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麻織物 あさおりものhemp cloth

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

麻織物
あさおりもの
hemp cloth

麻糸でつくった織物。人類の歴史で古くから使われ,エジプトのピラミッドでも発見されている。亜麻織物,苧麻織物,黄麻織物などに区分されるが,大別して亜麻織物,苧麻織物は衣料用,黄麻織物は産業用である。亜麻織物,苧麻織物は衣料として夏物の和服地,洋服地,シャツ地などに使われ,小千谷縮 (おじやちぢみ) などは高級和服地として有名。またテーブルクロス,ハンカチ,洋服芯地などにも用いられる。黄麻織物は帆布や麻袋などに使われることが多い。麻織物は硬質繊維なので皺になりやすく,これが衣料用としての欠点となっており,合成繊維織物などに取って代られているが,麻と合成繊維と交織した織物は夏物としてすぐれているところから,需要がある。

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デジタル大辞泉の解説

あさ‐おりもの【麻織物】

麻糸で織った織物。服地のほか、蚊帳帆布などにも用いられる。

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百科事典マイペディアの解説

麻織物【あさおりもの】

アサ(麻)類の繊維からつくった麻糸を原料とした織物の総称。日本では,木綿の普及する近世まで一般衣料として用いられた。アマ(亜麻)が衣料として最も一般的でリネンと称し,夏服,シャツ,ハンカチーフなどにする。
→関連項目織物織物工業奈良晒

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世界大百科事典 第2版の解説

あさおりもの【麻織物】

天然の植物繊維である麻を使った織物。麻の種類や幹,茎,葉など採取する部分の相違によって種類,製法もきわめて多く,性能,用途も異なる。おもなものに亜麻(フラックス。織ったものをリネンと呼ぶ),苧麻(ちよま)(ラミーカラムシともいう),大麻(ヘンプ),黄麻(ジュート,つなそともいう),マニラ麻サイザル麻などがある。麻類はそれぞれ相違はあるが,多くは繊維細胞が集まって繊維束を形づくっており,繊維束の繊維素以外に表皮や,木質部,ゴム質ペクチン質などを含有しているので,より細かく分繊して糸にし織物にするのが良く,ロープ,紐類などは繊維束をそのまま撚り合わせて使用する。

