後背地(読み)コウハイチ

デジタル大辞泉 「後背地」の意味・読み・例文・類語

こうはい‐ち【後背地】

《〈ドイツHinterland》港湾や都市などの経済圏に含まれる背後の地域。本来は、港の背後にあって出入貨物の需給と密接な関係をもつ地域をいう。ヒンターランド

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精選版 日本国語大辞典 「後背地」の意味・読み・例文・類語

こうはい‐ち【後背地】

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Hinterland の訳語 ) 港湾や都市などの勢力範囲にある背後の地域。その経済力は港湾や都市などの繁栄に密接な関係をもつ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「後背地」の意味・わかりやすい解説

後背地
こうはいち

経済学の分野ではヒンターランドhinterlandの訳語として用いられる。本来は港の果たす経済的機能の広がる地域をよぶことに始まったが、現在は語義が拡大されて、港のみならず広く都市の果たす経済的機能のほか、社会的諸機能(通勤、通学、買い物、通院など)の及ぶ範囲、すなわち都市圏をも含めていうようになっている。港や都市とそれらの後背地との関係は相互規定的であり、港や都市の活動が活発となれば、それに伴って後背地は拡大される。後背地はまた港や都市を経済的、社会的に支える培養的機能を果たすので、後背地の活動が不活発となれば、港勢や市勢もまた弱化する。

[浅香幸雄]

 地質学の一つの分野である堆積(たいせき)学においては、堆積盆堆積物をもたらした供給源地、つまり背後の陸地をさす。堆積した砂岩層に石英長石粒子が多くの割合で含まれていると、それらをもたらした陸地には花崗(かこう)岩が露出していたことが推定される。このような場合、堆積盆の後背地には花崗岩が露出していたという表現を用いる。また、構造地質学の分野では、造山帯の縁にある褶曲(しゅうきょく)帯や衝上(しょうじょう)断層帯で、褶曲の倒れ込む方向や衝上方向とは反対側の、造山帯内部の地域をさす。一方、衝上方向の先で造山帯の外側の地域は前縁地という。

[村田明広]

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改訂新版 世界大百科事典 「後背地」の意味・わかりやすい解説

後背地 (こうはいち)

都市の周辺にあって,その都市と結びつきの強い地域。元はドイツ語であるが英語,フランス語としても通用しているヒンターランドhinterlandの語が用いられる。なお,古くは背後地背域と訳されたことがあったが,今は用いられなくなっている。

 当初,港の勢力範囲を意味し,港から出荷される生産品の集められてくる範囲,または港におろされた生産品の運ばれていく範囲をさし,港は海面(広くは水面)に臨んでいることから,集散先の陸地は背後と考えられた。なお港で取り扱う生産品の送り先,および発送元の範囲は,後背地に対して腹後地と一時的に用いられたことがある。その後,港の勢力範囲の意から,広く都市の勢力範囲をさすようになり,商業機能の勢力範囲を意味する商圏,また広く都市機能の勢力範囲を指す都市圏と同義に用いられるようになっている。
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岩石学辞典 「後背地」の解説

後背地

この語は様々な意味で用いられる.(1) 前地(foreland)に向かって地向斜堆積物を活発に供給する安定な地塊で,地向斜など堆積盆地における堆積物の供給源地[Suess : 1883, Aubouin : 1965,木村ほか : 1973].これ以外に,(2) 海岸線から8kmまでの距離にある海岸地域,または島の陸地部,(3) 港から少し離れた奥地,(4) 褶曲山脈の近くで,あまり褶曲の影響を受けなかった地域のうち,衝上断層や横臥褶曲のフェルゲンツ(vergence)から見て後方の地域を,いずれも後背地ということがある[木村ほか : 1973].英語ではbackland.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「後背地」の意味・わかりやすい解説

後背地
こうはいち
Hinterland

港湾や都市の経済的勢力圏 (商圏) で,背後地ともいう。これには,運搬に重要な要素である,河川,道路,鉄道などの交通の整備が不可欠な条件である。後背地は港湾や都市の存立基盤であり,それが大きければその港湾や都市の規模が大きいといえる。後背地の盛衰が港湾や都市のそれに反映した例はイギリスのマンチェスターであり,第2次世界大戦後の綿工業の没落とともに港としても都市としても衰微した。

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百科事典マイペディア 「後背地」の意味・わかりやすい解説

後背地【こうはいち】

都市の周辺にあって,その都市と結びつきの強い地域。ヒンターランドhinterlandの訳語。本来は港の果たす経済的影響力の及ぶ範囲を意味した。現在では経済的機能のほか通学・通勤,買物など社会的機能の及ぶ範囲をいい,都市圏や商圏に近い意味に用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の後背地の言及

【都市圏】より

…都市勢力圏または都市影響圏とも呼ばれる。さらに後背地(ヒンターランド)もいまは同意義に用いられる場合が多い。 都市圏とは都市が主体となり,ややもすれば都市が周辺の農村地域を従属させているとの意が強いというので,都市と周辺の農村地域を同等に扱い相互依存,補完という意味で,補完地域,都鄙(とひ)共同圏などの語が用いられている。…

※「後背地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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