中国北西部の自治区。南半を甘粛(かんしゅく/カンスー)省、北半を内モンゴル自治区、東の一部を陝西(せんせい/シャンシー)省と接する。1958年、中国で第四の自治区として成立した。このときに回(かい/フイ)族の多い固原(こげん/クーユワン)地区を甘粛省より併入し、また69年内モンゴル自治区よりアルシャ左旗などを併入し、面積は17万平方キロメートルに達した。しかし、79年アルシャ左旗などはふたたび内モンゴル自治区に帰属し、面積は6万6000平方キロメートル、人口554万3214(2000)という中国でもっとも小規模な一級行政区となった。人口のうち約30%を回族が占め、その他若干の満洲族、モンゴル族が居住する以外は漢族である。
[秋山元秀]
南部は六盤(りくばん/リウパン)山脈の北東に広がる黄土(こうど/ホワントゥー)高原をなし、北部では黄河を中心に広大な沖積平野(銀川(ぎんせん/インチョワン)平原)が形成される。西境には賀蘭(がらん/ホーラン)山脈がそびえ、その西にはテンゲル砂漠が広がる。気候は全体に大陸的性格が強いが、南部は比較的降水量も多く植生に恵まれているのに対し、北部は高温で降水量も少ないため乾燥度が高く、自然の植生は乏しい。年平均気温では南部が5~7℃であるのに対し、北部では8℃を超える。また年降水量は南部では400~600ミリメートルあるが、北部では200ミリメートル前後になる。
[秋山元秀]
寧夏は関中(かんちゅう/コワンチョン)の辺縁にあたり、黄河と賀蘭山は古くから西北の異民族の侵入に対する防衛の最前線であり、万里の長城もここで黄河を渡る。秦(しん)・漢以来、漢民族の勢力が強いときは郡県が維持されたが、弱いときには逆に異民族の侵入拠点となった。11~13世紀にかけてはチベット系のタングート人がここを中心に西夏王朝を建てた。西夏はモンゴルに滅ぼされ、明(みん)・清(しん)には陝西省や甘粛省の一部として寧夏衛、寧夏鎮などの軍事行政区が置かれた。中華民国になり1928年寧夏省が建てられ、54年いったん省は撤廃されたが、58年回族自治区として再生した。回族はもともと中央アジアより東方へ移住してきたイスラム教徒であるが、いまの寧夏にもすでに明代から未開地の開拓に入植する者が多かった。とくに清末、西北での回族の反乱が鎮圧されたのち、強制的に辺地へ移住させられ、それがのちに自治区を形成する核となった。回族は全国に分布するが、回族全体の17%以上が寧夏に居住する。
[秋山元秀]
銀川平原は「塞上(さいじょう)の江南」とよばれ、秦・漢時代より秦渠(しんきょ)、漢渠(かんきょ)、唐徠渠(とうらいきょ)、恵農渠(けいのうきょ)などの灌漑(かんがい)水路が設けられて農業が発達し、西北地区の重要な農業基地であった。現在播種(はしゅ)面積の33%で春小麦、19%で水稲がつくられ、両者の二毛作も行われている。そのほかではキビ、大豆などが栽培されている。ただし灌漑区では耕地の塩化が大きな問題である。これに対し南部はもともと遊牧を主とする地域であって、しだいに開墾が進み乾燥農業を主体とする農業に移行してきたが、同時に水土流失による耕地の破壊が問題になっている。このほか賀蘭山脈や六盤山脈は森林資源が豊富であるが、未開発の部分が多い。また甘草(かんぞう)、枸杞(くこ)などの薬草の栽培も盛んである。天然資源としては石嘴山(せきしざん/シーツォイシャン)、平羅(へいら/ピンルオ)など賀蘭山脈北部に炭鉱が多いが、全体として工業開発は遅れている。
[秋山元秀]
自治区は政府所在地の銀川と石嘴山、呉中(ごちゅう/ウーチョン)の三つの地区級市と固原の1地区に分かれ、銀川が2県、石嘴山が3県、呉中が2市4県を管轄下に置き、固原地区には6県が所属している。市、県の大部分は黄河に沿う平野部に分布し、人口にして約60%を占める。多くの都市は軍事施設に起源をもち、黄河の水運を利用して羊毛など西北地区の特産品の交易により発達したものである。1958年それらの都市を結ぶように包蘭(ほうらん)鉄道(包頭(パオトウ)―蘭州(らんしゅう/ランチョウ))、95年には宝中(ほうちゅう)鉄道(宝鶏(ほうけい/パオチー)―中衛(ちゅうえい/チョンウェイ))が開通した。また、支線が鉱工業基地へ延びている。黄河の水運もまだ利用されている。
[秋山元秀]
中国、寧夏回族自治区の政府所在地である銀川(ぎんせん)の旧称。
[編集部]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
「インチョワン(銀川)特別市」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…中国北部,寧夏回族自治区の主都。人口35万7000(1990)。…
…中国北部,寧夏回族自治区の主都。人口35万7000(1990)。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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