平成26年8月豪雨(読み)へいせいにじゅうろくねんはちがつごうう

知恵蔵 「平成26年8月豪雨」の解説

平成26年8月豪雨

2014年7月30日から8月26日にかけての豪雨のことで、気象庁が8月22日に命名した。同年8月は、西日本を中心に北海道から九州にかけて記録的な多雨・日照不足になり、月降水量が西日本太平洋側で平年比301%と、1946年の統計開始以来8月としては最も多くなった。また全国各地に甚大な被害がもたらされた。気象庁は、建物の損壊1千棟や浸水1万棟程度に達した災害名称をつけており、豪雨の命名は12年の「平成24年7月九州北部豪雨」以来となる。
このような天候が起こった原因として、7月末から8月上旬は日本付近上空の偏西風が平年と比べて北寄りを流れたことが挙げられる。このため東シナ海を北上した台風第12号が日本に近づいた後も東に移動しにくくなり、西日本を中心に台風及び台風から変わった低気圧の影響を長く受けることとなった。またこの時期、本州南東海上にあった太平洋高気圧が本州付近では西への張り出しが弱く、南から暖かく湿った空気が流れ込み続けたため、積乱雲が発達し、強い雨を降らせることとなった。
更に、8月10日には台風第11号が四国地方に上陸し、西日本を通過した後に日本海を北上する一方、この頃から偏西風が南下し、8月中旬から下旬中頃にかけて南北に大きく蛇行した。このため、前線が日本海沿岸付近に停滞しやすくなり、長期間にわたって大雨の降りやすい状況が続くこととなった。特に、8月19日夜から20日明け方にかけては、広島県広島市で集中豪雨となり、大規模な土砂災害が発生して、死者72人、行方不明者2人(9月4日現在)が出た。この他、山口県岩国市や北海道の礼文島(礼文町)など全国で「50年に1度」と言われる大雨による土砂崩れが発生し、死者・重傷者・家屋の全半壊などの被害が出た。政府は広島市北部で発生した土砂災害を含む豪雨被害を激甚災害に指定し、農地水路農協が所有する施設などの復旧事業に対し国が最大約9割を補助することを決定した。
広島市北部で起きた土砂災害では、気象庁は大雨警報や土砂災害警戒情報を出していたものの、特別警報を発表せず、広島市が避難勧告を発表したのは被害発生後だった。また被災地の一部は、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定から漏れていた。豪雨災害に行政が様々な対策を打ってきたにもかかわらず、被害を防げなかったことで、警報・勧告のありかたが議論されている。

(葛西奈津子 フリーランスライター/2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報