寿狂言(読み)コトブキキョウゲン

デジタル大辞泉 「寿狂言」の意味・読み・例文・類語

ことぶき‐きょうげん〔‐キヤウゲン〕【寿狂言】

歌舞伎で、中村市村森田江戸三座に創建当初から伝承された儀礼的狂言。その座の記念特別興行などに上演された。家狂言

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精選版 日本国語大辞典 「寿狂言」の意味・読み・例文・類語

ことぶき‐きょうげん‥キャウゲン【寿狂言】

  1. 〘 名詞 〙 歌舞伎で、江戸三座の創立当初から伝来する記念狂言。寿興行の折に上演した。中村座の「猿若」「新発意太鼓(しんぼちだいこ)」「釣狐」「門松」、市村座の「海道下り」、森田座の「仏舎利」などをいう。
    1. [初出の実例]「豪家へ寿狂言御見物を願ふしるしと袴羽折にて摺物を配りければ」(出典:三座家狂言并由緒書(1819))

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改訂新版 世界大百科事典 「寿狂言」の意味・わかりやすい解説

寿狂言 (ことぶききょうげん)

江戸の劇場の中村座市村座,森田座(守田座)に伝承された祝言儀礼的狂言のこと。家狂言ともいう。江戸時代の歌舞伎の興行権は,幕府が座元(太夫元)個人に与えた特権であった。江戸三座の座元は世襲であったので,その権威も特に大きく,各座では,由緒正しい家を誇り格式を重んじて,家の狂言を制定し記念劇として上演した。それが寿狂言で,中村座の《猿若》《新発意太鼓(しんぽちたいこ)》《門松》,市村座の《海道下り》,森田座の《仏舎利》などがある。これらは寿興行と称する特別の記念興行の際に独占上演され,家の芸として座元の役者によって古式にのっとり演じられた。中村座の寿興行の場合,1624年(寛永1)甲子の創立を記念して甲子の年ごとに催された。そのときには由来を述べる口上や相伝の拝領品を舞台で披露することもあって,座元の権威づけの効果をあげている。市村座の百年,百五十年祭,森田座の百五十年祭などもある。
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