(みた)
 さんだ。三太・三多・美田・御田等に通用。古姓。佳称姓。地名姓。多くは屯田からくる。おもな族は〔1〕三田首(おびと)、三田毘登(ひと)の裔(えい)、〔2〕摂津国有馬郡三田邑(むら)発祥の清和源氏流、〔3〕武蔵の御田郷発祥の大族三田氏、ほか全国に多い。
御手洗(みたらし)
 みたらい。御手先に通用。信仰姓。地名姓。神社の前を流れる御手洗川、または神社の御手洗からくる。多く神官が用いる。おもな族は甲斐国東八代郡発祥の藤原姓御手洗氏、ほかがある。
水口(みなぐち)
 みなくち・みずぐち。皆口・水名口・美名口等に通用。信仰姓。地名姓。全国に多い。おもな族は〔1〕上賀茂社の社家は賀茂県主(あがたぬし)の裔(えい)、〔2〕大和国城上(しきのかみ)郡水口神社発祥の物部(もののべ)氏族。ほか伊賀、甲斐などにもある。
(みなみ)
 三波・三並・美並・美浪等に通用。地名姓。方向指示から地名、姓氏へ。おもな族は〔1〕清和源氏小笠原氏族、〔2〕清和源氏南部氏族、〔3〕桓武平氏江戸氏族、ほかがある。
美濃部(みのべ)
 三野部・蓑部等に通用。地名姓。古姓。近江国甲賀郡美濃邑(むら)発祥の族は菅原姓。奥州美濃部氏は同族である。
壬生(みぶ)
 にぶ・にう。乳部・生部・丹生・壬部等に通用。地名姓。職業姓。古代の皇子養育に仕える職から、地名、姓氏に転じた。全国に多い。おもな族は〔1〕相模国造(くにのみやつこ)の後、壬生直(あたい)の裔(えい)、〔2〕上野(こうずけ)、下野(しもつけ)、武蔵の氏などがある。
(みや)
 三家・美耶・三谷等に通用。建造姓。もともと宮は神や貴人の居宅をさした。それより地名へ。異流が多い。おもな族は〔1〕古姓の宮首(おびと)や宮勝(すぐる)などの裔(えい)、〔2〕伊勢の豪族は桓武平氏流、〔3〕備後の名族は品治(ほんち)姓、ほかがある。
宮川(みやかわ)
 みやがわ。水谷川・三宅川・宮側等に通用。地名姓。宮川とは宮内を流れる川名で、姓氏には神家が多い。〔1〕阿蘇社の社家、〔2〕山城稲荷(いなり)社の社家、〔3〕周防(すおう)の多々良(たたら)姓宮川氏、〔4〕伊勢国鈴鹿郡宮川邑(むら)発祥の桓武平氏関氏族、ほか名流が多い。
三宅(みやけ)
 三家・三毛・宮宅・屯倉等に通用。古大姓。職業姓。地名姓。中国地方に多い。古代御料地の官衙(かんが)、倉庫等の管理者からくる。おもな族は〔1〕河内の三宅史(ふひと)、〔2〕三宅吉士(きし)、〔3〕武蔵の三宅連(むらじ)、ほか備前、和泉(いずみ)、播磨(はりま)など全国に広まる。
宮崎(みやざき)
 みやさき。宮前・宮埼・宮先等に通用。社の前の意。地名姓。おもな族は〔1〕紀伊国在田郡宮崎庄発祥の熊野別当族、〔2〕石清水祠官の族や日向(ひゅうが)国宮崎郡発祥の族はともに紀姓、ほか異流が多く、神家にも多い。
宮沢(みやざわ)
 三谷沢・宮灯等に通用。地名を負って諸国より発祥。おもな族は〔1〕信濃の豪族は桓武平氏塩田氏族、〔2〕甲斐国巨摩(こま)郡宮沢村発祥の清和源氏武田氏族、ほか、武蔵、会津などにもある。
宮地(みやじ)
 みやどころ。宮道・宮司・宮主等に通用。地名姓。宮のある所の意。おもな族は〔1〕池田郡宮道邑(むら)発祥の美濃の氏、〔2〕世羅郡東上原村宮地発祥の備後の族、〔3〕幡多(はた)郡宮路山発祥の土佐の族、ほか全国に多い。
