翻訳|market price
財を需要する側と供給する側が相つどう市場において形成される価格をいう。それは第1に,需要と供給双方の力関係に依存し,したがって需給の変動とともに変化する。たとえば供給量が不変で需要量のみが増加したときには市場価格は騰貴し,逆に供給量のみが増加したときには市場価格は下落することが多い。一般に,市場価格は相対的概念である財の価値を推し量るための重要な指標であるといえる。第2に,市場価格は市場の状態,すなわち需要側・供給側それぞれの内部構成がどのようなものであるかに影響される。この点から,市場に非常に多くの競合的な需要者・供給者が存在する競争市場で成立する市場価格を競争価格という。また需要者・供給者のいずれか一方,もしくは双方が比較的少数である不完全競争市場において成立する市場価格を広く独占価格と呼び,競争価格から区別する。
執筆者:佐藤 寿博
市場価格は市場で現実にあらわれる価格であって,需要と供給の相互の関連のなかで決定される。すなわち需要が多く供給が少なければ価格は競争によって騰貴し,また逆に需要に対して供給が過剰な場合には価格は競争によって引き下げられる。こうして需要と供給とが合致するところで価格は定まるものとされる。しかしこれは,価格が需要供給関係それ自身によって定まることを意味しない。その形成は短期的,偶然的な場合を除けば,社会的な基準をもった価格の運動を通して行われる。すなわちそれぞれの産業部門の資本に平均利潤を保証するような供給に対して需要が多ければ価格が騰貴するが,それは平均利潤以上の超過利潤をもたらすために,資本の参入あるいは蓄積の増進によって供給を増加させ,その結果として供給が過剰になり,需要の側の制約とあいまって価格の反転が生じる。逆に供給が需要を上回って利潤が平均利潤以下に低落すると供給が制約され,需要の拡大とあいまって価格は回復傾向をたどることになる。市場価格はこうして資本主義的生産において基準となる生産価格と一時的に乖離(かいり)した価格にすぎない。市場価格が生産価格と合致していれば社会的労働配分が均衡していることを意味するのであって,市場価格の変動はまさに社会的労働配分の絶えざる不均衡を是正していく商品経済のもつ社会的機能にほかならない。
以上は異なる産業部門間に生じる価格変動の問題だが,マルクスは《資本論》でさらに市場価格運動の内部的構造を形成するものとして市場価値Marktwertという概念を提起し,それと市場価格Marktpreisとの関係について若干の説明を加えている。市場価値とは,特定の産業部門内部で生産条件の優劣などの相違によって異なる個別的価値が成立しているとき,それらと区別され,かつその部門の社会的価値を決定する,市場を媒介にして形成される平均価値である。そして市場価格は市場価値を基準として変動する価格であり,同時に市場価値を社会的必要労働量に対応するものに調整する運動を媒介している。
→価格
執筆者:桜井 毅
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