改訂新版 世界大百科事典 「婦人矯風会」の意味・わかりやすい解説
婦人矯風会 (ふじんきょうふうかい)
1893年に発足したキリスト教婦人の団体。正式名称は日本基督教婦人矯風会。世界の平和,純潔,酒害防止を三大目標とし,婦人保護事業,社会教育活動も行っている。前身は矢島楫子(かじこ)を会頭とする東京婦人矯風会(1886創立)で,海外醜業婦取締・一夫一婦制の建白,〈集会及政社法〉反対などに活躍した。日本基督教婦人矯風会として全国組織を確立してからは,遊廓再興反対など廃娼運動に精力的に取り組み,大正期には日本基督教婦人参政権協会を発足させ,婦人参政権運動にも力を注いだ。また,矢島会頭が21年に渡米しワシントン軍縮会議に日本女性1万名の平和請願書を提出するなど,平和運動にも貢献した。第2次大戦後は,全面講和を願う婦人平和運動や原水爆禁止運動,母親運動にも参加。人権擁護の立場からは売春防止法制定運動,〈トルコ〉ぶろ追放運動,観光買春反対運動などを展開,スウェーデンの性教育テキストの紹介・出版など純潔教育にも努力している。さらに,アルコール中毒対策事業や青少年の禁酒・禁煙運動など酒害防止活動に尽力するとともに,政教分離の立場から靖国神社国営化問題にもかかわるなど,その活動は幅広い。
執筆者:千野 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報