山手樹一郎(読み)やまてきいちろう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「山手樹一郎」の意味・わかりやすい解説

山手樹一郎
やまてきいちろう
(1899―1978)

小説家。栃木県生まれ。本名井口長次。明治中学卒業後、博文館入社、少年雑誌『譚海(たんかい)』の編集に従い、寄稿家の若き山本周五郎らと親交を結んだ。1933年(昭和8)『一年余日』が『サンデー毎日』の大衆文芸賞の佳作入選。39年に退社長谷川伸(はせがわしん)門下に入って創作活動に専念した。代表作は、野間文芸奨励賞を受けた『崋山(かざん)と長英』(1943~44)のほか、『桃太郎侍』(1940~41)、『夢介(ゆめすけ)千両みやげ』(1947~49)など。第二次世界大戦後の貸本屋全盛のころには、作中人物の明朗性と勧善懲悪特色とする時代ユーモア小説は、もっとも多くの読者によって愛読された。

磯貝勝太郎

『『山手樹一郎時代小説全集』82巻・別巻2(1979~80・春陽堂書店)』

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百科事典マイペディア 「山手樹一郎」の意味・わかりやすい解説

山手樹一郎【やまてきいちろう】

小説家。本名井口長次。栃木県生れ。明治中学卒。博文館大衆誌の編集に携わりながら,井口朝二の筆名で小説を発表。初の新聞連載《桃太郎侍》(1929年―1930年)が人気を博す。《獄中記》《檻送(かんそう)記》《蟄居(ちっきょ)記》の3部作で野間文芸奨励賞受賞。これらは《崋山と長英》(1945年)としてまとめられる。他に《夢介千両みやげ》《又四郎行状記》などの時代小説がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「山手樹一郎」の解説

山手樹一郎 やまて-きいちろう

1899-1978 昭和時代の小説家。
明治32年2月11日生まれ。博文館に入社,「譚海(たんかい)」編集長。昭和14年退社して長谷川伸に師事,新聞小説「桃太郎侍」が好評を博す。山手調とよばれる型をきずき,戦後の貸本屋の人気作家となった。昭和53年3月16日死去。79歳。栃木県出身。明治中学卒。本名は井口長次。著作はほかに「崋山(かざん)と長英」「夢介千両みやげ」など。

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