心臓の拍動が停止している場合に,心臓から血液をからだ中に送り出し,また心臓の拍動を再開させるために行う方法。前胸部を圧迫する非開胸心臓マッサージ法external cardiac massage(chest compression)と,胸を開いて直接に手で心臓をマッサージする方法direct manual cardiac massageとがある。後者は医師のみが行うことができる。心臓が停止して,心臓から血液が送り出されないと,脳がまず傷害され(3~5分後),脳にある呼吸中枢もおかされ呼吸も止まる。したがって,心臓マッサージに際し人工呼吸もともに行う必要がある。呼吸が停止している状態で心臓マッサージをしても,酸素が欠乏した血液がからだを回るだけなので,効果的ではない。なお,心臓が少しでも動いている場合には,心臓マッサージをすべきではない。心臓マッサージにより心臓の活動はたやすく障害されるからである。心臓マッサージを開始する前に,心臓が止まっていることを必ず確かめることがたいせつである。最もよい方法は,首の両側にある頸動脈の拍動の有無を調べることである。両側頸動脈の拍動がなければ,心臓は停止している。なお,心臓マッサージ開始1分後,およびその後は3分ごとに頸動脈拍動を触れて心臓が動き出したかどうかを確かめる。非開胸心臓マッサージをするときは,けが人や病人を下がかたい所にあお向けに寝かせる。ベッドやふとんの上では,相手の背中に幅広い板を入れる。成人では,胸骨(前胸部真ん中にあるかたい骨)の下1/3の部位をこの骨が4~5cmひっこむよう両手掌で強く圧迫し,ついで圧迫をゆるめる。圧迫により心臓がこの骨と背部にある胸椎との間で圧迫される。また圧迫で胸腔内圧が上昇し,心臓から血液が送り出される。圧迫をゆるめると,圧迫され収縮した心臓は拡張するので静脈系から心臓へと血液が流れ込んでくる。成人では,1分間60~80回の割で規則的に圧迫する。幼小児の心臓の位置は成人より高いので,胸骨の上下半分くらいの部位で,人差指と中指の2本で胸骨を圧迫する。圧迫回数は1分間100回である。
→応急手当
執筆者:中江 純夫
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…呼吸や心臓が停止している患者の場合は,口や鼻孔から気管内にチューブを入れて,100%濃度の酸素を用いて人工呼吸を開始する。ただちに心臓マッサージも始める。一方,救急室で行う治療は必ずしも原因を除くのではなく,からだに起こっている生理学的異常(病態)を正常化することを目的としている。…
…呼吸,循環機能が著しく低下あるいは停止して生命の火が消えようとするとき,人工呼吸や心臓マッサージなどにより生き返らせて生命を救うことをいう。直接には心臓,肺,脳機能をよみがえらせるので,心肺脳蘇生法cardio‐pulmonary‐cerebral resuscitation(CPCRと略記)とも呼ばれる。…
※「心臓マッサージ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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