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大辞林 第三版の解説

あさおりもの【麻織物】

麻糸で織った織物。夏の衣服・蚊帳かや・帆布などに用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

麻織物
あさおりもの

アサは、アマ(亜麻、リネン)、タイマ(大麻)、チョマ(苧麻、一名カラムシ。変種はラミー)、コウマ(黄麻、ジュート)などの総称で、これらの草皮繊維を紡いで織ったものを麻織物という。日本では麻布または布ともいい、フジ、コウゾなどの樹皮繊維からなる織物を含めてさすことがある。もとタイマ、チョマが主要な繊維で、明治以後アマ、コウマが移入され、繊維の種類は豊富となった。
 これらの繊維は、準長繊維として比較的長く績(う)みやすいので、原始時代から衣料として使われた。前近代の紡績法は、夏にアサ畑から引き抜き、水に浸してから乾燥して繊維分離をよくし、麻打ちしたのち爪先で細く繊維を裂き、麻尾と麻頭を撚(よ)りつないで連続した状態とし、麻笥(おけ)に垂らし収めた。麻笥の大きさは作業量の目安ともなり、一反の総糸量とも関係していた。最後に平たい円盤に穴をあけ、棒をつけた紡錘(つむ)で撚りをかけ、糸とした。弥生(やよい)期の遺跡から、土、木、骨製の紡錘車が出土し、この時期からの紡績始原を示している。中世には撚りかけを省略することもあったが、近世には木綿に使う糸車を麻紡績にも使い、生産能率を向上させたが、上質糸では撚りをかけず、そのまま織物としたので、光沢に富み柔軟性に富んでいた。製織は弥生時代には原始機(げんしばた)によったが、のち地機が使われ、一部の地域では高機(たかばた)にかわった所もある。
 世界的にみても麻織物の出現は、ほかの織物に比べて早く、エジプトでは紀元前5000年ごろの亜麻布の断片がファイユーム遺跡で発見されているし、スイス湖上住居跡は多量の麻織物を出土したことで有名である。日本では、縄文晩期の千葉県菅生(すごう)遺跡からタイマの種子が出土し、繊維植物の存在が推測され、弥生時代になると、チョマの織物片が山口県綾羅木(あやらぎ)遺跡などから出土し、また各地出土の土器底部に布目が痕跡(こんせき)として残っている。古墳時代では古墳出土の金属製品に付着するものがあるが、品質は粗悪なものと良質なものとに分けられ、適当な用途にあてられていたのがわかる。奈良時代になると、絹織物の発達により麻布は庶民の衣料として一般化した。税として調庸(ちょうよう)の麻布が各地から貢納されたが、そのうち東国(関東地方)が特産地で、上総(かずさ)細布、常陸(ひたち)曝布(さらしぬの)などが著名であった。正倉院にはこの時期の調庸布が残されているが、多くはチョマで各種の品質にわたり、彩色、摺文(すりもん)などが施されている。この調庸制が衰退すると、栽培適地で麻布生産が続けられた。
 中世では、信濃(しなの)国(長野県)、越後(えちご)国(新潟県)が知られ、越後青苧座(あおざ)、布座(ぬのざ)などの独占業者まで出現した。近世では、三草の一つとして尊重され、宇治晒(うじさらし)、奈良晒、越後上布(じょうふ)、近江(おうみ)高宮布(たかみやふ)、近江蚊帳(かや)など各地に特産品が生まれた。武家の裃(かみしも)は麻が正装であるため、一定の需要が保たれ品質も向上した。とくに越後上布は糸が細く薄地で、しごいて天保銭(てんぽうせん)の穴に通るほど薄地で上質な品までつくられた。雪晒は繊維が損傷せず幾回もさらせるため、現在も続けられ雪国の風物とさえなっている。明治中期以後は木綿に圧倒されて、アサの栽培面積は急激に減少したが、最近では特性をいかした加工処理が考案され、わずかに生産が続けられている。
 近代麻紡織は、麻繊維の種類により硬軟があるため、繊維により煮沸、浸漬(しんせき)などの前処理をし、繊維を採線にしたのち、長い繊維については、そのままの長線を用いるライン紡績、または適当な長さに切断し短繊維にしたものを用いるトウ紡績の2系統により紡績される。さらに、繊維を紡績しやすくするため湯浸(とうしん)する潤紡が加えられることがある。製織は力織機(りきしょっき)が一般化したが、繊維の特性に応じた装置が加えられている。
 麻織物の組織は平織が多く、綾(あや)、朱子(しゅす)組織はわずかしかみられない。用途からみると、衣料の分野には少なく、むしろ強度、耐水性のあることから資材用として使われた。それに合繊の発達が麻の特性に近いものを生み出し、麻織物利用の減少に拍車をかけた。しかしポリエステルとの混紡、交織により最適の生地を生み、また麻の欠点であるしわになりやすいことを防ぐため、樹脂加工が施され、品質の改良が行われている。染色加工は、麻繊維は染料との親和力が小さいため染色が困難なので、白生地のものがもっとも多く、一部に絣(かすり)などの糸染めがあるが、捺染(なっせん)するものはきわめて少ない。漂白は軽くカルキ(さらし粉)漂白を行うが、繊維が冒されやすいので、天日晒しもいまだに使われている。
 生地は、水分の吸収性に富み、発散が早く、さらさらした肌触りが珍重されるので、夏の着尺地(きじゃくじ)に適し、越後上布(小千谷縮(おぢやちぢみ))、薩摩(さつま)上布、能登(のと)上布、八重山(やえやま)上布などが知られている。広幅物ではシャツ地に使用されることが多いが、ほとんどが合繊混紡となり、伝統的な用途にテーブルクロス、ナプキン、ハンカチーフ、洋服芯地(しんじ)などがある。厚地のものは、帆布(はんぷ)類、雨覆い、ホースなどに使われ、そのうち黄麻織物は、品質のうえからおもに包装材料に用いられる。[角山幸洋]

民俗

わが国の衣料の原料として一般庶民の間に広く使われていたのは麻であった。上流社会では絹も使われていたが、絹は、布質からいっても労働をする者の衣料としては使えるものではなかった。木綿がわが国に入ってきた時期については諸説があるが、江戸初期と思われ、それからだんだん各地に普及していくわけであるが、それまでわが国の大部分の人は麻織物を着ていたわけで、とくに木綿の栽培ができない東北地方の寒冷地の人々は、明治期まで麻布を用いていた。したがってこの地方では、イトというのは麻糸のことで、木綿糸はカナといい、麻布をヌノとかノノなどとよぶ。麻衣きればなつかし紀の国の妹背(いもせ)の山に麻まく吾妹(わぎも) (『万葉集』巻7)という歌にもうかがわれるように、麻を畑にまいて家族の着物のためにせっせと働いている妻を、麻衣を着るたびに思い浮かべている夫の歌である。
 麻畑はもっぱら主婦の管理にゆだねられ、麻の引き抜き、乾燥、それを蒸すか茹(ゆ)でるかして水にさらし、繊維を取り出すまでの作業はすべて女の手仕事となっていた。さらにこの繊維を細く裂いて糸に績(う)むことは、おおかた夜なべ仕事であった。家の女たちは、主婦からいくばくかの麻が割り当てられ、それを績み、機(はた)にかけられるような糸に仕上げたが、根気のいる退屈な仕事であった。手まり唄(うた)にある「十三で機を織りそめ……」という文句も、事実であったろう。東北地方では呉服屋のことをモメンヤとよんでいたが、この地方ではモメンがいかに貴重品であり、平常着はヌノといわれる麻織物であったということを物語っている。[丸山久子]

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