日本大百科全書(ニッポニカ) 「小児悪性新生物」の意味・わかりやすい解説
小児悪性新生物
しょうにあくせいしんせいぶつ
いわゆる小児癌(がん)に相当するもので、悪性新生物とは死因統計に使われる用語であり、悪性腫瘍(しゅよう)(癌と肉腫)および白血病をさす。小児の悪性新生物は一般に成人に比べてまれではあるが、最近、感染症が減少してきたので、小児の死因の上位を占めるようになった。
小児の悪性新生物のなかでは白血病と小児脳腫瘍の発生がもっとも多く、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、網膜芽細胞腫がこれに次ぎ、あとはまれである。好発年齢は乳幼児期であり、加齢とともに減少する。組織学的にみると、成人とは逆に肉腫が多くて癌腫は少ない。また胎児期の組織から発生したと考えられるものが多く、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍がその例である。
白血病以外の小児の悪性新生物は、大部分が腫瘤(しゅりゅう)をつくる。したがって、異常な腫瘤を発見したら医師に相談すべきである。一般に早期発見するのはしばしば困難で、転移するのが早く、治療としては手術ばかりでなく、放射線療法や化学療法が必要になる。感受性は成人よりも高いものが多い。
注目すべき症状は、食欲がない、やせてくる、元気がない、顔色が悪いなどの全身症状のほかに、原因不明の発熱、偶然触れた腫瘤などが発見の手掛りとなる。神経芽細胞腫は尿検査でも早期発見できるので、乳児期にスクリーニングテストとして実施することがある。
なお、詳しい説明は各疾患の項目を参照されたい。
[山口規容子]