日本大百科全書(ニッポニカ) 「座敷わらし」の意味・わかりやすい解説
座敷わらし
ざしきわらし
旧家に出没するとされた子供の妖怪(ようかい)。岩手県の北上盆地を中心とする東北地方に伝承される。座敷ぼっこ、蔵っこ、蔵ぼっこ、蔵わらしなどの異称もある。通常は5~10歳の幼童で、赤ら顔(白いとする地域もある)のおかっぱ頭。その名のとおり蔵にいる場合もあるが、多くは深夜豪家の奥座敷に現れ、畳の縁(へり)や床柱を伝ってすたすたと歩き回り、寝ている人の枕(まくら)をいじったりする。胸にのられると、うなされることがある。いたずらや祟(たた)り、そして化けることはせず、これがいるうちは家運は繁盛するが、出没しなくなると傾くという。したがって、出没を家の誇りとしてたいせつに扱い、世間はこれを羨望(せんぼう)する。成り上がりの家にはけっして出没しない。
座敷わらしの由来は、水や泉と関係の深い河童(かっぱ)にあるとする伝承があり、天竜川流域山村のカワランベと同系の、農作さらに家の繁栄に因果関係をもたせたものとも考えられる。旧家の没落に因縁づけて座敷わらしの消えたことを強調するのは、その神霊的性格に畏怖(いふ)を抱くためであろう。
このほかに、ホソテとかナガテと称して、家の土間の片隅から手だけが伸びてくるという、間引き(堕胎)した赤児と関連させる伝承もある。昔話「竜宮童子」の、海底から黄金や宝物などの財または幸福をもたらす鼻たれ小僧は、福の神ヨゲナイと同じように祖霊を水神の小僧になぞらえたものか。いずれにしろ、種々の伝承に現れる彼の性格を考えれば、家の神の零落した姿ともいえるであろう。
[渡邊昭五]
『佐々木喜善著『遠野のザシキワラシとオシラサマ』(1974・宝文館出版)』