産業構造が急速に変化し,経済社会のグローバル化が進む中,今後の成長分野において高度な実践力と豊かな創造力を有する専門職業人材を養成するため,2017年(平成29)の学校教育法改正により設けられた新たな大学の一類型。2014年7月の教育再生実行会議の第5次提言に端を発し,文部科学省有識者会議の検討を経て,16年5月の中央教育審議会答申において制度設計の方向性等が示された。この問題のもともとの背景には,専修学校の1条校(学校教育法1条に定める学校)化を求める議論があった。
2017年改正法の規定によれば,大学のうち,専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させること等を目的とするものが専門職大学とされる(83条の2)。卒業に必要な単位のおおむね3~4割以上を長期の企業内実習等の実習に充てるとともに,教員として実務家を積極的に任用(必要専任教員数のおおむね4割以上)することなどが想定されている。教育課程の開発・編成等や認証評価の体制整備に当たっては,産業界との連携が求められる。また,課程が前期・後期に区分され,前期修了後に働いてから後期に戻ることなどができるほか,実務経験を通じて一定の能力を修得した者は修業年限が一部短縮されるなど,社会人が学びやすい仕組みが整備された。財政面では,公的支援が予定される一方,民間資金の活用が期待されている。卒業者には,学位として「学士(専門職)(日本)」が授与される予定である。なお,2017年の法改正では,短期大学のうち,専門職業人の養成を目的とする機関として「専門職短期大学(日本)」も創設された。
2019年度の開学が予定されており,既存の専門学校(専門課程を置く専修学校)からの移行や大学・短大の一部の学部・学科の転換等が見込まれているが,要件を満たす専任教員や産業界の協力の確保,今後の卒業生の就職状況等,課題や未知数の部分も残されている。
著者: 寺倉憲一
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
特定職種の実務に必要な知識・技能の教育を目的とした日本の職業大学。大学と短期大学がある。学校教育法を改正し、同法第83条の2に基づき、2019年度(平成31)から制度化された。研究者ではなく、専門性の高い実務家の養成がねらいで、ICT、農業・食品、観光、ファッション、アニメーション、美容、芸術・文化、福祉・保健、リハビリテーション、動物看護などを学ぶ大学がある。急速な技術革新や産業構造の変化に伴い、民間企業などと連携し、社会で即戦力となる質の高い職業人の育成を担う。日本で新たな制度の大学ができたのは、短大が創設された1964年(昭和39)以来55年ぶりである。全国に専門職大学は15、専門職短大は3ある(2021年度開設予定を含む)。
標準的な卒業年限は専門職大学が4年(前期・後期課程の区分も可)、専門職短大は2年または3年。卒業するには大学で124単位、短大で62単位の取得が必要で、卒業すれば「学士(専門職)」、「短期大学士(専門職)」の学位を得られる。教員の4割以上を、実務経験が豊富な実務家とし、理論に精通した研究者教員らとともに、原則40人以下の少人数授業を実施。リハビリ専門職大学で地域防災学を、ファッション専門職大学では情報工学を教えるなど、実践的な専門性を深めるとともに、創造的で応用力のある人材を育てる。必要単位の約3分の1以上は実習・実技授業とし、企業や療養所などでの学外実習は大学(4年間)の場合で600時間以上、短大(2年制)で300時間以上となる。一般の大学・短大が専門職学部・学科を設けることも可能。専門高校の卒業者に学士取得の機会を与えるほか、社会人の学び直しの場を提供するねらいもある。教育の質を保証するため、文部科学大臣より認証を受けた認証評価団体から評価を受けることを義務づけられている。
[矢野 武 2021年2月17日]
(2017-3-14)
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