改訂新版 世界大百科事典 「引受け」の意味・わかりやすい解説
引受け (ひきうけ)
引受けの語は,商法,証券取引法,手形法で用いられているが,それぞれ異なった意味を表す。
(1)商法上は,株式会社の設立または新株発行の際に株主となるためになす行為をいうとされている(商法176条,280条ノ14-1項)。設立の際の発起人は,書面によって引き受ければよいが(169条),募集設立または新株発行の際の株式申込人は,株式申込証によって申込みをなし(175条,280条ノ14),発起人または取締役が,これに株式の割当てをすると引受けが確定する。株式を引き受けた者(引受人)はその引受株式につき払込義務を負担するが,会社設立の際は,新株の発行が効力を生ずると株主になる。
(2)証券取引法は,証券会社の行う業務の一つとして,有価証券の〈引受け〉を掲げている(証券取引法2条8項4号,28条2項3号)。アンダーライティングunderwritingともいう。ここに引受けとは,有価証券の発行に際し,(a)これを売り出す目的をもって当該有価証券の発行者からその全部もしくは一部を取得すること,(b)ほかに当該有価証券を取得する者がない場合に,その残部を取得する契約をすること,または,(c)発行者のために当該有価証券の募集もしくは売出し(募集・売出し)をすること,その他,(d)直接または間接に有価証券の募集または売出しをするにあたって,通常有価証券の売捌(うりさばき)人に支払われる手数料を超える額の対価を受け取ることをいい,これらの行為を行う者が引受人と定義されている(2条6項)。
(3)手形法上は,為替手形の支払人が手形金額の支払義務を負担するためになす手形行為をいう。為替手形において支払人は,手形の支払をなすべき者として振出人により手形面上に記載された者であるが,その支払人が手形面上引受けの旨を表示し(正式引受け),または表示しないで(略式引受け),署名または捺印することにより(手形法25条),引受人となる行為を引受けという。引受人は満期に手形金額を支払うべき債務を負担することになる(28条1項)。引受人の義務は第一次的無条件かつ絶対的な義務であり,また最終的な責任である。引受けを求めるためには支払人に手形を呈示するのが有利であるが,これをするかしないかは原則として所持人の自由である。なお遡及権保全の要件としての引受けの呈示は,満期の前日までに支払人の住所または営業所においてなされることを要するとされている(21条)。支払人は引受呈示に対し1日の考慮期間が認められている(24条)。
→債務引受け
執筆者:岸田 雅雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報