新株発行(読み)しんかぶはっこう

改訂新版 世界大百科事典 「新株発行」の意味・わかりやすい解説

新株発行 (しんかぶはっこう)

株式会社が,その成立後,発行予定株式数(授権株式数)の範囲内で新たに株式を発行すること。その株式を新株または子株(これに対しすでに発行している株式は旧株または親株)という。新株発行は株式会社の資金調達の一方法であるが,銀行からの借入や一般公衆からの借入(社債)と異なり,自己資金調達であり,会社の規模の人的・物的拡大である。新株発行は,通常の新株発行と特殊の新株発行に大別できる。

会社が直接に新たな資金を調達する目的で行う新株発行。株式引受人を求めて払込みをさせることを要し,会社の資本および純資産が増加する。主として,次の方法で発行される。

(1)株主割当て 株主新株引受権を与えて発行する方法。かつては新株は,株式市価にかかわらず,額面で発行される(額面発行)のが慣行であった(〈額面増資〉の項参照)。株主は新株を引き受けないと損をするため,事実上引受けが強制され,その結果,資金調達が確実にできるので会社には便利であるが,反面,手取金は券面額だけであり,これは全部資本に組み入れられる(商法284条ノ2-2項)から,資金コストは高くつく。そのため,最近では株主割当は少なく,株主割当のときも,額面と時価との中間価額で発行されることが多い。一般の会社では,株主は当然には新株引受権を有せず,原則として取締役会の決議があるときに(280条ノ2-1項5号),割当日現在の株主名簿上の株主が持株数に応じて新株引受権を取得する(280条ノ4)。したがって,割当日(実際には受渡期間を計算に入れて普通取引ではその4日前)を過ぎると,旧株の市価は新株のプレミアム分だけ安くなる。これを権利落ちまたは新株落ちという。これに対して,株式譲渡を制限している会社では,株主は原則として,法律上当然に新株引受権を有する(商法280条ノ5ノ2)。以上は,全額有償増資の場合であるが,有償・無償の抱合せ増資もある。これは,配当可能利益・法定準備金または発行価額中額面超過分を資本に組み入れた会社が,額面株式を券面額で発行し,その際,株主に譲渡可能な新株引受権を与える場合にのみ許される。新株は,組入相当額につき無償,残りは有償で発行される(280条ノ9ノ2)。

(2)公募時価発行) 一般公衆から新株の引受人を募集する方法。市価に近い価額で発行されるから,会社は券面額をはるかに超える手取金を入手できるし,資本にはそのうちの半分を組み入れればよい(284条ノ2-2項)から,資金コストは安くてすむ。そのため,最近ではこの方法が主流になっている。原則として,取締役会の決議で発行される(280条ノ2-1項)が,旧株主の利益を保護する必要上,発行価額は市価を基準とする公正な価額でなければならない。募集方法は,買取引受けによって証券会社が一括して引き受け,これを公衆に売りさばくのが通常である。

(3)第三者割当て 特定の第三者に割り当てて発行する方法。資本・業務提携など,他企業との結合強化のために,その他企業に割り当てることが多いが,現経営者の支配権維持のために,現経営者側の特定株主に割り当てることもある。発行価額が公正であれば取締役会の決議で発行できるが,発行価額がとくに有利なときは,旧株主の利益を害することから,株主総会の特別決議が必要である(280条ノ2-2項)。

通常の新株発行以外の新株発行。新株の発行を受ける者は各場合に確定しており,原則として会社の保有する資産を引当てに発行されるから,払込みを要しないのが普通であり,資本も増加するとは限らない。次の各場合がある。(1)株式分割 1株を2株とするように,既存の株式を分割して従来より多数の株式とすること。無償で新株を発行して株主に持株数に応じて分与するもので,取締役会の決議で行う。高すぎる株式市価を下げて市場性を高め,配当率を維持しながら増配の実をあげるなどのために行われる。かつての商法は,法定準備金ないし発行価額中額面超過額または配当可能利益を資金に組み入れた会社が,これを引当てにして株主に無償で新株を発行する場合に,前者を無償交付,後者を株式配当と呼んでいたが,これらは資本組入れを伴う点で単純な株式分割と異なるだけで,新株発行の面では株式分割にほかならない。そこで,1990年の商法改正により,現在では,従来の無償交付と株式配当は株式分割に含められ(218条),資本組入れは別個の制度となっている(293条ノ2,293条ノ3)。(2)吸収合併 存続会社が消滅会社から承継した資産を引当てにして,消滅会社の株主に新株を発行する場合である。合併には,株主総会の特別決議を要する(408条)。(3)転換株式の転換,転換社債の転換,新株引受権付社債(〈株式買取権付社債〉の項参照)の新株引受権の行使,新株引受権を付与された取締役・使用人(1997年改正商法280条ノ19の定めるストック・オプション制度に基づく)の新株引受権の行使 それぞれ,転換株主,転換社債権者,新株引受権付社債権者,取締役・使用人に新株が発行される(222条ノ6,341条ノ7-2項,341条ノ17,280条ノ22-3項)。ただし,新株引受権行使には払込みが必要である。
増資
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株式公開用語辞典 「新株発行」の解説

新株発行

株式会社は会社設立時のほか、設立後も資金を調達するために株式を発行する。資金調達以外の目的の株式発行もあるが、資金調達目的の場合を「通常の新株発行」という。通常の新株発行以外に特殊な新株発行もあり、特殊な新株発行には、既存の株主にメリットが大きい株式分割がある。通常の新株発行は以下の3つが想定される。1. 株主割当=新株引受権は持ち株数に応じて既存の株主に与えられる。2. 第三者割当=新株引受権は取引先や取引銀行、従業員など、その企業に何らかの関係のある特定の第三者に与えられる。3. 公募=新株引受権を広く一般に与えるもの。有償増資が一般的である。

出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報

会計用語キーワード辞典 「新株発行」の解説

新株発行

株式会社は会社設立後、資金を調達するためにも株式を発行します。資金調達以外の目的の発行もありますが、資金調達目的の場合を「通常の新株発行」といいます。

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