宮下(みやした)
 みやのした。地名姓。社の下の意。宮本に近い概念である。おもな族は〔1〕岩代国大沼郡宮下村発祥の山内氏族。〔2〕桓武平氏大掾(だいじょう)氏流、〔3〕諏訪神族など、諸国の神社に近接して発生した。
宮田(みやた)
 京田・宮太等に通用。神社所有の田からくる。地名姓。全国に多い。おもな族は〔1〕清和源氏山名氏族、〔2〕有道姓児玉党、〔3〕桓武平氏三浦氏族、〔4〕伊勢神宮の神官の氏は中臣(なかとみ)姓、ほかがある。
宮本(みやもと)
 宮元・三家本等に通用。御社(みや)の「モト」という意。神社の麓一帯に地名が多い。姓はここより発祥し、全国に多出する。著名なものは〔1〕信濃国安曇(あずみ)郡宮本発祥の安曇氏族、穂高神社の旧社家、〔2〕美作(みまさか)国英多(あいた)郡讃甘(さなも)庄宮本村発祥の赤松氏族、宮本武蔵はこの系という。ほか三河、越後、常陸(ひたち)などに多い。
三善(みよし)
 三吉・三次・三好・美好等に通用。佳称姓。古大族。四国に多い。おもな族は〔1〕百済(くだら)族で錦織氏の後、〔2〕漢(あや)族の三善朝臣(あそん)の後、〔3〕算家の三好氏は〔2〕の系、〔4〕阿波の三好氏は同国三好郡発祥の清和源氏小笠原氏族、小笠原長清の後裔(こうえい)
三輪(みわ)
 神・三和・大神・美和・美輪・見和・箕輪等に通用。物象姓。神名姓。約10万。神代以来の大族、古名族。出雲の大物主命の裔(えい)。のち大和国磯城(しき)郡三輪山を本拠とした。同前同族で大三輪朝臣(あそん)の裔、三輪社神官の裔、ほかがある。全国に広まり、神官、豪族、武族として史上に活躍。
武者(むしゃ)
 武舎・武捨に通用。曰(いわ)く姓。職名姓。田氏のの意、または武者所の職名。おもな族は〔1〕清和源氏土屋氏族、〔2〕有道姓児玉党、〔3〕清和源氏佐竹氏流、ほかがある。
武者小路(むしゃのこうじ)
 地名姓。堂上家の称号。京都武者小路名から出る。おもな家に〔1〕藤原北家日野家流、〔2〕藤原北家閑院家流などがある。
武藤(むとう)
 たけふじ。六藤・武東・夢藤等に通用。地名姓。氏姓。(1)武者所の藤原氏を表す。(2)武蔵の藤原氏などから興る。大姓。東日本に多く、約10万。おもな族は〔1〕藤原北家成田氏族、〔2〕藤原南家相良(さがら)氏族、〔3〕秀郷(ひでさと)流藤原姓近藤氏族、ほか異流も多い。
宗像(むなかた)
 むねかた。宗形・宗方・宗片・棟方・胸形等に通用。古名族。大族。筑前国宗像郡発祥。宗像君の裔。出雲神族中の大族である。「ムナカタノ神」を祀(まつ)り、海洋漁労、神社奉仕、武族に分かれ、それぞれ栄える。
村井(むらい)
 村合・村居・邑井・邨井・邨居等に通用。村居が原意に近い。地名姓。おもな族は〔1〕肥後の菊池氏族、〔2〕佐々木氏族、ほか尾張、加賀、三河、因幡(いなば)、石見(いわみ)、備後など、地名を負う豪族が多い。
村上(むらかみ)
 村神・邑上・邨上等に通用。古名姓。地名姓。約13万。おもな族は〔1〕村上天皇の4親王より出る村上源氏、うち具平(ともひら)親王の裔(えい)がもっとも繁栄、〔2〕清和源氏満快(みつよし)流の族、〔3〕同前井上氏族、ほかがある。
