妊娠そのものが原因となって妊娠中の母体におこる疾患で、従来、早期(前期)妊娠中毒症と晩期(後期)妊娠中毒症とを併称していたが、近年は早期妊娠中毒症を妊娠悪阻(おそ)とよび、単に妊娠中毒症といえば晩期妊娠中毒症をさすようになった。
妊娠中毒症は妊娠後半期、とくに最後の3か月(妊娠第28週以降)に発生する症候群である。すなわち、浮腫(ふしゅ)(むくみ)、タンパク尿、高血圧の3症状を主症状とし、けいれん、昏睡(こんすい)、胎盤早期剥離(はくり)、肺水腫などを伴うことのある症候群である。妊婦の7~10%に発生し、妊娠合併症としてはもっとも多い。重症例は近年減少してきたものの妊産婦死亡率が高く、日本の死因別妊産婦死亡では産科出血とともに現在でも首位を占めている。また流産や早産をおこしやすく、未熟児出生率も高い。これは早産によるものばかりでなく、満期分娩(ぶんべん)をしても低出生体重児や生活力がとくに薄弱な児の生まれることが多く、周産期死亡の一因となっている。
妊娠中毒症の病型は、腎(じん)炎や高血圧症など中毒症の主症状を呈する既往症のない初産婦や、前回の妊娠で中毒症や既往症のなかった妊婦にみられる純粋妊娠中毒症と、再発あるいは既往症に併発した混合妊娠中毒症とに大別され、さらにそれぞれ軽症と重症に細分される。また、主症状以外の特殊な症状を伴う子癇(しかん)、肺水腫、正常位胎盤早期剥離(子宮胎盤溢血(いっけつ))などは特殊妊娠中毒症とよばれ、さらに分娩後1か月以上にわたって主症状などを遺残したものを妊娠中毒症後遺症とよぶ。
多くは適切な指導で予防でき、たとえ発症しても早期に発見し治療を行い、できるだけ最小限の障害で食い止めるようにする。妊娠中は定期的に検診を受け、そのつど全身状態の観察をはじめ、血圧測定、検尿、体重測定を行う。また、日常の家事、運動、休養、睡眠に対し適切な指導を受け、過労に陥らないよう努める。栄養についても、妊娠後期には食塩や水分の制限が予防上重要である。本態性高血圧症や前回妊娠中毒症などの発症素因によって妊娠中毒症の発症を予知し、早期発見に努め、重症化を防止することが管理上重要である。
治療としては、安静と睡眠、食事療法、薬物療法が主体で、重症例や胎児の発育障害のある場合には分娩の時期や娩出方法、中絶の適応などが検討される。
[新井正夫]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
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