市中肺炎の治療(読み)しちゅうはいえんのちりょう

家庭医学館 「市中肺炎の治療」の解説

しちゅうはいえんのちりょう【市中肺炎の治療】

 微生物による感染症ですから、抗生物質や抗菌薬を使用する治療が中心となります。
 原因となる微生物をはっきりさせたうえで、それに効く薬を使えれば理想的ですが、市中肺炎病原微生物がわかるのは、全症例の50%くらいで、わかるまでに日数もかかります。そのため、肺炎とわかっても原因がわからないまま治療を始めることになりますが、症状や検査結果から、ある程度、病原微生物が推測され、治療法や薬が決まります。
 細菌性肺炎には、ふつうペニシリン系やセフェム系といった抗生物質が使われることが多いようです。最近では、ニューキノロン系の抗菌薬を使うことが多くなっています。重症だったり、病気が特殊な状態だと、より強力な薬や何種類かの抗生物質を組み合わせて使うこともあります。近年、薬に耐性のある菌が増えているので、注意が必要です。
 マイコプラズマクラミジアによる非細菌性肺炎やレジオネラ肺炎では、ペニシリン系やセフェム系の薬は効きませんので、マクロライド系やテトラサイクリン系の薬が使われます。
 若い人や全身状態のよい人なら、ふつうは、肺炎の治療でも、通院して薬を服用すれば十分です。
 高齢者、基礎疾患をもつ人、体力が失われている人は、入院して注射薬によって治療するほうが望ましく、重症になると、人工呼吸も含めた集中治療が必要になることもあります。
 抗生物質や抗菌薬の使用は、ふつうは熱が下がり、X線写真で問題の陰影がみられなくなり、血液検査で白血球やその他の炎症所見が正常になるまで続けられます。入院当初は注射剤で治療し、病状がよくなってくると内服剤にきりかえることもあります。
 抗生物質や抗菌薬の使用のほか、熱を下げたり、せきを抑えたり、たんの排出をうながしたりする薬を使うなどの対症療法が行なわれます。肺炎の患者さんは高熱が続いて食欲が落ちるため、点滴が必要になることもあります。
[日常生活の注意]
 市中肺炎は、ウイルスなどが原因のかぜ(上気道炎)に引き続いて発病することが多いので、かぜをひいたときには肺炎にならないようにすることがたいせつです。むりな労働や外出は避け、からだの安静と保温につとめ、十分な休息をとることです。
 高齢者や肺気腫、糖尿病などの病気がある人は、肺炎にかかりやすく、重症になりやすいので、さらに注意が必要です。冬のインフルエンザ流行時は、人ごみへの外出は避けるか、マスクをするなどの予防が必要です。帰宅したら、うがいをし、手を洗うことが勧められます。このような人たちは、口内の細菌を肺に吸い込んで肺炎をおこすことがあるので、毎食後の歯みがきやヨード剤によるうがいで、予防に努めましょう。
 せきやたんなど、かぜ症状がみられて、高熱が数日続いたとき、膿のようなたんが多量に出たとき、息切れや胸の痛みが現われたとき、ふつうのかぜ薬を服用しても症状が強くなるときは、医師の診察を受けるべきです。
 また、最近、肺炎をおこした家族がいる、症状の出る直前に温泉などの旅行に行った、飼っている鳥が死んだ、などのことがあれば、かならず医師にその情報を伝えてください。
 ワクチンの接種が、インフルエンザの予防にある程度有効とされていますから、かぜにつづいて肺炎をおこしやすい高齢者や病気をもっている人は、接種を受けるとよいでしょう。
 しかし、流行するインフルエンザウイルスの種類(流行株(りゅうこうかぶ)といいます)は毎年変わっており、そのシーズンの流行株と、それを予想してつくられたワクチンが合わなければ、効果が落ちるという問題があります。肺炎球菌に対するワクチンも実用化されていますが、まだ一般に使われる段階にはなっていません。
 オウム病の予防には、感染源の鳥に対する対策が必要です。できるだけ室外で飼い、ふんをすてるときにほこりを吸わない、また素手で触れない、死んだ鳥はとくに注意して処理することなどを守ります。
 鳥が感染している場合は、ペットショップで抗生物質入りの飼料を買って与えましょう。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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