村田(むらた)
 村多・村太・無量塔・邑田・邨田等に通用。古姓。地名姓。約10万。おもな族は〔1〕常陸(ひたち)国真壁郡村田庄発祥の藤原秀郷(ひでさと)流、〔2〕上野(こうずけ)国新田郡新田庄村田郷発祥の清和源氏足利氏族、ほか小笠原氏族、伊達(だて)氏族、海上(うなかみ)氏族などがある。
村山(むらやま)
 群山・邨山等に通用。古姓。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕武蔵七党の村山党、〔2〕菊池氏族、〔3〕藤原南家相良(さがら)氏族、〔4〕佐々木氏族、ほか異流が多い。
毛利(もうり)
 もり。母里・望理・森・毛里等に通用。地名姓。当て字姓。〔1〕相模国愛甲郡毛利庄より興る清和源氏義隆(よしたか)流、〔2〕同前郡発祥の大江姓毛利氏、中世以降に活躍。ほか全国に異流が多い。
望月(もちづき)
 三五夜・十五夜・十五月・餅月等に通用。著名姓。地名姓。中部地方に多い。おもな族は〔1〕信濃国佐久郡望月邑(むら)発祥の滋野(しげの)姓、〔2〕清和源氏武田氏族、ほか異流、名族が多い。
本橋(もとはし)
 元橋・本梯・元梯等に通用。曰(いわ)く姓。武蔵国豊島(としま)郡に多くみられる姓。約5万。藤原秀郷(ひでさと)流という。東日本に広まる。
百瀬(ももせ)
 桃瀬・百生等に通用。地名姓。水流の百百(どと)からくる。甲信地方に多くみられる姓。おもな族は清和源氏土岐氏族である。
桃原(ももはら)
 とうばる。当原に通用。古姓。地名姓。平坦地の意。沖縄に多い。〔1〕大和国高市郡桃原発祥の族は桃原連(むらじ)の裔(えい)、〔2〕沖縄の名族である。
(もり)
 最里・杜・母里・毛利・盛・茂利等に通用。地名姓。当て字姓。約35万。おもな族は〔1〕近江国愛智(えち)郡森発祥の佐々木氏族、〔2〕相模国愛甲郡森庄発祥の清和源氏義家流、〔3〕豊後(ぶんご)国玖珠(くす)郡森邑(むら)発祥の清原姓森氏などがある。
森田(もりた)
 森田・盛田・杜田・茂利田等に通用。諸国の森田の地名より興る。おもな族は〔1〕下野(しもつけ)国那須郡森田邑(むら)発祥の族は那須氏族、〔2〕筑後国竹野郡奴田(ぬた)村森田名発祥の菊池氏族、ほか佐々木氏族、藤原南家工藤氏族、武蔵の豪族森田氏などがある。
森本(もりもと)
 守本・杜本・森元・盛本・盛元等に通用。地名姓。著名姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕摂津国発祥の小野姓の氏、〔2〕村上源氏北畠氏流、〔3〕武田氏流、ほか異流が多い。
〔や行〕
八木(やぎ)
 陽疑・楊木・楊貴・養耆・楊枳・矢木等に通用。古姓。地名姓。おもな族は〔1〕八木宿禰(すくね)、八木造(みやつこ)の裔(えい)、〔2〕但馬(たじま)の日下部(くさかべ)姓の氏、〔3〕赤松氏族、〔4〕千葉氏族などがある。
矢沢(やざわ)
 八沢・屋沢・谷沢等に通用。地名姓。当て字姓。東日本に多い。おもな族は信濃国小県(ちいさがた)郡矢沢邑(むら)発祥の滋野(しげの)姓、ほか利仁(としひと)流藤原姓の会津族、下野(しもつけ)、越後の氏などがある。
