日本大百科全書(ニッポニカ) 「応用地質学」の意味・わかりやすい解説
応用地質学
おうようちしつがく
applied geology
自然と人間社会とのかかわりのなかで発生するさまざまの社会的な問題に対して、地質学の立場からこたえる学問。したがって、その対象とする課題は、人間社会の発展とともにつねに変化していく。明治の富国強兵の時代はもとより、第二次世界大戦後の1955年(昭和30)ごろまでは、応用地質学は鉱山地質学の代名詞であった。戦後の国土復興事業から高度経済成長期の大規模国土開発の時代を経て、初めて、応用地質学すなわち土木地質学と受け止められるようになってきた。現在では、ダム、鉄道、道路、大規模構造物などの建設に伴う基礎地盤に関する分野、それと地すべり、土石流、地盤沈下、海岸保全など自然災害の防止に関する分野、活断層研究を主とする地震予知あるいは地震動災害の予測にかかわる土地評価、さらには、地下水、温泉、地熱などの水および熱資源開発にかかわる分野などが含まれる。広義には、鉱物資源やエネルギー開発に関する分野も含まれる。今後とも土木地質学に関する社会的な要求は強まり、地質工学として、より土木工学と密着して発展するであろう。しかし、かつての開発最優先が公害や災害を生み出し、人類的規模での環境保全が問題になっている。このようなときこそ地質学的な長期的視野が求められており、応用地質学は環境地質学へと脱皮する必要がある。
[岩松 暉]