妊婦が妊娠5ヵ月目ころからつける腹帯で,斎肌帯(いはだおび)というのが原義である。この帯には胎児や妊婦の保護のほか,信仰的な意味もある。着帯の時期は妊娠5ヵ月目の戌(いぬ)の日が普通だが,妊娠3ヵ月目とか7ヵ月目の所もあり一定していない。戌の日をえらぶのは,犬が多産で産が軽いと信じられたからである。斎肌帯の斎とは忌のことであり,着帯のときから産の忌に入ることを意味した。この帯は嫁の実家から米や小豆とともに贈られることが多く,帯をつける日には仲人や近親者を招いて赤飯を炊いて祝う風もある。この帯は縁起をかついで7尺5寸3分とか1丈2尺などの長さにし,帯の端には戌や寿などの文字を書く。また,夫のふんどしをしめたり,山村では熊の腸をまくと産が軽いとか安産だという。岩田帯をしめる帯祝は産の忌に入るとともに生児の生存権を承認する儀礼でもあり,間引きの多かった近世においても帯祝をした子どもは間引きせずに育てたといわれる。
執筆者:菊池 健策 腹帯の目的は,おもに妊婦の下腹部を保温し,かつ胎児の位置を正常に保つことにある。具体的には,(1)腹壁弛緩や懸垂腹の予防,(2)経産婦あるいは多産婦で腹直筋の離開や腹筋の弛緩による姿勢のくずれからくる腰痛の改善,(3)増大する腹部を支持し,姿勢を正しく保ち,それによって妊婦の動作を軽快にし,腰痛や上下肢の疼痛を予防する。
さらに精神的効用として,妊婦の妊娠に対する責任をより認識させ,家族や周囲の人々には母性保護の責任を感じさせることがあげられる。なお,なるべくゆるやかに巻くのがよく,あまり強いとかえって胎児の発育を妨げ,かつ胎位異常,あるいは母体の循環障害の原因となることがあるから好ましくない。
執筆者:中山 徹也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
妊婦が身に着ける腹帯のこと。岩田帯の語が民間で使われるようになったのは新しく、かつ一部の人々に限られていたようで、一般には単にオビとかハラオビとよばれていた。これを締めるのは、5か月目の戌(いぬ)の日というのが、広く行われている習慣であるが、6か月、7か月目に締めるという地域もかなりある。歴史的には平安時代からあったとされ、従来生理的効果だけが取り上げられているようだが、この帯の意義はむしろ精神的、信仰的な考え方が強かったようで、妊娠の忌みに入るのもこれを締める時期からである。妊婦自身が生活のすべての面に慎みの心をもって注意深い生活に入る時点でもあった。昔から言い伝えられた日常生活のなかの行為や、食物の禁忌も多かったし、神詣(もう)でなども遠慮しなければならなかった。
[丸山久子]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…十二支の戌にあたる日をいい,吉凶さまざまな俗信がある。妊婦が妊娠5ヵ月目の戌の日に岩田帯をする風習は広い。これは犬が多産で産が軽いと信じられたためだが,戌の日にお産をすれば安産だとか,この日に夫婦が交われば妊娠するともいう。…
…本来は腰にものを帯びるためのもので,現代の未開社会の裸族たちの間にも腰紐一本だけを体に巻き,これに武器や獲物をぶらさげ,つねに両手の自由を確保しておく風習が残っている。さらに,妊婦の岩田帯や武士の下帯のように,呪術的目的や保温衛生上の目的から帯が用いられることもある。しかし,服飾品としての最大の目的は装飾のためであった。…
※「岩田帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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