安田(やすだ)
 保田・安多・保多・易田・泰田等に通用。田の佳称が多い。地名姓。約10万。おもな族は〔1〕甲斐国山梨郡安田邑(むら)発祥の清和源氏武田氏族、〔2〕越後国沼垂郡安田邑発祥の桓武平氏流、ほか異流が多い。
柳沢(やなぎさわ)
 やぎさわ。著名姓。地名姓。おもな族、〔1〕甲斐国北巨摩(きたこま)郡柳沢発祥の族は清和源氏武田氏族、江戸時代に柳沢吉保(よしやす)を出す、〔2〕紀州の氏は畠山氏族、ほかがある。
柳田(やなぎた)
 柳多・楊田に通用。地名姓。古姓。九州に多い。おもな族は〔1〕南九州の名族は伴(ばん)姓という、〔2〕雄勝郡柳田発祥の羽後の族、〔3〕武蔵、丹波、出雲などにもある。
矢野(やの)
 矢ノ・矢乃・矢埜・矢能・八野・屋野等に通用。地名姓。約13万。西日本に多い。〔1〕伊勢国一志郡矢野邑(むら)発祥の族は平姓、〔2〕同前国発祥の荒木田姓もある、〔3〕播磨(はりま)国赤穂郡矢野庄発祥の族は清和源氏山県(やまがた)氏族、〔4〕伊予の名族は越智姓である。
山内(やまうち)
 やまのうち・やまち。山ノ内・山之内・山野内に通用。地名姓。大族。諸国の同地名より興る。おもな族は〔1〕相模国鎌倉郡山内発祥の首藤(すどう)氏族、〔2〕藤原北家上杉氏族、〔3〕大神(おおみわ)氏族、〔4〕ほか首藤氏流の土佐の氏などがある。
山川(やまかわ)
 谷末河に通用。古姓。地名姓。著名姓。おもな族は〔1〕古く山川連(むらじ)、山河造(みやつこ)があり、〔2〕下総(しもうさ)国結城(ゆうき)郡山川邑(むら)発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓結城氏族、〔3〕石川郡富樫庄山川村発祥の加賀の族など、ほか異流が多い。
山口(やまぐち)
 山ノ口・山之口・山野口に通用。古名姓。地名姓。全国の山口(地名)より発祥。地名も姓もきわめて多い。古代、山口臣(おみ)は武内宿禰(たけしうちのすくね)の裔(えい)という。おもな族は〔1〕清和源氏三上氏族、〔2〕多々良(たたら)姓大内氏族、〔3〕桓武平氏村山党などがある。
山崎(やまざき)
 やまさき。山埼・山前・山先・山碕・山咲・山岬等に通用。諸国の「ヤマサキ」の地名を負う。おもな族は〔1〕山城国乙訓(おとくに)郡山埼郷より興る橘(たちばな)姓、〔2〕清和源氏佐々木氏族、〔3〕清和源氏武田氏族などがある。
山下(やました)
 やまのした。山志田に通用。古姓。地名姓。古く、山下造(みやつこ)・忍海(おしのうみ)山下連(むらじ)がある。おもな族は〔1〕清和源氏を称する三河の豪族、〔2〕三枝(さえぐさ)姓を称する甲斐の豪族、〔3〕信濃国筑摩(ちくま)郡山下村発祥の木曽氏族など、全国に異流が多い。
山田(やまだ)
 山太・矢俣・八俣に通用。古姓。地名姓。全国の山田の地名を負う。約55万。とくに東海地区に多い。古くは蘇我倉山田石川麻呂(そがのくらのやまだのいしかわのまろ)が著名。おもな族は〔1〕佐々木氏族、〔2〕清和源氏浦野氏族、〔3〕穂積氏流、ほか異流、名族が全国にわたる。
山中(やまなか)
 山仲に通用。諸国の山中地名より発祥。おもな族は〔1〕清和源氏小笠原氏族、〔2〕桓武平氏関氏族、〔3〕佐々木氏族、〔4〕赤松氏族などがある。
