日本大百科全書(ニッポニカ) 「家庭常備薬」の意味・わかりやすい解説
家庭常備薬
かていじょうびやく
常備しておくと便利な家庭薬で、医師の診察なしに用いられる売薬をいう。家庭薬の歴史は医師の誕生以前から存在したことが考えられるが、家庭常備薬的なものとしては富山の薬売りなどで知られる配置家庭薬がもっぱらその役割を果たしてきた。第二次世界大戦中に各家庭で用意された救急箱が、今日の家庭常備薬の普及に大いに役だっている。
常備しておく薬品類は、家族構成、年齢、各人の健康状態、医療機関の遠近などによって種類や量が定められる。多種多様にそろえてもむだになりがちで、かかりつけの医師または保健師、薬局の薬剤師に相談して必要最小限のものにし、定期的に点検して使用期限の切れたものや古くなったものは、外観上の変化がなくても捨てて新しく交換する。一般的な例としては、鎮痛薬(解熱鎮痛薬)、健胃薬、整腸薬、下剤、浣腸(かんちょう)薬、軟膏(なんこう)類(外傷用、やけど用、虫さされ、かゆみ止めなど)、皮膚消毒薬(オキシドール、マーキュロクロムまたはアクリノール、消毒用アルコール)、そのほか薬品ではないが、脱脂綿、ガーゼ、包帯、三角巾(さんかくきん)、滅菌ガーゼ付き救急絆創膏(ばんそうこう)、体温計、冷温両用マジックパックなどがあるとよい。これらは一括して救急箱等に入れておく。乳幼児のいる家庭では、とくに保管、管理に十分注意する。
なお、家庭常備薬の使用は、医師にかかるまでの応急的処置が原則で、経過をみて医師の診察を仰ぐことが必要である。
[山根信子]
『築田多吉著『家庭における実際的看護の秘訣』増補新訂版(1988・研数広文館)』▽『日野恵司著『現代くすり百科――人間薬理学』(1989・医学通信社)』▽『ミクス編・刊『私の選んだ常備薬――臨床医の薬箱』(1999)』▽『西崎統著『薬局で買う薬がわかる本』各年版(成美堂出版)』