導引(読み)ドウイン(その他表記)dǎo yǐn

デジタル大辞泉 「導引」の意味・読み・例文・類語

どう‐いん〔ダウ‐〕【導引】

導くこと。案内すること。
按摩あんま。もみ療治。
道家より出た漢方の体操療法。新しい空気を体内に導き入れる深呼吸と自己按摩の体操法とを併用した一種長寿法

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精選版 日本国語大辞典 「導引」の意味・読み・例文・類語

どう‐いんダウ‥【導引】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 導くこと。道案内。
    1. [初出の実例]「釈奠〈略〉賛引五人〈弾正一人・観者二人・学生二人、並掌導引事〉」(出典延喜式(927)二〇)
    2. [その他の文献]〔南史‐梁本紀上・高祖〕
  3. 道家で行なう一種の養生法。大気を体内に引き入れ、これにより心をしずめ欲を制する長生法。
    1. [初出の実例]「飛液秘不死之飡、道引伝長生之術」(出典:本朝文粋(1060頃)三・神仙春澄善縄〉)
    2. [その他の文献]〔荘子‐刻意〕
  4. もみ療治をすること。また、その者。按摩。
    1. [初出の実例]「導引(ダウイン)鍼医手先を借」(出典:浄瑠璃源平布引滝(1749)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「導引」の意味・わかりやすい解説

導引 (どういん)
dǎo yǐn

中国の古代から伝わる健康体操。元来古代の神仙家が用いていた不老長生のための養生法の一つで,のちに医家も治療法として按摩とともに採用した。導引がいつごろ始まったか明らかでないが,戦国時代(前5~前3世紀)には,すでにかなり広く行われていたらしい。前漢時代(前206-後8)初期の著作《淮南子(えなんじ)》には,〈呼吸によって古い気を吐き新しい気を入れながら,熊のように歩き,鳥のように体を伸ばし,鳧(あひる)のように浴び,猿のように足早やに進み,鴟(ふくろう)のように視つめ,虎のようにふりむく〉と,具体的な身体の動かし方が記されている。1973年末,湖南省長沙市の馬王堆3号漢墓から,導引の具体的な演法を44型以上も図解した帛書はくしよ)が出土し,これによって秦代から漢代初めの導引の実際が明らかになった。くだって後漢時代(25-220)の末ごろ,医者として名高い華佗(かだ)は,当時盛んに行われていた導引を,虎,鹿,熊,猿,鳥の5種の型にまとめて五禽戯と称した。これよりのち,五禽戯は,さまざまな変化が加えられながら,今日まで伝えられている。なお,導引は,日本にも平安時代に伝来して貴族の間で行われていたが,江戸時代になると民間にも普及し,長崎の鉄斎老婆のように一家を成したものもいる。しかし,明治時代以後は,ほとんど忘れられてしまった。
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普及版 字通 「導引」の読み・字形・画数・意味

【導引】どう(だう)いん

導く。また、道家の養生法。〔慧琳音義、十八〕そ人自らし、自ら捏(ひね)り、手足を伸縮し、勞を除き煩を去るを、名づけて引と爲す。

字通「導」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「導引」の意味・わかりやすい解説

導引
どういん

古代中国の道家から出た養生,治療法。一種の深呼吸法で,関節の屈伸や摩擦法などを行い,禅と結びついて静坐を重視した。日本ではあん摩と混同された。慶安1 (1648) 年に林正旦が著わした『導引体要』は,あん摩の復興をはかったもの。

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世界大百科事典(旧版)内の導引の言及

【カメ(亀)】より

…その三千歳の亀を火にあぶり突きくだいて服用すれば,人間も千歳の寿命を得ると《抱朴子(ほうぼくし)》佚文(いつぶん)にいう。亀が長寿であるのは導引など特殊な呼吸法を用いるからだとされる。亀が行う導引のことはすでに《史記》に見えるが,後漢末の雑記集《異聞記》には次のような物語が見える。…

※「導引」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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