長さが0.5m以上のテープ状の直尺を巻いてケースに格納できるようにしたもの。鋼製と繊維製とがある。鋼製巻尺には精密測量に適しているハンドテープ,土地測量,生産加工品の寸法測定に使用される一般用巻尺,巻尺の先端におもりを取り付け,そのおもりの先端が目盛の零基点となり,油槽内の液体の深さや掘削した穴の深さなどの測定に用いるタンク巻尺がある。また工業用から家庭用まで寸法測定に使用されるコンベックスルールがある。コンベックスルールは,テープの断面がとい状に曲げられ,ケースから引き出したとき,テープが折れ曲がらず直線状となる巻尺である。鋼製巻尺の性能は,1m以下では1級は±0.3mm,2級では±0.6mmで,1mを超えるときは,1mを増すごとに1級は±0.1mm,2級は±0.2mmが加算される。一般測量に用いる巻尺は,20℃の状態で水平台上におき,長さが5m未満のものは9.8N(1kgf),5m以上のものでは19.6N(2kgf)の張力を加えた状態で正しい寸法になるように作られている。したがって,極端に張力を加えたり,温度差がある場合には誤差が生ずる。例えば誤差は50m,0℃で12mmである。繊維製の巻尺は繊維を素材として合成樹脂で処理したものである。長いものは測量用に,短いものは家庭などで使用される。1級は1m以下は±1mm,1mを超えるごとに±0.4mm加算される。2級は1級の2倍である。鋼製巻尺はJISに種類,性能などが規定されている。
執筆者:横山 豊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
使用しないときは巻枠に巻き込んで格納して携行する長い物差し。金属製、繊維製および竹製などがある。金属製には針金状のものとテープ状のものが、繊維製には紐(ひも)状とテープ状のものがある。竹製は竹を細く割って接(は)ぎ合わせたものである。いずれも単位長さごとの目盛りまたは標識をもつ。
巻尺の歴史は古く、ピラミッドの建設に紐状の巻尺を使っている図が残っている。初期のものはすべて紐、縄、竹のひごで、日本では測量用のものは間縄(けんなわ)または竹縄(たけなわ)とよばれ、また田地用のものは水縄(みずなわ)ともよばれた。
最高級のものには測量用基線巻尺がある。これは、温度による膨張収縮のない25メートルほどの合金の針金尺で、両端のみに目盛りがあり、測地基線の設定に用いられる。一般に用いられる測量、建設用のものは鋼製のテープ状で、必要に応じ温度および張力の補正を行う。200メートルが最長であるが、特別な用途にはもっと長いものもつくられる。日常用の短いものには、テープを樋(とい)状にして、立てて使えるコンベックスルールがある。
繊維製は麻などの天然繊維が用いられていたので、温度・湿度による変化が大きかったが、最近はガラス繊維にかわり、精度・耐久性とも向上した。竹縄は第二次世界大戦前まで水田などに用いられたが、いまはつくられない。一般用にはJIS(ジス)(日本工業規格)が設けられ、また計量法の規定もあって精度が定められている。
[小泉袈裟勝]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この時代には地理学的発展,航海術の進歩に伴い,地図や測量データへの要求が一段と強まった。1530年ころにはオランダで現在の巻尺の元となった測量鎖が初めて用いられ,1600年ころには水平角測定装置が開発され,このような装置に初めてセオドライトtheodoliteの名称が記されている。平板測量器具はヘンマ・フリシウスRegnier Gemma Frisius(1508‐55)により発明されたといわれ,それがプレトリウスJohann Praetorius(1537‐1616)により広められた。…
…今日の尺は1891年の度量衡施行令付則にメートルの10/33と定められて,それまで長さの標準がなく推移してきたことに終りを告げ,初めて長さの単位としての基礎が確立されたのである。度量衡
[種類]
現在,使われているものさしには直尺rule(scale),角度直尺,たたみ尺,巻尺などがある。直尺はまっすぐな一片の棒や板に目盛線を刻んだもので,もっともたくさん使われている。…
※「巻尺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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