デジタル大辞泉
「心憎い」の意味・読み・例文・類語
こころ‐にく・い【心憎い】
[形][文]こころにく・し[ク]
1 憎らしく思われるほど、言動などがすぐれているさま。「―・い演出」「―・いまで落ち着きはらう」
2 はっきりしないものに心がそそられるさま。特に、上品な深みを感じ、心ひかれるさま。おくゆかしい。「―・い庭のたたずまい」
3 憎らしく思うさま。こ癪にさわる。
「此小僧を少々―・く思って居たから」〈漱石・吾輩は猫である〉
4 対象がはっきりしないので、不安である。
「定めて打手向けられ候はんずらん。―・うも候はず」〈平家・四〉
5 不審を感じ、とがめたく思うさま。怪しい。
「―・し。重き物を軽う見せたるは、隠し銀にきわまるところ」〈浮・胸算用・四〉
[類語](1)傑出・秀逸・出色・抜群・屈指
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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こころ‐にく・い【心憎】
- 〘 形容詞口語形活用 〙
[ 文語形 ]こころにく・し 〘 形容詞ク活用 〙 ( 底知れないものに、あこがれ、賞賛、期待、不安、不審などの感情を抱いて、気をもむ意 ) - ① はっきりしないものに、すぐれた資質を感じ、心ひかれ、近づき、知りたく思う気持を表わす。
- (イ) 人柄、態度、美的な感覚などに上品な深みを感じ、心ひかれる。奥ゆかしい。
- [初出の実例]「いとあてに、〈略〉式部卿の君よりもこころにくくはづかしげにものし給へり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上上)
- (ロ) 情緒が豊かであったり風情があったりして、心ひかれるさまである。
- [初出の実例]「そらだきもの、いと心にくくかほりいで」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
- (ハ) 間接的なけはいを通して、そのものに心ひかれるさまである。
- [初出の実例]「心にくきもの。ものへだてて聞くに、女房とはおぼえぬ手の、しのびやかにをかしげに聞えたるに、こたへ若やかにして、うちそよめきて参るけはひ」(出典:枕草子(10C終)二〇一)
- ② はっきりしないものに対して大きな期待をいだき、心がそそられるさまである。気持をそそるさまである。期待に気をもませる。
- [初出の実例]「こころにくく思ひて、盗人いりまうできて、一二侍し装束なども、みなさがしとりて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)忠こそ)
- ③ 対象の状態・性質などがはっきりとわからないので、不安、警戒心、不審感などをいだくさまをいう。
- (イ) おぼつかなくて不安である。警戒し、心すべきさまである。気になる。
- [初出の実例]「さだめて打手むけられ候はんずらん。心にくうも候はず。三井寺法師、さては渡辺のしたしいやつ原こそ候らめ」(出典:平家物語(13C前)四)
- (ロ) 対象の挙動・様子を不審に感じ、とがめたく思う。あやしい。どこやらわけありげである。
- [初出の実例]「小おとこのかたげたる菰づつみを心にくし、おもきものをかるう見せたるは、隠し銀にきわまる所とて」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)四)
- ④ にくらしく思う。こづらにくい。こしゃくにさわる。
- [初出の実例]「己が附前の句知りながら、句案数刻にして、脇より玉句御つけといへば、是はしたり、しばらくは案ずべしなどいへる、いと心にくけれ」(出典:俳諧・一茶手記(1789‐1801頃))
- ⑤ 欠点がなく、むしろねたましさを感じるほどにすぐれている。にくらしいほど完璧である。「心にくいばかりの演出」
- [初出の実例]「器用にハンドルを廻し、〈略〉シングル・ハンドの巧妙さは心憎い程だった」(出典:弔花(1935)〈豊田三郎〉)
心憎いの語誌
平安時代の「にくし」は、対象に疎外されて親しみ・連帯感・一体感などがそこなわれた場合の不愉快な気持をいうが、「心にくし」には、さらに、対象の挙動・状態が思うように明らかにならないので、それをもっとよく知りたいと関心を持ち続ける意が含まれてくる。
心憎いの派生語
こころにく‐が・る- 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
心憎いの派生語
こころにく‐げ- 〘 形容動詞ナリ活用 〙
心憎いの派生語
こころにく‐さ- 〘 名詞 〙
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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