家庭医学館 「子宮内胎児発育遅延」の解説
しきゅうないたいじはついくちえん【子宮内胎児発育遅延 Intrauterine Growth Retardation】
子宮内での発育がかんばしくなく、胎児発育曲線上で、10%以下の出生体重の赤ちゃんを子宮内胎児発育遅延と定義されます。これがおこる頻度は全出生の5%前後で、胎児仮死(たいじかし)(「胎児仮死」)になりやすく、周産期死亡率が高い病気です。胎児死亡全体の約3割を占めます。
妊娠20週以前に発育遅延がおこると、胎児の身長と体重の発育がさまたげられ、胎児の体型から対称型発育遅延(たいしょうがたはついくちえん)といわれます。妊娠28週以後におこった場合は、頭部の発育は保たれますが、四肢(しし)(手足)や体幹(たいかん)(胴体(どうたい))の発育がさまたげられ、非対称型発育遅延(ひたいしょうがたはついくちえん)と呼ばれます。実際には、その中間型のものもかなりあります。
原因としては低重量胎盤(ていじゅうりょうたいばん)、臍帯異常(さいたいいじょう)、先天性感染、多胎妊娠(たたいにんしん)(「多胎妊娠とは」)、重症の妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)(「妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)」)、重症の糖尿病(「糖尿病」)、麻薬などの薬物常習などがあげられますが、原因が不明なものも少なくありません。超音波断層法で胎児のからだを計測し、基準値と比較するのがもっとも正確な検査法です。
[治療]
お母さんは左側を下にして横になり安静を保ちます。また、病院に入院して、胎児の栄養を補うためのブドウ糖の点滴をしたり、それに子宮収縮抑制剤を併用したりします。
この治療は、非対称型発育遅延には効果がありますが、対称型発育遅延には大きな効果はあまり期待できないとされています。
●日常生活の注意と予防
子宮内胎児発育遅延に対する予防法はとくにありません。日常生活の注意では、過度の運動などを避けます。
この病気は、胎児が小さいだけという認識が一般的で、問題の重要性(病的意味)が理解されにくい傾向が強いので、医師からの説明を十分に受け、なるべく入院して詳しく検査し、治療するよう努力しましょう。