寒食(読み)カンショク

デジタル大辞泉 「寒食」の意味・読み・例文・類語

かん‐しょく【寒食】

古代中国で、冬至から105日目に、火気を用いないで冷たい食事をしたこと。そのころは風雨が激しいので火災予防のためとも、また、一度火を断って新しい火で春を促すためともいう。 春》「―や壺の底なるししびしほ/虚子

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精選版 日本国語大辞典 「寒食」の意味・読み・例文・類語

かん‐しょく【寒食】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古く、中国で、冬至から一〇五日目は風雨の烈しい日として、火断ちをして煮たきしないで物を食べた風習。また、その日。かんじき。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「寒食節、周旧制、禁火余風猶未廃」(出典経国集(827)一一・奉和鞦韆篇〈滋野貞主〉)
    2. [その他の文献]〔後漢書‐周挙伝〕
  3. はなはだしく貧乏な状態。
    1. [初出の実例]「遺族の方が、寒食にさらされようといふ瀬戸際でござんせう?」(出典:見知らぬ人(1936)〈真船豊〉三)

かん‐ぐい‥ぐひ【寒食】

  1. 〘 名詞 〙 寒中に鹿(しか)、猪(いのしし)などの肉を食べること。薬食い。《 季語・冬 》

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普及版 字通 「寒食」の読み・字形・画数・意味

【寒食】かんしよく

火断ち。〔楚歳時記〕(冬至)を去ること一百五日、ち疾風甚雨り。之れをと謂ふ。火を禁ずること三日(たう)(あめ)と大麥の粥をる。

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改訂新版 世界大百科事典 「寒食」の意味・わかりやすい解説

寒食 (かんしょく)
hán shí

中国において,火の使用を禁じたため,あらかじめ用意した冷たい物を食べる風習。〈かんじき〉とも読む。冬至後105日目を寒食節と呼び,前後2日もしくは3日間,寒食した。この寒食禁火の風習は古来,介子推(かいしすい)の伝説(晋の文公の功臣。その焼死をいたんで,一日,火の使用を禁じた)と結びつけられるが,起源は,(1)古代の改火儀礼(新しい火の陽火で春の陽気を招く),(2)火災防止(暴風雨の多い季節がら)などが考えられている。漢代,山西省太原付近の一地方習俗にすぎなかったが,六朝末には,南方まで伝わり,唐・宋時代,全国的な行事となった。冷たい物ばかり食べるので,麦芽などで作った餳(あめ)や餳湯(あめゆ)などが好まれた。明・清以後,廃止されたのは,その苦しさによる。ただし廃止以降も,寒食節は清明節(107日目)の同義語として用いられた。これは,清明節が寒食節の後に直接接続するためであり,行事や遊びもほとんど重なっていたからである。
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世界大百科事典(旧版)内の寒食の言及

【寒食】より

…〈かんじき〉とも読む。冬至後105日目を寒食節と呼び,前後2日もしくは3日間,寒食した。この寒食禁火の風習は古来,介子推(かいしすい)の伝説(晋の文公の功臣。…

【清明】より

…唐代以降,郊外に出かけて酒宴を開く,いわゆる踏青(とうせい)の行事が盛んになったのも,新鮮な緑へのあこがれのためである。清明節は,禁火のために冷食する寒食節の後に直接連続する祝日であり,早朝になると,人々は一斉に新しい火を起こした。これを新火と呼ぶ。…

※「寒食」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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