一般には金銭の支払をなすべき者をいうが,手形・小切手法上は為替手形・小切手における支払委託の名宛人,すなわち手形(小切手)金額の支払をなすべき者として振出人により証券上に記載された者をさす。手形(小切手)が有効に成立するために必要な記載事項のひとつ(手形要件・小切手要件。手形法1条3号,小切手法1条3号)であるが,人の名称と認められる記載があれば足り,架空の者の名称を記載しても,手形としての効力は害されない。もっとも,小切手の場合は,資金関係のある銀行以外の者を指定すれば振出人は過料に処せられる(小切手法3,71条)。複数の支払人を重畳的(AおよびB)に記載できることについては争いがない。これに反し,選択的記載(AまたはB)や,順次的記載(まずAしかるのちB),数人が分担して支払をなす旨の記載や,各支払人につき満期等を異にする記載は,いずれも手形を無効にする,というのが通説である。ただし,選択的記載については,所持人が選択権をもつ限り有効とする説も有力である。単純に並記してある場合は重畳的とみるのが通説である。支払人は,振出しにおける支払委託によって,自己の名をもって振出人の計算において支払をなす権限を取得するが,それだけで当然に支払の義務を負うものではない。為替手形では引受けという手形行為をなすことによって主たる債務者となり(手形法28条),小切手では支払保証をなすことによって特殊な要件のもとに支払義務を負うこととなる(小切手法55条)。支払人は振出人と同一人であってもよい(自己宛手形・小切手)。また受取人を兼ねることも許される。
→振出し
執筆者:今井 潔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…振出人が第三者(支払人)にあてて,受取人または手形の正当な所持人に,一定の金額(手形金額)を支払ってくれるよう委託した証券。約束手形とともに手形の一種であり,約束手形が,振出人みずからが支払うことを約束する形式の手形であるのに対して,為替手形は,振出人みずから支払うことを約束するのでなく,第三者に支払を委託する形式の手形である点で異なっている。…
※「支払人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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