帯祝(読み)おびいわい

精選版 日本国語大辞典 「帯祝」の意味・読み・例文・類語

おび‐いわい‥いはひ【帯祝】

  1. 〘 名詞 〙 妊娠五か月目に、安産を祈って、妊婦が結肌帯(ゆわだおび)をするときの祝い。帯の祝い。
    1. [初出の実例]「大原やくめる霞のきれざらん 帯いはひせり身もちなる人〈親重〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)一一)

帯祝の補助注記

岩田帯・結肌帯」として知られる腹帯は、妊婦の下腹部保温胎児位置を保つためのもの。とくに五か月の戌の日を吉日に選ぶのは犬の安産にあやかったものという。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「帯祝」の意味・わかりやすい解説

帯祝 (おびいわい)

妊婦に腹帯を結ぶ祝い。地方によってウブイワイオボイワイオボタテなどという。オビ,オブ,ウブは産を意味する〈産む〉と同じ語源からきているといわれている。ウブということばは胎児の魂をも意味すると考えられ,帯を結ぶということにはウブ(魂)をこめるという意味があるようである。一般に5ヵ月めの戌の日(いぬのひ)に行うところが多いが,これは犬の安産にあやかるためと俗にいわれている。地方によって3ヵ月,7ヵ月に祝うところや,全く腹帯をしめないところもある。この日産婆を呼んで帯をしめ,仲人近親が集まり赤飯を炊いて祝う。里方からは紅白の帯,米,小豆などがおくられる。帯祝は妊婦が着帯の時から産の忌の生活に入ることを意味した。また帯祝はやがて生まれる子どものための第1回めの共食の機会で,生児の生存権を社会的に認めるという意味があった。間引きが多く行われた近世でも,帯祝のすんだ子は育てねばならなかった。帯の長さはまちまちで,手拭いの長さのものもあり,帯に一つの呪力を認めていたと考えられる。全国的に夫のふんどしをしめると産がかるいという俗信がある。
岩田帯
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「帯祝」の意味・わかりやすい解説

帯祝い
おびいわい

妊娠して5か月目あるいは7か月目に、胎児の無事成長を祈って腹帯を締める儀礼。白または紅白の晒(さらし)木綿一反、七尺五寸三分(約2.3メートル)とめでたい数字を重ねた長さの地方もあるが、この布を腹に巻く。夫に締めてもらうと安産であるとか、夫が一度褌(ふんどし)に締めるまねをすると安産であるなど、夫が関与する伝承が多い。腹帯は、妊婦の親里あるいは仲人(なこうど)親が贈るといわれているが、今日では病院で帯を用意することが多い。かつてはこのとき産婆を決めるものであった。帯祝いをオボタテ祝いという所があるが、オボは生児の霊魂を意味する語であり、タテは存在を示す語として、一本の布を結ぶことによって、生児の生命を確認し、未生以前の生存権を承認することでもあった。

[鎌田久子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「帯祝」の意味・わかりやすい解説

帯祝い
おびいわい

妊婦が腹帯を締める祝い。オビカケ,オビシメ,ハラブルマイなどと呼ぶ地方もある。一般に妊娠5ヵ月目の戌の日に行なうところが多い。これはイヌの安産にあやかるためといわれている。地方によって3ヵ月,7ヵ月目に祝うところもあり,また腹帯を締めない例もある。この腹帯は岩田帯ともいい,斎肌帯 (いはだおび) の意。斎は忌の意味であり,着帯のときから妊婦は忌に入るとされる。帯は妊婦の実家から米やアズキなどとともに贈られることが多い。助産師を呼んで帯を締め,仲人や近親者が集って赤飯や団子をつくって祝う。間引きの多く行なわれた時代においても,帯祝いをした子は育てなければならなかったといわれ,帯祝いは胎児の生存権を承認する最初の儀礼といえる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「帯祝」の意味・わかりやすい解説

帯祝【おびいわい】

妊娠5ヵ月または7ヵ月の人に岩田帯を結ぶ祝い。イヌのように出産が軽いようにと戌(いぬ)の日に行うことが多い。帯は妊婦の里方から米やアズキとともに贈るのが普通で,この日から産婆を頼む風習もあった。間引き(まびき)が盛んだった時代にも,この祝いを過ぎた子は育てる義務があるとされた。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

とっさの日本語便利帳 「帯祝」の解説

帯祝

妊娠五カ月目(地方によっては七カ月目)に、妊婦に腹帯(岩田帯)を結ぶ行事。着帯式ともいう。犬の安産にあやかって、一般に戌(いぬ)の日が選ばれる。岩田帯は結肌(ゆいはだ)帯の略といわれ、下腹部の保温、胎児の位置を正常に保つ意味がある。間引き(口減らしのため新生児を殺すこと)などが多く行われるようになった近世でも、帯祝のすんだ胎児は産まねばならないとされていた。しかし、現在は形式ばった着帯式を行うことは少ない。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

妊娠・子育て用語辞典 「帯祝」の解説

おびいわい【帯祝い】

妊娠5か月目の「戌の日(いぬのひ)」に、妊婦さんに白布の腹帯を巻き、安産を祈る儀礼。用いる帯は「岩田帯」と呼ばれます。お産が軽い(安産)の犬(戌)にあやかろう、というものです。「着帯(ちゃくたい)の祝い」ともいいます。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

日本文化いろは事典 「帯祝」の解説

帯祝い

帯祝いとは、「着帯〔ちゃくたい〕祝い」ともいわれ、妊娠5ヶ月目の頃の戌〔いぬ〕の日に安産を祈って岩田帯〔いわたおび〕を巻く儀礼です。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の帯祝の言及

【育児】より

子どもしつけ【三宅 和夫】
〔育児の日本民俗〕
妊婦がみごもったときから育児は始まる。とくに妊娠5ヵ月ころに行われる帯祝は,胎児を一人の人間としてその生存権を社会的に認めるという意味があり,間引きが多く行われた時代でもこの祝をすませた子どもは育てねばならなかった。帯祝は同時に妊娠の社会的な承認でもあり,着帯のときから妊婦は〈産の忌(いみ)〉に入った。…

【岩田帯】より

…また,夫のふんどしをしめたり,山村では熊の腸をまくと産が軽いとか安産だという。岩田帯をしめる帯祝は産の忌に入るとともに生児の生存権を承認する儀礼でもあり,間引きの多かった近世においても帯祝をした子どもは間引きせずに育てたといわれる。【菊池 健策】 腹帯の目的は,おもに妊婦の下腹部を保温し,かつ胎児の位置を正常に保つことにある。…

【出産】より

…出産は一身一家のことだけでなく,部落全体の関心事でもあった。帯祝は妊娠の社会的な承認であり,食物や行為の禁忌もこのころから始まる。無事に安産できるように,じょうぶに育つようにという安産子育ての祈願は,医学の発達した現代でも全国的に行われている。…

※「帯祝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android