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寄生虫病の最近の動向 きせいちゅうびょうのさいきんのどうこう

家庭医学館の解説

きせいちゅうびょうのさいきんのどうこう【寄生虫病の最近の動向】

◎海外旅行とペットに注意が必要
 日本では寄生虫病が減少したと思われ、一般的に軽視される傾向がみられますが、実はこれまであまりみられなかった寄生虫病の症例がしばしばみられるようになっているのです(表「おもな寄生虫の寄生部位と症状および感染経路」)。
 これは、海外旅行ブーム、訪日外国人の増加、流通機構の迅速化などによって輸入寄生虫病が増えたこと、ペットブームによって人畜(じんちく)共通感染症が増えたこと、グルメブームによる食習慣の変化に加えて、新しい診断法の発達によって、今までみられなかった寄生虫病が見つかるようになったことなどがその背景にあります。
 たとえば、海外旅行者、とくに熱帯地域を旅行してきた人たちが流行地で感染し、帰国後に発症するマラリアやアメーバ赤痢(せきり)、住血吸虫症(じゅうけつきゅうちゅうしょう)の患者さんが増えています。輸入されたドジョウを生(なま)で食べたために感染する顎口虫症(がくこうちゅうしょう)や、ホタルイカを生で食べて感染する旋尾線虫症(せんびせんちゅうしょう)の症例も全国的にみられるようになっています。
 また、ペットが原因で感染するトキソプラズマ症、イヌやネコが公園の砂場に排泄(はいせつ)した糞便(ふんべん)に混入している虫卵(ちゅうらん)から感染するイヌ・ネコ回虫症(かいちゅうしょう)なども問題となっています。
 さらに、生魚から感染するアニサキス症や裂頭条虫症(れっとうじょうちゅうしょう)、野菜サラダから感染する肝蛭症(かんてつしょう)など、これまであまり知られていなかった寄生虫病が、内視鏡や超音波などの理学診断法や血清(けっせい)診断法の発達によって、たくさん見出されるようになってきました。
 そのほか、移植手術などで免疫抑制薬(めんえきよくせいやく)を使ったときやエイズにかかったときにみられ、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)をおこすニューモシスチス・カリニ肺炎(「ニューモシスチス・カリニ肺炎(カリニ肺炎)」)、激しい下痢の原因となるクリプトスポリジウム症、糞線虫症(ふんせんちゅうしょう)の重症化なども最近問題となっています。
 従来から知られている寄生虫病のなかでは、蟯虫症(ぎょうちゅうしょう)、横川吸虫症(よこがわきゅうちゅうしょう)、ランブル鞭毛虫症(べんもうちゅうしょう)、トリコモナス腟炎(ちつえん)(「腟トリコモナス症(トリコモナス腟炎)」)などが現在もなお発生頻度が高く、肺吸虫症(はいきゅうちゅうしょう)なども南日本で集団的にみられることがあります。
 とくに、ここ数年の自然食ブームによって無農薬野菜に人気が集まり、自家菜園の野菜が有機栽培(ゆうきさいばい)されることが多くなったために、回虫の感染者が増える傾向にあります。
 寄生虫病は感染症の1つで、手遅れになると重症化して生命にかかわるものもなかにはあります。感染しているとわかったらすぐに治療しなければなりません。
 寄生虫病の治療薬の進歩は著しく、副作用が少ない駆虫剤(くちゅうざい)が使われるようになっています。ほとんどの寄生虫病は、早く診断して的確に治療をすれば治ります。
 外国旅行をするときには、行き先の国や地域にどのような感染症が多いかをあらかじめよく調べ、どのような食物に注意すべきかなど、寄生虫病に対する知識を十分に得ておくこともたいせつです。
 日常生活においても、部屋の清掃、手洗いの励行などを習慣づけておくことが寄生虫病の予防につながります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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