16世紀に中世のスコラ主義ならびに形式化した人文主義に対抗しておこり、17世紀に主張された事実・経験・実践などを重視する近世教育思想上の立場。とくに、当時の自然科学、ならびに経験論の影響を受けている。実学主義にあたる語はrealismである。
[小笠原道雄]
ルネサンスの人文主義はその末流に至って古典語学習が中心となり、それに対する反動として、まず(1)人文的実学主義humanistic realismがおこった。その主張は初期ルネサンスの有する特色の再現で、ギリシア語、ラテン語およびその文学を教科とする点では形式化した人文主義と同様であるが、古典的知識を重んじ、それを社会的な現実の生活に役だてようとした。フランスの人文学者フランソア・ラブレー、イギリスの詩人ミルトンが代表者である。
次の(2)社会的実学主義social realismはさらに現実的傾向を強め、社会生活に基礎を置いて生きた事物の観察や社交から直接生活上の教訓を得ようとするものである。この派はラブレーの門下のフランスの哲学者モンテーニュらに代表される。
そして(1)、(2)の実学主義によって、教育上もっとも重要な(3)感覚的実学主義sense realismが展開する。17世紀の自然科学とイギリスの哲学者ベーコンの方法論の影響を受けて、自然科学的知識と実生活の結合を意図し、とくに、感覚が知識の門戸であるという、感覚による学習を強調するとともに、教育の方法は自然の法則に従うべきであるとした。国語をはじめ、自然・社会の両面にわたる実科を教育の教科に加えると同時に、百科全書的にあらゆる知識を与えようともした。感覚を強調する背景に神秘的な根本体験と実践を尊重する敬虔(けいけん)主義がある。ドイツの教授法学者ラトケ(ラティキウス)Wolfgang Ratke(Raticius)(1571―1635)やボヘミアの教育学者コメニウス(1592―1670)が代表者であり、その後、敬虔主義の指導者、ドイツの教育者フランケAugst Hermann Franke(1663―1727)の門弟であるヘッカーJohann Julius Hecker(1707―68)によって、1747年ベルリンに経済数学実科学校が創設された。
このように感覚的実学主義は、主として新しい教育機関の創設を促し、他方、思想的には、20世紀のデューイなどのプラグマティズムに発展する。
[小笠原道雄]
『篠原助市著『欧州教育思想史』上下(1950・玉川大学出版部)』
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