山本(やまもと)
 山元・山下・山元都・山茂都等に通用。古大姓。地名姓。約100万。多く地名を負う。西日本に多い。おもな族は〔1〕賀茂姓山本氏、〔2〕藤原姓加藤氏族、〔3〕荒木田姓山本氏、〔4〕度会(わたらい)姓山本氏など。神官が多いのは、かつて山霊守護の職にあったからという。後世、異流を輩出した。
結城(ゆうき)
 遊木・柚木・湧木・吉成等に通用。当て字姓。地名姓。中世の大族。おもな族は〔1〕下総(しもうさ)国結城郡発祥の秀郷(ひでさと)流藤原姓、鎌倉時代以後史上に活躍、〔2〕支封は讃岐(さぬき)、白河、陸奥(むつ)、出羽などにも及ぶ。
横田(よこた)
 与古田・与子田・与小田・横多等に通用。古姓。地名姓。諸国の横田より発祥。約13万。古姓には駿河発祥の横田臣(おみ)がある。おもな族は〔1〕下野(しもつけ)国河内郡横田邑(むら)発祥の宇都宮氏族、〔2〕近江国甲賀郡横田発祥の佐々木氏族、そのほか武田氏族、三浦氏族、首藤(すどう)氏族など異流も多い。
横山(よこやま)
 地名姓。諸国の横山より発祥。約15万。〔1〕武蔵国南多摩郡横山庄発祥の小野姓横山党。武蔵七党の中心勢力である。〔2〕宇多源氏佐々木氏族高島流、ほか武田氏族、菅原氏流、など異流も多い。
吉井(よしい)
 与志井・吉位・吉居・由井等に通用。佳称姓。地名姓。おもな族は〔1〕古名族、吉井連(むらじ)、吉井宿禰(すくね)などの末、〔2〕伊予国吉井郷発祥の菊池氏族、ほか筑前、安芸(あき)、備前等にもある。
吉岡(よしおか)
 佳岡・善岡・好岡・芳岡等に通用。地名姓。佳称姓。西日本に多い。おもな族は〔1〕佐渡国雑太(さわだ)郡吉岡邑(むら)発祥の本間氏族、〔2〕因幡(いなば)国高草郡吉岡邑発祥の赤松氏族、ほか丹波、備前、筑後などにもある。
吉川(よしかわ)
 きっかわ・よかわ。佳川・芳川・葭川・美川等に通用。地名姓。佳称姓。約10万。西日本に多い。おもな族は〔1〕大和国平群(へぐり)郡吉川郷発祥の橘(たちばな)姓吉川氏、〔2〕佐々木氏族、〔3〕藤原南家工藤氏族、ほか異流が多い。
吉沢(よしざわ)
 善沢・由沢・芳沢・葭沢等に通用。葭沢から佳字に転じた。地名姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕桓武平氏北条氏族、〔2〕甲斐国巨摩(こま)郡の名族、〔3〕武蔵国橘樹(たちばな)郡の族、ほかがある。
吉田(よしだ)
 きちだ。佳田・吉多・善田・好田・美田・芳田等に通用。地名姓。古名族。田の佳称から地名に転じた。葭田が原意。西日本に多く、約50万。〔1〕春日(かすが)氏族吉田連(むらじ)の裔(えい)、〔2〕藤原北家勧修寺(かじゅうじ)流、〔3〕卜部兼煕(うらべかねひろ)を祖とする卜部姓、〔4〕佐々木氏族など異流が多い。
吉武(よしたけ)
 吉竹に通用。佳称姓。地名姓。加賀の名族は能美郡吉武村発祥。また近江国高島郡にも名族がある。源氏という。
吉富(よしとみ)
 好富・芳富等に通用。佳字姓。地名姓。おもな族は〔1〕近江国高島郡吉富荘の近江族、〔2〕豊前(ぶぜん)国上毛(かみつけ)郡吉富邑(むら)発祥の宇都宮氏族などである。
