精選版 日本国語大辞典 「引渡」の意味・読み・例文・類語
ひき‐わたし【引渡】
- 〘 名詞 〙
- ① 綱や幕などを一方から他方へ張り渡すこと。また、物を一面に引き広げること。
- [初出の実例]「皆人は、かりそめのかりやなどいへど、風すくまじくひきわたしなどしたるに」(出典:更級日記(1059頃))
- ② 人や物を他に引き渡すこと。また、売買契約の成立した商品を売方から買方に渡すこと。〔仏和法律字彙(1886)〕
- ③ 遊女を客のもとに出すこと。
- [初出の実例]「かか刕(しう)が引わたしのささ事過で、はやかぎりある夜とて床取りて」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)七)
- ④ 法律で、拘束した人や占有した物を他に移転すること。民法では一定の簡便な方法を認めている。
- [初出の実例]「請求に応じ其引渡を為すことあるべし」(出典:逃亡犯罪人引渡条例(明治二〇年)(1887)五条)
- ⑤ 本膳に杯を三つ添えた膳部。また、三方に熨斗(のし)・勝栗・昆布などをのせたもの。
- [初出の実例]「中々御かれいのことく、まづ引わたし、かんしゅでござる」(出典:虎明本狂言・麻生(室町末‐近世初))