日本大百科全書(ニッポニカ) 「岸本能武太」の意味・わかりやすい解説
岸本能武太
きしもとのぶた
(1865―1928)
社会学者、宗教学者。岡山県生まれ。同志社大学卒業後、アメリカのハーバード大学に留学、アメリカ社会学を日本に導入した。1896年(明治29)設立の社会学会の会員であると同時に、片山潜(かたやません)らとともに、1898年に結成された社会主義研究会の会員でもあった。彼の立場は、著書『社会学』(1898)に示されているように、キリスト教社会主義の立場で、社会学と社会主義を社会改良の視点から統一的にとらえようとするものであった。また、比較宗教学に興味をもち、1896年姉崎正治(あねさきまさはる)とともに比較宗教研究会を主宰し、宗教社会学の草分けとなった。この分野の著書としては『宗教の比較研究』(1895)、『宗教研究』(1899)、『倫理宗教時論』(1900)、『比較宗教一班』(1902)などがある。
[河村 望 2016年10月19日]