吉成(よしなり)
 佳称姓。関東に多く、約1万。〔1〕奥州田村郡の豪族は坂上姓。〔2〕常陸(ひたち)、下野(しもつけ)の族は結城(ゆうき)氏族という。結城の「偏」を除いて吉成姓を造成したともいう。
吉野(よしの)
 よしぬ・えしぬ。吉埜・吉能・好野・義野・芳野等に通用。地名姓。佳称姓。大姓。東日本に多い。おもな族は〔1〕古く吉野首(おびと)、吉野連(むらじ)などの裔(えい)、〔2〕吉野蔵王堂金峰山(きんぷせん)権現を奉戴(ほうたい)する吉野衆徒、〔3〕小野姓武蔵族、〔4〕成田氏族、〔5〕佐藤氏族、ほか異流が多い。
吉村(よしむら)
 佳村・吉屯・吉邑・好村・芳村等に通用。古姓。佳称姓。地名姓。約13万。おもな族は〔1〕大和国葛下(かつらぎしも)郡発祥の曽根連(むらじ)の氏、〔2〕武蔵国横見郡の氏、〔3〕信濃国下伊那郡の族などがある。
吉原(よしわら)
 よしはら。善原・好原・芳原等に通用。地名姓。佳称姓。古姓。おもな族は〔1〕紀伊の吉原宿禰(すくね)、〔2〕備後国世羅郡吉原村発祥の藤原姓吉原氏、大友氏族、ほか諸国にきわめて多い。
米山(よねやま)
 こめやま・べいざん。地名姓。おもな族は〔1〕伊勢平氏の流れをくむ桓武平氏流、〔2〕宇多源氏佐々木氏流、〔3〕伊那の名族、信濃の米山氏、ほか諸国に多い。
〔わ行〕
若林(わかばやし)
 地名姓。東日本に多く、約6万。おもな族は〔1〕三河国碧海(あおみ)郡若林村発祥の松平氏族、〔2〕摂津国兎原(うはら)郡篠原村の村上源氏赤松氏族、〔3〕武蔵の大族は武蔵七党日奉(ひまつり)西党、ほか丹波、伯耆(ほうき)、安芸(あき)などにもある。
若松(わかまつ)
 稚松・矮松等に通用。佳称姓。地名姓。おもな族は〔1〕武蔵七党の一、児玉党の族、〔2〕桓武平氏岩城氏族、〔3〕島津氏族、ほか異流が多い。
和田(わだ)
 わた・にぎた。丸田・倭田・和多・和太・輪田等に通用。地名姓。職業姓。「ワタ」姓あわせて約23万。「ワタ」は(1)丸形の田、(2)「アマ」(海部)族の名称、(3)良田などの原意がある。古大姓。後世楠木(くすのき)氏を出した河内の和田氏は橘(たちばな)姓である。ほか中臣(なかとみ)姓、物部(もののべ)姓、佐々木氏族、土岐氏族、北条氏族などがあり、異流も多い。
渡辺(わたなべ)
 わたべ。渡部・渡鍋・綿奈辺・渡多辺・和田鍋等に通用。地名姓。古名族。約100万の大族。嵯峨(さが)天皇より出る。いわゆる嵯峨源氏。摂津国西成郡渡辺が発祥の地。源融(とおる)をはじめ「綱、久、正、好」などの一字名を多用。史上大いに活躍した。
綿貫(わたぬき)
 四月一日・四月朔日・渡貫・更衣等に通用。当て字姓。曰(いわ)く姓。地名姓。おもな族は〔1〕上野(こうずけ)国群馬郡綿貫より興り、藤原姓、〔2〕武蔵国久良岐(くらき)郡戸部村発祥の三浦氏族、ほか桓武平氏千葉氏族、肥後の清和源氏族などがある。
渡部(わたべ)
 わたなべ・わたりべ。渡辺・和多辺・和田部・綿辺・綿部等に通用。西日本に多く、約10万。地名姓。職業姓。〔1〕古代の渡船を職とする品部。〔2〕地名姓の嵯峨(さが)源氏渡辺に同じ。
綿谷(わたや)
