学校環境(読み)がっこうかんきょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「学校環境」の意味・わかりやすい解説

学校環境
がっこうかんきょう

学校教育に影響を及ぼす、学校内外の諸条件。学校環境には、学校内部における子どもの学習・生活をとりまく環境と、学校をとりまく外部環境の二つの側面があると考えられる。

 学校内部における子どもの学習・生活をとりまく環境には、学級教職員、学校の施設・設備などがある。これらは、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)拡大を背景に、大きな変化を迎えている。

 学級に関しては、2021年(令和3)の「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の改正により、公立小学校における1学級の児童数の標準が、40人(第1学年は35人)から35人へと引き下げられた。教職員に関しては、公立小学校の学級規模縮小や高学年への教科担任制の導入推進などによる定数改善が図られてきた。一方、臨時的任用教員等の確保ができず学校へ配置する教師の数に欠員が生じる「教師不足」が、全国的な問題となっている。学校の施設・設備に関しては、2020年以降、児童・生徒向けの「1人1台端末」と校内における高速大容量の通信ネットワーク環境が急速に整備されてきた。

 このような学校内部における環境の変化は、子どもの学習・生活に少なからず影響を与えている。そのため、学校内部の環境が子どもの学習・生活に好ましい影響を与えているかを考えていくことが重要である。

 他方、学校をとりまく外部環境として、家庭、地域、そして社会全体があげられる。家庭に関しては、核家族化や共働き世帯の増加、家族の個別化が進行している。地域に関しては、学校教育の重要な連携相手である町内会・自治会や子ども会といった地縁組織への加入率が1990年代以降急速に低下している。

 その背景には、経済のグローバル化やIT化、サービス産業の進展とその高度化など、社会全体の変化に伴う人々の生活様式や価値観の多様化がある。さらに、少子高齢化人口減少は、家族の生活や地縁組織が成り立つ基盤をも揺るがしている。

 家庭や地域における大人と子どものかかわりを通した意図的・無意図的な教育作用の低下や、いじめ・不登校学級崩壊などの「学校病理現象」は、こうした学校の外部環境の変化を背景として生じている教育問題だと考えられる。これに対し、2010年代後半以降、コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的な実施が推進され、学校運営協議会や地域学校協働本部の設置・整備が急速に進んでいる。これらの仕組みを通じた学校・家庭・地域の連携・協働が、上記のような教育問題の改善・克服にどのように寄与しうるのかが注目される。

[木下豪・浜田博文 2023年4月20日]

『長倉泰彦・高橋均著『学校環境論』教育学大全集15(1982・第一法規出版)』『堀井啓幸著『現代学校教育入門――「教育環境」を問いなおす視点』第2版(2003・教育出版)』『新井郁男著『教育経営の理論と実際』(2016・教育出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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