(読み)くう

精選版 日本国語大辞典 「悔」の意味・読み・例文・類語

く・う くふ【悔】

〘他ハ上二〙 (ヤ行上二段動詞「くゆ(悔)」の変化した語) 後悔する。
今昔(1120頃か)六「其の言(こと)を聞き畢て礼拝して過(とが)を悔(く)ふ」
随筆戴恩記(1644頃)上「又つくづくと先非をくふるに」
[補注](1)狂言には「虎明本狂言・膏薬煉」などに、あるいは四段活用かと思われる例がある。
(2)「浄・八幡太郎誕生記‐四」の「きん平おつる泪をおしとどめ、ふかく也方々くへてもかへらぬ事共」などは、連用形語尾だけがイ段音からエ段音に変化したものか、あるいは全体が下二段化したものか明らかではない。

くや・む【悔】

〘他マ五(四)〙
① くやしく思う。残念に思う。しゃくだと思う。また、後悔する。くやぶ
発心集(1216頃か)六「若(もし)いたづらに命つきて御さきにたつ事も侍(はべら)ば、其時くやみて何かせん」
浮世草子西鶴織留(1694)五「『扨(さて)口惜や、質種にはもめん布子(ぬのこ)にはおとりける』と悔(クヤ)みて」
② 人の死を悲しんで弔う。

くやみ【悔】

〘名〙 (動詞「くやむ(悔)」の連用形の名詞化)
① 悔やむこと。後悔。
浄瑠璃井筒業平河内通(1720)三「咽にむせぶ涙より金吾がそこつを悔(くやみ)の涙」
② 人の死を悲しんで弔うこと。また、そのことば。
俳諧・続虚栗(1687)夏「蚊遣にはなさで香たく悔み哉〈去来〉」
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉寒丐「母上追悼(クヤミ)よりは」

く・いる【悔】

〘自ア上一(ヤ上一)〙 く・ゆ 〘自ヤ上二〙 自分のやったことを、あとになって良くなかった、ああすればよかったなどと、くやしく思ったり反省したりする。後悔する。くやしく思う。
書紀(720)天智元年一二月(北野本訓)「若し虞(おほえ)ぬこと有らば其れ悔(クユ)とも及び難からむ者」
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉四「己の丹誠の足らざりしをくゆる人もあるなり」

くい【悔】

〘名〙 (動詞「くいる(悔)」の連用形の名詞化) くいること。後悔。
※書紀(720)天智九年五月・歌謡「玉手(たまて)の家の 八重子(やへこ)の刀自 出でましの 倶伊(クイ)はあらにぞ 出でませ子」
※源氏(1001‐14頃)薄雲「かかる老法師の身には〈略〉何のくひか侍らむ」

くやし‐・む【悔】

〘他マ四〙 くやしく思う。後悔する。くやしがる。くやしぶ。
※続日本紀‐宝亀二年(771)二月二二日・宣命「孰にかも我が問ひさけむと悔(くやしミ)、惜(あたら)しみ、痛み、酸(かな)しみ、大御泣(おほみね)哭かし坐すと詔ふ大命を宣る」

くやし‐・ぶ【悔】

〘他バ上二〙 =くやしむ(悔)
※続日本紀‐宝亀二年(771)二月二二日・宣命「言はむすべもなく、為むすべも知らに、悔(くやしビ)賜ひ」

く・ゆ【悔】

〘自ヤ上二〙 ⇒くいる(悔)

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デジタル大辞泉 「悔」の意味・読み・例文・類語

かい【悔】[漢字項目]

常用漢字] [音]カイ(クヮイ)(漢) ケ(呉) [訓]くいる くやむ くやしい
〈カイ〉失敗や過ちを残念に思う。くいる。「悔悟悔恨悔悛かいしゅん後悔追悔
〈ケ〉に同じ。「懺悔ざんげ懺悔さんげ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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