岡目八目(読み)おかめはちもく

ことわざを知る辞典 「岡目八目」の解説

岡目八目

当事者よりもはたで見ている者のほうが物事真相得失がよくわかり、的確な判断ができることのたとえ。

[使用例] 「だって岡目八目って云うじゃありませんか。はたにいるあなたには、あたしより余計公平に分る筈だわ」「じゃ継子さんは岡目八目で生涯の運命をきめてしまう気なの」「そうじゃないけれども、参考にゃなるでしょう。ことに延子さんを信用しているあたしには」[夏目漱石明暗|1916]

[使用例] 「今、彼女を見ていて、彼女が苦しんでいるとは思わないかい。君の方が、ぼくより、ずっとよく判っているとは思うけど、おか八目ということもあるだろう」[柴田翔*贈る言葉|1966]

[解説] このことわざは、江戸初期の俳諧の参考書「づくし」に囲碁の用語として収録されており、囲碁から出た表現です。「岡」は、「岡惚れ」「岡焼き」などと同様に、直接かかわりのない立場を示し、「岡目」は傍観する者で、「傍目」と書くこともあります。つまり、囲碁の対局者が熱くなって思わぬミスをすることがあるのに対し、はたで観戦している者のほうがむしろ冷静に大局的判断ができることを意味していました。その後、囲碁以外のことについても、第三者のほうが的確な判断ができるという意味で比喩的に使われるようになったものです。
 対局者よりも観戦者のほうが八手先まで見通せるとする解釈がありますが、「もく」は囲碁の(囲んだ面積)の単位なので、八目ほども得をする冷静な判断がくだせる意と解すべきでしょう。

英語〕Lookers-on see most of the game.(はたで見ている者にはゲーム大勢がよく見える)

中国〕当局者迷、傍観者清(当事者は迷い、傍観者ははっきりわかる)

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四字熟語を知る辞典 「岡目八目」の解説

岡目八目

局外者のほうが、真相や利害得失がはっきりわかることのたとえ。

[使用例] あたしが幸福なのは、ほかに何にも意味はないのよ。ただ自分の眼で自分の夫を択ぶ事ができたからよ。岡目八目でお嫁に行かなかったからよ[夏目漱石*明暗|1916]

[使用例] 岡目八目ということがあるからね、外部の者というか、横から見ている素人に思わぬ発見があるものだよ[松本清張*風の息|1974]

[使用例] 君の方が、ぼくより、ずっとよく判っているとは思うけど、傍目八目ということもあるだろう。ぼくから見ると、彼女は、ある種の窮屈さにひどく苦しんでいると見えるんだよ[柴田翔*贈る言葉|1966]

[解説] 囲碁から出たことばです。現在対局している当事者よりも、傍らで見物している人のほうがよく展開が見える、という意味です。
 文章を書く場合にも、こういうことがあります。筆者の見過ごしたミスを、ざっと読んだ第三者が発見することがあります。これも「岡目八目」です。
 「岡目」とは、傍らで見る目のこと。「傍目」とも書きます。「おか」には、小山・傍らの意味があり、同語源なので、どちらの漢字を書いてもかまいません。
 では「八目」とは? 諸説ありますが、以下のように考えるのが妥当です。
 囲碁の世界では「ワタリ八もく」とか、「大ザル九目」とかいうように、「この手は、何目分有利になる」という意味のことわざがあります。ここで「目」とは、碁盤の目を数えることばです。
 「岡目八目」の「八目」も、同じように考えられます。つまり、「傍らで見ていると、八目分有利な手が見つかる」ということ。かなり視界が利くようです。

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