和裁用のものさし。その目盛の1尺は鯨尺尺と呼ばれ,曲尺(かねじやく)の1尺2寸5分,すなわち5/4尺に等しく,鯨尺の8寸が曲尺の1尺に当たる。1891年(明治24)制定の度量衡法により1尺が10/33mと定義されたため,鯨尺1尺は25/66mとなり,約37.9cmである。分量単位は鯨尺1/10尺の鯨尺寸,鯨尺1/10寸の鯨尺分で,倍量単位は鯨尺10尺の鯨尺丈である。これらの単位は尺貫法の廃止に伴い,1959年以降法定単位ではなくなった。鯨尺は江戸時代に市井の単位として用いられ,太宰春台の《経済録》(1729刊)に〈婦人衣服を裁つのに是を用ふ〉とあるが,鯨尺という名称や大きさの由来,いわゆる高麗尺や1尺2寸の呉服尺との関係など,その来歴は定かでない。
→曲尺 →尺
執筆者:三宅 史
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江戸時代から使われていた裁縫用の物差し。尺貫法の1尺2寸5分(約37.9センチメートル)を1尺とする。出現の時期は不明確であるが、室町末期に1尺2寸の裁縫用の呉服尺が出現し、それがさらに5分伸びたものと考えられる。名称は、クジラのひげでつくられたことによる。したがって呉服尺も鯨尺とよばれた時期がある。江戸時代には両方とも民間において使われたが、官用としては使われなかった。また、鯨尺は東北地方には普及しなかった。1875年(明治8)に政府は呉服尺を廃し、鯨尺を残した。1959年(昭和34)以後は、鯨尺の製造は、メートル法による統一のため禁止された。しかし、放送作家の永六輔(えいろくすけ)らの運動によって1977年に、鯨尺本来の単位目盛りを用いずにメートル法で表記するという条件で復活した。
[小泉袈裟勝]
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…おもに生産工場で用いられる直尺などは日本工業規格に従って作られる。1959年1月から尺や鯨尺やインチのものさしの製造および商取引上の使用は禁止されている。しかし,尺相当目盛のものさしは77年10月から再び製造が認められ市場で見られるようになった。…
※「鯨尺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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