日本大百科全書(ニッポニカ)「姓名判断」の解説
姓名判断
せいめいはんだん
姓名によってその人の運勢を判断する方法。その起源は、陰陽五行説を踏まえた中国漢代の相字法にある。日本ではこの影響を受けて花押(かおう)、自署などの書体による判断が行われていたが、中世以降、易の理論、陰陽五行の諸種の法則を駆使した姓名字画相が行われるようになった。今日でも開運の手段として、しばしば改名が行われるのは、姓名が人の運命に支配的な意味をもつと根強く信じられているからである。姓名判断の基準としては次の5種があげられる。(1)字義の吉凶。(2)字画数の組合せ。(3)字画数の奇数・偶数の組合せ。(4)字音の組合せ。(5)字画の運数。
(1)字義の吉凶とは「姓名の意義とその読み下(くだ)し」ということである。たとえば「吉田茂」とは吉(よ)い田が繁茂するという意味で、名声が大いにあがる。「吉田松陰」は吉(よ)い田が松の陰にある、というので、日光の恵みに浴することができず、志なかばにして挫折(ざせつ)する運命を暗示。こうして意義と読み下しは姓名の骨子として、その善悪は一生を支配するとされている。
(2)字画数の組合せとは「天地の配置」ということ。姓の頭字を天、名の頭字を地とするが、たとえば、この天地の画数が同一ならば天地同数といって一代の英雄格とする。しかし一般人には不向きで、吉凶両端を示す、というようにみるのである。
(3)字画数の奇数・偶数の組合せとは「陰陽の配置」ということ。これは姓名の画数の奇数を陽、偶数を陰とし、その配合の吉凶をみる。この良否は人の肉体の変化、また両親・妻子など家庭運を支配するとされる。この場合、とくに忌み嫌われるのは全陰・全陽で、病気、災厄にあいやすいとされる。
(4)字音の組合せとは「五気の構成」である。姓名はその字音によって、木火土金水の五気に還元されるが、この五気の組合せによって吉凶を判断する。カキクケコは牙(が)音で木の性、タチツテト・ナニヌネノ・ラリルレロは舌音で火の性、アイウエオ・ヤイユエヨ・ワヰウヱヲは喉(こう)音に属し土の性、サシスセソは歯音に属し金の性、ハヒフヘホ・マミムメモは唇音に属し水の性である。以下はその15の組合せにおける判断例である。
水=火 勇気と活動力があるが、粗暴。
金=火 熱心、勇気、活動、剛直である。
水=木 温厚で才略あり。活動力に欠ける。
金=水 才能、才略、活動力に富む。疑心がある。
木=火 理性に富むが、疑心深く短気。
火=土 温厚で慈善心あり。活動力を欠く。
土=木 温厚で慈愛に富む。
土=金 温厚で活動力少。怜悧(れいり)である。
土=水 愛嬌(あいきょう)があり沈着。意地の悪いところもある。
金=木 正直、義侠(ぎきょう)心、活動力に富む。
火=火 剛気で不屈。気性が粗い。
水=水 外面沈着。内心に疑心、嫉妬(しっと)あり。
木=木 剛気才略。内心つねに穏やかならず。
土=土 外面沈着。疑心気弱で消極的。
金=金 外面温厚。内面は正直、闘争心がある。
(5)字画の運数とは「姓名の字画の数の吉凶」ということ。つまり姓名の文字を数に還元して吉凶を判断する。
以上の5要素をもとに姓名の吉凶をみるのであるが、次にその一例を示す。
字画数を図のように、天格(姓の画数の合数)、人格(姓の下字と名の上字の合数)、地格(名の合数)、総格(姓名の総合数)とする。天格は祖先伝来の運命数、人格は中年以降のその人の主運、地格は成人するまでの運をつかさどり、総格は一生を通しての全体的な運を示すものとする。姓の上の字と、名の下字をあわせたものが外格であるが、外格は人格の主運に対して補運ともいうべきものであり、その人の環境を示す。
さて「大隈重信(おおくましげのぶ)」の姓名であるが、この画数の示すところによれば、少年期は公明正大で正義感が強く、敵をつくりやすい。中年期以後は、何事も自分の意志どおりに行動して他人の意見をいれない独立独歩の運。晩年および全体では、他に施し恵むところから頭領として尊敬を受ける運、ということになる。五気の配合は土木、金火となるが、これは温厚、慈愛、勇気、剛直を示して吉、また陰陽の配置も健康暗示で吉、というように判断される。
[吉野裕子]