ひき‐わたし【引渡】
- 〘 名詞 〙
- ① 綱や幕などを一方から他方へ張り渡すこと。また、物を一面に引き広げること。
- [初出の実例]「皆人は、かりそめのかりやなどいへど、風すくまじくひきわたしなどしたるに」(出典:更級日記(1059頃))
- ② 人や物を他に引き渡すこと。また、売買契約の成立した商品を売方から買方に渡すこと。〔仏和法律字彙(1886)〕
- ③ 遊女を客のもとに出すこと。
- [初出の実例]「かか刕(しう)が引わたしのささ事過で、はやかぎりある夜とて床取りて」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)七)
- ④ 法律で、拘束した人や占有した物を他に移転すること。民法では一定の簡便な方法を認めている。
- [初出の実例]「請求に応じ其引渡を為すことあるべし」(出典:逃亡犯罪人引渡条例(明治二〇年)(1887)五条)
- ⑤ 本膳に杯を三つ添えた膳部。また、三方に熨斗(のし)・勝栗・昆布などをのせたもの。
- [初出の実例]「中々御かれいのことく、まづ引わたし、かんしゅでござる」(出典:虎明本狂言・麻生(室町末‐近世初))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
Sponserd by 
引渡し (ひきわたし)
法律用語としては,まず民法178条が,動産に関する物権の譲渡には対抗要件として〈引渡し〉が必要であるとしており,そこでいう引渡しは占有の移転を意味し,現物を実際に引き渡す場合(現実の引渡し)のほか,簡易(の)引渡し(譲受人またはその代理人が現に占有物を所持している場合に当事者の意思表示のみによってなされるもの。182条2項),占有改定(自己の占有物を爾後は本人(譲受人)のために占有する旨の意思表示をして本人に間接占有を得させるもの。183条),指図による移転(代理人によって占有をしている者が,その代理人に対して爾後第三者のために占有するよう命じ第三者がこれを承諾するもの。184条)をも含む(〈占有〉の項参照)。しかし他方,民法182条1項等でいう〈引渡し〉は〈現実の引渡し〉のみをさす。
執筆者:黒田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
Sponserd by 
引渡し【ひきわたし】
民法上,占有を移転すること。単に現実の引渡し(物の上の現実の支配の移転)のみならず,占有改定,簡易の引渡し,指図による引渡しをも含む。引渡しは動産物権譲渡の対抗要件である(民法178条)。
→関連項目公示の原則
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
Sponserd by 
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報
Sponserd by 
世界大百科事典(旧版)内の引渡の言及
【犯罪人引渡し】より
…犯罪人引渡しとは,他国の法に触れた犯罪容疑者または有罪判決を受けた者が自国に滞在しているとき,外交経路により引渡請求がなされた場合,当該国に訴追または処罰のために引き渡すことをいう。逃亡犯罪人引渡しともいう。…
※「引渡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
Sponserd by 