地表面から地上1.5mくらいまでの地表面の状態によって,著しい影響を受ける気層内の気象。逆に測候所で気象観測に用いられる百葉箱は,微気象の影響を避けて広い地域の代表的な気温や湿度を測るために地上1.5~2.0mくらいの高さに置かれている。微気象を研究する学問分野は微気象学といわれ,ドイツのガイガーR.Geigerなどによって体系化された。微気象が主として地表面から数mの高さまでの気象要素の鉛直分布を対象とするのに対して,微気候は地表面条件の場所による差異を対象として用いられるが,混用されることもある。微気象は主として農業気象や大気汚染の研究において注目される。微気象の研究においては熱収支の作用面としての地表面の働きが重要視される。太陽から入射する短波放射の強さの変動と入射角度の変動および水面,裸地面,畑地面などによる短波放射の反射の強さ(アルベド)の差や,地中からの熱伝導,地表面や植物表面からの熱発散による水および熱の収支,地面の粗度と風速差による接地気層の空気の乱れや地表面近くの大気安定度による熱や水蒸気の鉛直方向の乱流輸送などが,接地気層の気温分布,水蒸気分布をきめる。接地気層は昼間は非常に高温となり,夜間は著しく低温となり,気温の変動が激しい。また微地形や植被状況の分布によって風速や風向も水平方向にも鉛直方向にも変化が著しい。
このような微気象変化の激しい接地気層に住んでいる昆虫や背の低い植物は,微気象の変化によってその生活環境が激しく変化する。干ばつ,異常高温,多湿,凍霜害などの被害は微気象によって強まったり,弱まったりすることが多い。したがって背の低い防風垣,冷気流の誘導用の垣や被覆水田の水深や流入経路の変更などによって,微気象を変化させて災害を防ぐ方法もいろいろ研究されている。
また接地気層内の微気象は,水蒸気,熱,運動量のほかに煙や農薬などの微粒子の拡散に影響を与える。農薬や防霜用の煙にとっては,なるべく拡散しないことが必要であり,大気汚染物質や霧などにとってはなるべく早く拡散することが必要であり,これらの現象の解析にあたって地面粗度や気温,風の鉛直分布の影響が研究されている。それらの研究用の観測にはふつうの気象測器と異なって微細な変化を精度高く測定するために特殊な微細気象観測用測器が開発されている。
執筆者:中島 暢太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
地表付近、およそ100メートルぐらいまでの高さの気層内の大気現象。水平的には数メートルから数キロメートルの範囲の大きさをもち、現象変化の時間的スケールは100分の1秒から分単位までに及ぶ。微気象を表す要素としては、風、気温、湿度、日射、地温、土壌水分、地表面温度などがある。微気象的問題として代表的なものは、大気乱流、乱流輸送、拡散、蒸発、熱収支などがあり、代表的な現象としては風の乱れ、煙の拡散、接地逆転などがあり、広い意味にこのことばを使う場合には海陸風、山谷(やまたに)風、斜面風、局地風、霜道(しもみち)、冷気湖、ヒートアイランドなどの現象が、微気象的対象として取り上げられる。微気象は天気図的スケールや半球的スケールに比較すると、はるかに規模は小さいが、地表で生活している人間にとってはもっとも関連の深い気象であり、農業気象や土木・建築などの応用部門とも関連して、研究が進められている。
[根本順吉]
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