鏡背に家屋の文様を鋳出した4世紀の仿製(ぼうせい)鏡。径22.7センチメートル、重さ1190グラムの凸面の円鏡。奈良県北葛城(きたかつらぎ)郡河合(かわい)町大字佐味田(さみだ)字貝吹の宝塚古墳から出土。中央に鈕(ちゅう)、円座、円圏、方格を配し、その外側に4種の家屋、半円方形帯、鋸歯文(きょしもん)帯、画文帯と続き、複線波文帯を挟む鋸歯文帯、平縁で終わる。家屋は、階上の欄干(らんかん)に梯子(はしご)をかけ、屋外に桟敷(さじき)を設けて蓋(きぬがさ)を差しかけた高床(たかゆか)(または2階建て)建築、平家の家屋、竪穴(たてあな)住居を思わせる屋根、倉庫を思わせる高床建築の4棟。前三者は入母屋(いりもや)造、残りは切妻(きりづま)造。棟に鳥らしきもの、建物の間に樹木、蓋がみえる。これらの文様は、中国、日本の鏡に類例がなく、家形埴輪(はにわ)、銅鐸(どうたく)の絵画とともに、原史時代の建築を知る重要な資料である。
[笠野 毅]
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…古墳時代の仿製鏡は,弥生時代の仿製鏡との関連は不明であるが,その製作は4,5世紀,中国鏡の模倣から始まる。ほぼ同時に中国鏡の図像文様を換骨奪胎したものや,直弧文鏡や家屋文鏡あるいは狩猟文鏡のように独自の図像文様をもつものも登場する。その一つの特色は,径30cm以上といった超大型鏡が径数cmの小型鏡とともにあることである。…
…中国鏡の多くは三角縁神獣鏡であり,その多くは他古墳に同笵鏡(どうはんきよう)が見いだされている。また仿製鏡のうちに,鏡背に4種の家屋を鋳出した家屋文鏡があり,4世紀代日本の家屋構造を知る貴重な資料を提供した。古墳の年代は4世紀後葉にあたる。…
…したがって,復元された竪穴住居の上屋はいずれも推定によるものである。遺跡以外の上屋の復原資料も少なく,外観を示すものとして奈良県佐味田宝塚古墳出土の〈家屋文鏡〉と呼ばれる銅鏡の背面彫刻と,奈良県東大寺山古墳出土の鉄刀環頭柄頭の彫刻だけしかない。関野克は中国地方の製鉄場として伝承される高殿(たたら)の構造が,竪穴住居の平面や外観と合致しているところから,高殿の形式を参考にして登呂遺跡の住居を復元した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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