カリウムアルゴン法(読み)カリウムアルゴンホウ(その他表記)K-Ar dating method

デジタル大辞泉 「カリウムアルゴン法」の意味・読み・例文・類語

カリウム‐アルゴンほう〔‐ハフ〕【カリウムアルゴン法】

放射年代測定の一。鉱物中に含まれるカリウム放射性同位体と、その崩壊によって生成するアルゴンとの量比から、鉱物が生成した年代を算出する。大気中のアルゴンが混入する場合、測定に大きな誤差が生じる。カリウムアルゴン年代測定法K-Ar法

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改訂新版 世界大百科事典 「カリウムアルゴン法」の意味・わかりやすい解説

カリウム・アルゴン法 (カリウムアルゴンほう)
K-Ar dating method

カリウムの放射同位体 40Kから生じる40Arの量を測定することにより,岩石の年齢を知る方法。数万年以前の年代測定に有効。カリウムの三つの同位体(39K,40K,41K)のうち40Kは崩壊して40Arと40Ca(カルシウム40)に変わる。崩壊定数はそれぞれλe=0.581×10⁻10/年およびλβ=4.962×10⁻10/年である。岩石中の 40Kと40Arの原子数がわかれば,岩石の年齢はで与えられる。K-Ar年代は岩石ができた時にはArを含んでおらず,岩石形成後に岩石中に生じた 40Arを逃さずに保っており,かつ岩石に対してKの出入りがない時,地質学的に意味のある年齢を与える。K-Ar法の適用が主として火成岩にしぼられ,堆積岩変成岩,風化した岩石に及ばないのはこのためである。1940年代末ニアにより始められたK-Ar法は質量分析計進歩とともに発達してきた。ガラス製分析計の出現(1950年代)は微量のArの精度のよい測定を可能にし,数十万年前の地球磁場逆転の研究に寄与した(1960年代)。また,岩石中の 39Kに中性子を照射して作った 39Arを測定してKの量を知る(39Kの量を知り,Kの同位元素組成から40Kの量を知る)40Ar-39Ar法の開発は月の岩石の年齢研究に貢献した(1970年代)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カリウムアルゴン法」の意味・わかりやすい解説

カリウム‐アルゴン法
かりうむあるごんほう
potassium-argon method
potassium-argon dating

岩石・鉱物の年代測定法の一つ。カリウムの放射性同位体カリウム40(40K)が電子を捕獲し、アルゴン40(40Ar)に放射壊変する(半減期1.25×109年)ことを利用したもの。岩石試料中のアルゴン40とカリウム40の量比から、同試料が結晶化もしくは加熱によって、アルゴンを完全に失った時期以降の年代が算出される。変成作用のように相変化を伴うものは、それまでにできていたアルゴンをほぼ完全に放出するので、最後の変成年代を知る方法にも用いることができる。

 カリウムは雲母(うんも)、カリ長石、角閃(かくせん)石など、多くの造岩鉱物に含まれるので、この年代測定法の適用範囲は広い。通例100万年より古い岩石の年代測定に用いられるが、カリウム含有量が多い試料については、それより新しい年代にも適用できる。K‐Ar法と略称されることが多い。

[伊藤谷生・村田明広]

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百科事典マイペディア 「カリウムアルゴン法」の意味・わかりやすい解説

カリウム・アルゴン法【カリウムアルゴンほう】

カリウムの放射性同位体4(0/)Kとその壊変生成物4(0/)Arを用いる年代測定法4(0/)Kは壊変によって4(0/)Caと4(0/)Arになる。鉱物中で4(0/)Kから生じた4(0/)Arは,低温では結晶内に蓄積される(ただし高温ではすべて散失)ので,鉱物の生成時の4(0/)Kの量は現在の4(0/)Kの量と蓄積された4(0/)Arの量の和から求められる。この生成時および現在の4(0/)Kの量から生成時の年代を求めることができる。数万年以前の岩石についての年代測定が可能。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カリウムアルゴン法」の意味・わかりやすい解説

カリウム・アルゴン法
カリウム・アルゴンほう
potassium-argon method

K-Ar法ともいう。カリウム 40がβ崩壊と電子捕獲により,カルシウム 40とアルゴン 40に放射崩壊することを利用して岩石の絶対年代を決める方法の一つ。電子捕獲によって生じるアルゴン 40が岩石中に蓄積された量とカリウム 40の含有量 (カリウム全体の 0.0118%であることがわかっている) から岩石がアルゴンを蓄積しはじめてから現在にいたるまでの時間が算定される。カリウム 40の半減期は 1.25×109 年であるので,普通 106 年以上の年代測定に用いられる。岩石が生成されたあと何かの事件で加熱を受け,岩石からアルゴンが失われるようなことがあると,カリウム・アルゴン法はその事件からあとの年代を与えるので,ルビジウム・ストロンチウム法などから求めた年代よりも若い年代を与える場合がある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「カリウムアルゴン法」の解説

カリウム・アルゴン法
カリウム・アルゴンほう

岩石に含まれるカリウムの放射性同位元素40Kの濃度を測定して年代を決定する方法。半減期が1億3000万年という長い期間であるので,考古学や人類学では猿人・原人段階のような数十万年を単位とする時代の年代決定に使用する。たとえばアフリカのオルドバイⅠ文化は,この方法により175万年前とされている。

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