過去の事物やできごとの時間的位置を明らかにする学問で、歴史学の重要な部門の一つ。これは欧米のchronologyの訳語であるが、それはギリシア語のchronos(時間)に由来している。日本ではchronologyを編年とも訳すが、その場合は、過去のできごとないし文化を時間的な順序に配列する学問あるいは配列した表をさしている。歴史学の研究では、ある事物ないし事象の年代を明らかにすることは、基礎的な操作である。これによって絶対年代を究明できれば幸運であるが、それが望めない場合には、相対年代を測定するよう努めねばならない。
年代決定には、文献学による方法と、自然科学系の諸学による方法とがある。文献学的方法は、あらゆる関係史料を渉猟・批判して操作を進めるのであるが、これには、所与の文化圏における紀年法、王名表、執政官表、年号、暦などのように、紀年と関係の深い事項の研究が一方では進展していることが望ましい。年代決定に際して陥りやすい陥穽(かんせい)は、紀年銘のある鏡や金属容器その他の場合である。紀年銘があるからといって、それが年号の示す年月に鋳造されたなどと速断することは危険である。また古代メソポタミア史の諸事象の年代決定には、ハムラビ王の在位年代(シドニー・スミスSidney Smithによれば、紀元前1792~前1750年)が基準となっている。
自然科学的方法に関しては、地層、河岸段丘などの地史学的研究による相対年代の判定は、甚だ重要である。絶対年代に関しては、年輪年代学dendrochronologyが重視される。近年、脚光を浴びているのは、放射性炭素14法(C‐14)、カリウム‐アルゴン法、熱ルミネセンス法などのように放射性元素の崩壊を利用する方法であって、この方面の年代決定法は次々と開発されつつある。
さらに宇宙物理学の支援も評価される。小アジアで覇権を競うリディア、メディアの両国は5年にわたって交戦を続けたが、6年目のある日、完全な皆既食があったため、これを神のおぼしめしとみて両軍は停戦し、講和した(ヘロドトス『歴史』)。宇宙物理学者の研究によると、それは紀元前585年5月28日の日食であった。年代決定は、その事柄に応じてさまざまな資料や数々の学を駆使してなされるが、それは、年代の究明が歴史の研究にとって基本的に重要であるからである。
[角田文衛]
『R. W. Ehrich (ed.)Chronologies in Old World Archaeology (1954, Univ. of Chicago Press, Chicago and London)』▽『古文化財編集委員会編『考古学・美術史の自然科学的研究』(1980・日本学術振興会)』
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