 わたたに。綿家・綿屋・綿舎・綿矢等に通用。職業姓。屋号姓。曰(いわ)く姓。多く綿屋の職業からくる。西日本に多く、約6000。職業、屋号以外でも、なんらかの曰くがあって称した例もある。
以上のほか、本事典には次の姓氏が、本項目として収録されている。〈朝倉氏(あさくらうじ) 蘆名(あしな)氏 阿蘇(あそ)氏 姉小路(あねがこうじ)氏 尼子(あまご)氏 漢(あや)氏 荒木田(あらきだ)氏 有栖川宮(ありすがわのみや) 在原(ありわら)氏 井伊(いい)氏 飯尾(いいお)氏 伊勢(いせ)氏 石上(いそのかみ)氏 伊奈(いな)氏 今川(いまがわ)氏 岩城(いわき)氏 斎部(いんべ)氏 宇喜多(うきた)氏 浦上(うらがみ)氏 卜部(うらべ)氏 江戸(えど)氏 塩冶(えんや)氏 大江(おおえ)氏 大崎(おおさき)氏 大館(おおだち)氏 大村(おおむら)氏 息長(おきなが)氏 奥平(おくだいら)氏 小山(おやま)氏 花山院家(かざんいんけ) 勧修寺(かじゅうじ)家 梶原(かじわら)氏 春日(かすが)氏 葛城(かずらき)氏 桂宮(かつらのみや) 賀茂(かも)氏 蒲生(がもう)氏 閑院宮(かんいんのみや) 紀(き)氏 木曽(きそ)氏 北畠(きたばたけ)氏 吉川(きっかわ)氏 吉備(きび)氏 京(きょう)家 京極(きょうごく)氏 清原(きよはら)氏 吉良(きら)氏 九鬼(くき)氏 九条(くじょう)家 忽那(くつな)氏 来島(くるしま)氏 源氏(げんじ) 鴻池(こうのいけ)家 五条(ごじょう)氏 巨勢(こせ)氏 近衛(このえ)家 小早川(こばやかわ)氏 西園寺(さいおんじ)家 坂上(さかのうえ)氏 相良(さがら)氏 式(しき)家 四条(しじょう)家 渋川(しぶかわ)氏 尚(しょう)氏 少弐(しょうに)氏 白川(しらかわ)家 住友(すみとも)家 千家(せんげ)氏 蘇我(そが)氏 高倉(たかくら)家 高階(たかしな)氏 鷹司(たかつかさ)家 建部(たけべ)氏 多治比(たじひ)氏 田安(たやす)家 丹波(たんば)氏 千種(ちぐさ)氏 秩父(ちちぶ)氏 長宗我部(ちょうそがべ)氏 津軽(つがる)氏 土御門(つちみかど)家 津守(つもり)氏 洞院(とういん)家 藤堂(とうどう)氏 徳川(とくがわ)氏 中臣(なかとみ)氏 中院(なかのいん)家 中原(なかはら)氏 中御門(なかみかど)家 名越(なごし)家 鍋島(なべしま)氏 名和(なわ)氏 仁木(にき)氏 蜷川(にながわ)氏 禰寝(ねじめ)氏 畠山(はたけやま)氏 蜂須賀(はちすか)氏 一橋(ひとつばし)家 日野(ひの)家 伏見宮(ふしみのみや)家 平氏(へいし) 平群(へぐり)氏 保科(ほしな)氏 松平(まつだいら)氏 三井(みつい)家 最上(もがみ)氏 物部(もののべ)氏 桃井(もものい)氏 山科(やましな)家 山名(やまな)氏 湯浅(ゆあさ)氏 遊佐(ゆさ)氏 吉見(よしみ)氏 龍造寺(りゅうぞうじ)氏 林(りん)家 留守(るす)氏 六角(ろっかく)氏 和気(わけ)氏〉

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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